第137話 ヒュドラとの、決戦
以前戦ったことがある。
「あれは──ヒュドラだっけ?」
「ああ、かなり久しぶりだな」
その姿に、思わずあとずさりしてしまう。ヒュドラ──魔王軍の最高幹部の一人だ。
黒くて、禍々しい肉体。鋭い目でこっちをにらみつけている。そして、9つある首。
以前、魔王軍との戦いで死闘を繰り広げたことがある。
こいつは、魔王軍の中でも1.2を争う強さを持っている。魔王軍の最高幹部というだけあって今まで戦ったどんな敵よりも強かった。
単純な魔力の強さもさることながら、俺たちを苦しめてきた理由は他にある。
──こいつが最強クラスであることの理由。
こいつは、体を切り落としても再生するのだ。
9つある首──どれか一つでもつながっていると、体が無限に再生していく。
おまけに顔からは強力な攻撃を吐いてくる。それらをかわしながら全部の首を切り落としていくというのは並大抵のパーティーではできない。
俺たちが何度もボロボロになって、あきらめずに立ち向かって──ようやく倒すことが出来た代物だ。
その時の経験者である、エリアとビッツに話しかける。
「どうする。ただ闇雲に戦っても──」
「とりあえず、まだ雑魚敵は倒し切ってない。他のやつらにそいつらを片付けさせて──」
「私たちでヒュドラを倒しましょ!」
「わかったエリア」
ヒュドラの特性上、倒すには相当な連携が必要なうえ、首や肉体自体も破壊するには相当強い威力がないといけない。
彼らがいくら突撃を繰り返しても、傷は与えられない。
一般の冒険者が無理やり立ち向かっても、何もできずに犬死するだけだ。
ここは、俺たちがやるしかない。他の冒険者達は、他の兵士達を相手にしてもらう。
エリアとビッツに視線を向ける。
「行くしかないわね」
「ああ──」
まずは、エリアが他の冒険者たちの所に行った。エリアなら、これからやろうとしていることをうまく伝えられるはずだ。
それから、俺はニナとウィンの所へ。怯えている2人に話しかける。
「2人とも、ヒュドラを倒すために一緒に戦ってほしい」
「わかり……ました」
「大丈夫です。任せてください、先輩!」
2人の表情が、強気なものに変わる。大丈夫、俺たちのコンビネーションなら絶対に勝てる。
「ウィン、援護を頼む!」
「わかりました!」
そして、エリアが戻ってくると俺とエリアはヒュドラへと突撃していく。
「ちょっと、おいてかないでよ!」
「そうだぜ、1人じゃいくら何でも無理だ」
「ああ、そうだったな」
まずは俺が左、エリアが右、ビッツは中央で一斉に間合いに入ってとびかかる。
ヒュドラは大きな叫び声をあげながら9つある顔の口がどす黒い光を発し始める。
「攻撃が来るぞ!」
「これなら、大丈夫だ」
俺たちはヒュドラの口から吐いた光線を紙一重でかわすと、一気にヒュドラの首元へと突っ込んでいく。
「ヴィィィィィィィィィィッッッッ」
手前の首がバッサリと切断され、俺は着地エリアとビッツも、一体目の首の切断に成功した
断末魔のような声をあげながら、残りの首が襲い掛かる。
「その程度──」
頭突きのように突っ込んでくるヒュドラ。いなすように剣を斜めに充てる。
突っ込んできた力を受け流して飛び跳ねた後、安全に着地。
ビッツとエリアも、俺と同じように機微を一体ずつ跳ねてから着地。
そして、俺たちが一斉に地面に着地した瞬間に光線を吐いてくる。
口からあふれ出るパワーの気配。
直撃したら肉体は跡形もなく消し飛ぶというのがわかる。
有利に戦えても、警戒は怠らない。
急いで体制を変えようとした瞬間──。
「させません!」
ニナの叫び声と同時に、ヒュドラの光線がこっちに来る直前に大爆発を起こす。ニナが、術式を当ててくれたんだ。
「ありがとう」
ちらりと周囲を見ると、ウィンがエリアとビッツを援護しているのがわかる。
ウィンの攻撃が、ヒュドラの攻撃と相殺され2人とも無事でいるのがわかる。
「ありがとう、ウィンちゃん」
「いいえ、私──これくらいしかできないので」
ウィンの表情は、強く──凛々しさを兼ね備えている
今までのような、どこかネガティブになっている様子はない。
2人とも、とても頼もしい存在になってくれた。パーティー全体に、友情のようななにかを感じる。
パワーもスピードも今まで戦ってきたやつとは段違いに強いけれど、この5人なら不思議と負ける気はしなかった。
このまま少しずつ押し込んでいこう。
さらに攻撃をかわした後に飛び上がって再びヒュドラに立ち向かっていく。
俺達に向かってくる攻撃は、すべてウィンとニナが迎撃してくれる。
2人がこれだけ頑張っているんだ、俺が失敗するわけにはいかない。一気にヒュドラの首元に突っ込んでいき、さらに首を一体墜としていく。
エリアとビッツも、俺と同じようにすでに2体の首を落としていて、残りは一匹。再び地面に着地してから、もう一度ヒュドラへ向かおうとする。
着地した瞬間を狙われるものの、それはすでに織り込み済み。すぐに横に身を投げて攻撃をかわしていく。
そして再び突っ込んでいく。俺の方を向いている首は残り1体。さっきよりもだいぶ楽になった。
吐き出した光線をかわし、殴り掛かってきたもののうまく対応して最後の首へともう少し。
剣を振りかざして最後の首を切り落とそうとした、その時──。
ただならぬ気配を感じる。そして、ニナの叫び声が聞こえだす。
「センパイ!」
「ガルド様! 首が!」
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