第142話 決着
そんな強い思いを胸に、一気に突っ込んでいった。突っ込んだ時のスピードでわかる。
魔力が、今までとは段違いだ。これなら、行ける──。
何より、ウインが力を与えてくれているからか──温かく感じる。
まるで全身を、包み込んでくれているかのような感覚。
不思議と、負ける気がしなかった。
アッカルドとカルシナは、それに気が付かず負けじと突っ込んできた。
自分たちが負けるとは、みじんも考えて老いないのがわかる。
「ふっ、あきらめの悪い奴め──」
「今度こそ、息の根を止めてやる!」
2人が迎え撃つようにこっちに突っ込んでくるが、今までよりも動きが遅く見える。
ウィンの魔力のおかげで、俺のスピードが上がっているのだろう。
全く脅威に感じない。2人の攻撃に、しっかりと対応できている。
これなら、問題なく戦えそうだ。
「なんだこいつ」
「いきなり強くなりやがった」
2人とも戸惑いの表情を見せている。
まさか、自分たちが力負けするなんてみじんも思っていなかったのだろう。
その後も、一歩も引かずに2人に攻撃を仕掛けていく。
2人の攻撃を、徐々に切り返して──こっちの優勢に少しずつ持っていった。
戸惑う2人。剣筋からも、明らかに動揺しているのが理解できる。こいつらは所詮強い力に頼っているだけで技術的な強さは何もない。ただ、魔力を持った素人といった感じで力任せに戦って来るだけ。
力が互角になれば、こっちが有利になれる。相手の攻撃をいなし、ウィンの援護を受けつつ、少しずつ押し込んでいく。
徐々に、形勢はこっちへと傾きつつあった。
「センパイ! ウィンちゃん! やっちゃって──そんなやつら!」
後方から、ニナの叫び声がこだまする。
アイコンタクトをウィンと取って、一気に突っ込んでいく。
2人も、ここで引く気はないようだ。大きく叫び声をあげて、こっちへ突っ込んでくる。
ウィンが供給してくれる魔力が、今までで一番強くなった。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!
「わああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
それなら、こっちも力で切り返していくだけ。
この戦いにかける想いなら、誰にも負ける気がしない。
一瞬ウィンの方を向いて、アイコンタクトをとった。コクリと頷いて、杖を天にあげるウィン。
ウィンが、思いっきり杖をこっちに向かって振りかざす。振りかざした杖からは、今まで見たことがないくらいの魔力、そしてウィンのトレードマークの「赤い稲妻」がアッカルドとカルシナに向かって行く。
「負けるかよ、こいつらに復習しないと──死んでも死にきれねぇ!」
「そうだ、絶対こいつらを、灰にしてやる!! そのために、俺は身の破滅を承知でこの力を受け入れたんだ」
2人が、感情一杯に叫ぶ。2人とも、理由はどうあれ自分のすべてをかけて俺たちに向かってきているんだ。
個人的に、そういう相手にはこっちにも全力で当たるのが礼儀だと思っている。出なかったら、全力で立ち向かってきている相手に対して失礼だからだ。
2人も、想いっきり剣を振りかざす。俺たちに対抗するように、ウィンの攻撃に向かって攻撃を放った。
灰色に光る攻撃。今までよりも闇の魔力も、威力もずっと強い。
それでも最後の戦い。絶対に、負けるつもりなんてない。
臆さず、思いっきり突っ込んでいった。
そして、突っ込んできた2人と再び交戦。攻撃に向かって剣を振りかざす。俺の剣と2人の攻撃が衝突。大きな鉄の塊が衝突したんじゃないかってくらい、大きな衝撃が腕に走る。
腕の感覚がなくなる。それでも思いっきり、相手の強さに負けないくらいの力で押し返していく。
ウィンが守ってくれて、俺に力をくれているから、自然と負ける気がしなかった。
俺とウィンで、同時にすべての力を出し切っていく。ウィンの攻撃が少しずつ、2人の攻撃を押し込んでいっている。
俺も、わずかではあるが──少しずつ、2人を追い込んでいく。
「マジかよ」
そして、2人の全力の攻撃は、アッカルドとカルシナの攻撃を打ち破った。
「う、う、う……うそだろ……」
「俺たちが、負けるなんて」
ドォォォォォォォォォォォォォォォン!!
大きな爆発音。吹き飛ぶ、アッカルドとカルシナ。
もともと戦闘経験なんてない。まともな受け身も取れず、無防備に地面に落下。
数回ほど地面をバウンドさせて、そのまま倒れ込んで動かなくなった。
「まだ待って!」
立ち上がって、こっちに来ようとするウィンを止める。
まだ、何か手があるかもしれない。油断して、スキを突かれる可能性もある。
勝利が確定するまで、油断は禁物だ。
そして、アッカルドとカルシナは体をぴくぴくさせた後ゆっくりと立ち上がってくる。
まだ、何かあるのだろうか。
剣を構え、警戒しながら視線を向ける。
すると──なんだか様子がおかしい。いったん剣を下ろして、2人をよく見る。
「な、なんだ?」
2人がキョロキョロと自分の身体を見る。俺も視線を向けるが、そこに広がっているのは、信じられない光景だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます