第138話 みんなの力

「センパイ!」


「ガルド様! 首が!」


 ウィンとニナの叫び声が聞こえる。慌てて周囲を見渡すと、信じがたい光景を目の当たりにした。


 何と首が復活していた

 おかしい……時間的にまだ復活は時間がかかる。


「多分、そいつに魔力を集中させて早く回復したのよ」


「なるほど」


 感心してる場合じゃない。今にも攻撃がこっちに来ようとしている。

 しかし、こっちは宙にいるため身動きが取れない。


 俺が覚悟を決めたその時──。


 ドォォォォォォォォォォォォォォォン!!


 いきなり、俺の前にいた顔が爆発したのだ。何事かと思い周囲に視線を向ける。

 そこには、どや顔でしてやったりな表情のニナがいた。


「ニナ、ありがとう」


 今度は、ニナが援護してくれた。


「センパイは私が守り通してみせますっ! だからあいつをぶちのめしてください!」


「ありがとう」


 気持ちが前を向いて再びヒュドラに視線をむける。

 しかし、一つに回復を集中することも出来るのか。せっかく首をはねたのにまた回復されてしまった。


「まったく同時に打ち抜く必要なはい。要するに全部の首がつながってない状態にすればいい。一回挑戦して駄目でもまた行けばいい。あきらめず、最後まで戦いを続けるんだ」


「わかった」


 そうだ、ビッツの言うとおりだ。事実首をはねるところまではいった。あとは、それを繰り返すだけ。


 もっと連携していけば、十分倒せる。


「みんな、チームで連携をとれば、行けるぞ」


「わかった」


「頑張りましょう」


 戦っているエリアとビッツが、振り向いて答える。


「わかり、ました」


「任せてください、センパイ!」


 ニナとウィンが、笑顔を作って返事をした。


 そして──。


「センパイ! 見ていてください!」


「届けぇぇぇぇぇぇ!」


 ニナとウィンが、ヒュドラに向かって攻撃を放つ。


 ニナが放った5本の弓矢に、ウィンが放った雷撃が包み込むように同化していく。

 2人の強い気持ちが、合わさったような攻撃。


 ニナの矢とウィンの雷撃が組み合わさったそれは、一直線にヒュドラに突っ込んでいく。

 ヒュドラは光線を吐き応戦するが、2人の攻撃はそれを一瞬で撃破。


 攻撃は、狙い通りヒュドラへと直撃。豪快な爆発音を 立てながら直撃した首が吹っ飛ぶ。


「よし、行くぞ!」


「ええ」


「ああ」


 その瞬間を、俺たちは見逃さない。3人同時で一気に突っ込んでいく。


 まずは1体、ヒュドラの首をエリアが打ち取る。


 一体ずつ吹っ飛ばしたおかげで、負担は一気に軽くなった。

 俺も負けじと攻撃をかわしながら突っ込んでいき、まずは首を1体跳ねる。


 早く跳ねないとこいつはすぐに他の首を回復させてしまう。

 すぐに他の首も跳ねないと──。

 急いで体を回転させ最後の首に向かって突っ込んでいく。


 再び攻撃が向かって来るが、1つしかない首からの攻撃なら全く怖くはない。

 攻撃をかわして、間合いに突っ込んでいく。


 そして、最後の首を──。


 跳ねようとすると、ヒュドラは逃げるように背後に向かって飛び跳ねる。1歩飛び下がって、そのスキに他の首を回復させようとしたのだろう。


 しかし、そうはさせない。その前に勝負を決める。そのための策はできてる。念のために後方を振り向くと、ウィンがこっちに向かって雷撃を放ってきた。


「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


 ドォォォォォォォォォォォォォォォン!!



 今までにないくらいの大きな衝撃。ウィンが全力を出しているというのがわかる。


 その威力は絶大なもので、ヒュドラの最後に残っていた首を、一瞬で吹き飛ばした。


 ヒュドラは、大きく断末魔のような叫び声をあげ、その場をのたうち回る。首は──再生することはない。


 それでも、暴れまわる。


 まるで、悪あがきをするかのように──。そして、その悪あがきの動きがだんだんぴくぴくとしたようなものになった後、全く動かなくなった。


 何とか、勝ったみたいだ。ニナとウィンの方に視線を向ける。


「ありがとう、2人とも」


「ガルド様こそ、素晴らしかったです」


 ニナが、自信たっぷりの笑みでウィンク。ウィンは、少し恥ずかしそうに……じっと俺のことを見ていた。


「2人とも、すごかったよ」


 そう言って、2人の頭を優しくなでた。ウィンの前でニナに優しくするのは気が引けるが、今日くらいはいいだろ。


 ウィンも、それをわかっているのかただ嬉しそうにしていた。ニナも、顔を赤くして嬉しそうだ。


 そしていると、エリアが俺の肩を掴んできた。


「喜ぶのは、まだ早いわ」


「え──」



 そう聞いて周囲から気配を探る。


「なるほどな……」


 その通りだ、敵が現れた方から、さっきまで以上に強い力を感じる。

 他の人達は勝利の余韻に浮かれて舞い上がったり騒いだりしていた。


 とりあえず、また戦闘モードに切り替え直さないと。

 ビッツが、冒険者たちに叫び始める。


「おい、また敵が来るぞ! 喜ぶのはまだ早い!」


 叫ぶが、一度浮かれモードの彼らはなかなか話を聞いてくれない。

 反応したのは、近くにいた一部だけ。


 そして──。


 ドォォォォォォォォォォォォォォォン


 突然大きな爆発音が、この場一帯に轟く。




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