第121話 ニナの激闘
「ガルド君ね。好きなんでしょう」
「なんでわかるんですか??
なんで?? 誰にも言ってないはずなのに……。予想もしなかった言葉に、ぽかんと口を広げてじっとエリア先輩を見る。
私が困惑していると、エリア先輩は、ウィンクして話を続けてきた。
「顔真っ赤、口には知れなくても、顔に書いてある!」
「うっ……」
ぐうの音も出ない。顔に出てしまっていたのか……。
うぅ……と縮こまってしまう。シュンとしてしまう。
むむむと口をとがらせて何も言えなくなってしまう。
だって、しょうがないじゃないですか。好きなんですから──。自分じゃあ、どうにもならないじゃないですか……。
「わかってますよ……それくらい」
「もう、こんな時に迷っちゃって、まだまだニナは未熟者ね」
「確かに、そうかもしれませんね……」
エリアさんの言葉に、全く言い返せない。しょんぼりしてしまう。
私は、まだまだ未熟者だ……。
「もう、ガルドのやつ──女の子の心をもてあそんで、ちょっと説教した方がいいかもしれないわね」
本当ですよもう……。思わず顔がぷくっと膨れてしまう。
「あいつ、どんだけ鈍感なのよ。ニナの気持ちに、全く気が付かないで!」
「そ、そうですよ!!」
「あいつに、言ってやりなさい! このすけこましって」
「すけこまし、そうです。先輩はすけこまし!」
なんとなくだけど、勇気がわいてきた。やっぱり私は、こっちの方があってる!
そうだ、泣いていても仕方がない……。
「その調子よ。力が出てきたわね」
エリア先輩が、応援してくれる。それだけで、力がわいてきた。
それだけで、強い敵にもっもっと戦える気力がわいてくる。
そうだ、これが私だ! 障害があったら、なにくそって奮起して強くこぶしを握って、それをばねにしてもっと強くなる。
決して、泣いたままその場にふさぎ込んだりなんてしない!
色男で、女たらしの先輩に一泡吹かせてやるんだから!
だから──前を向かなきゃ──。
私は、再び立ち上がった。
簡単に、吹っ切ることなんてできない。だって、好きなんだもん。
どれだけその感情にふたをしようとしたって、限界がある。というか、無理だ。あんなにドジばかりしてた私を、見捨てたりせずに優しく思いやってくれた。キュンとなっちゃう。
ときめいちゃう。
でも、先輩にはいた。思いを寄せる人が。その女の子は、悔しいけれどとってもいい女の子。
その子に、奪われてしまったのだ。
後悔だって、「ふざけんな!」って思いだってある。本当に、あんなに優しくしといて、頼れる姿を見せつけて、本当に無責任な人だ。
私の心を弄んだ、責任をとれっつの。
まあ、そんなことでめげる私なわけがないけど。いつか、絶対に想いを伝えてやる!!
見ていろ、色男さんめ!
だから、この場は絶対に活躍して見せる!!
そう強く意気込んで、拳を強く握った。
そして、アトラスがいた方へ向かって行き、姿を見る。
周囲を見渡すと、他の人達がアトラスたちと戦っている。
エリア先輩とビッツ先輩は善戦しているものの、他の人達は苦戦していたり──あるいはケガを負って出血している人もいる。
早く、決着をつけた方がよさそう。アトラスたちの後ろに立って、指をさして叫んだ。
「こっちよ。もう逃げも隠れもしないわ! かかってきなさい!」
そして、殴りかかってくるアトラス。それを、真正面から受け止めた。力比べのつばぜり合い。
当然、私に分が悪い。徐々に、押され気味になってしまう。
騒然、それはりかいしている。私だって力比べで勝てるなんて思っていない。
だから、こうさせてもらう。
私は、つばぜり合いになっている弓の重心を、くるりと回転させ上へと移動。すると、アトラスは弓を押し切ろうと力を入れていたため重心が下がる。
そのまま弓を下へ押し下げ、その力を利用して一気に飛び上がった。
アトラスの身体が前へ崩れ落ちるとともに、私は飛び上がった後体を一回転させた。
そして一気に背後に回り込み──。
「これで、あなたは終わりよ!」
思いっきり魔力をこめて、アトラスの心臓めがけて弓矢を放つ。
「グォォォォォォォォォォォォォォォォォォッッッ!!!」
アトラスは耳が破裂するくらいの叫び声をあげ──その場に倒れ込んだ。
倒れ込んだまま、そのアトラスは動かない。
あと2体──。
後ろにいたアトラスが、怒りをあげて襲い掛かってきた。仲間を殺されたことに憤っているのが理解できる。
力任せに襲い掛かってくるアトラス。私は逃げないで立ち向かっていく。パワーに勝るアトラス相手。
時折攻撃を食らってしまうが、気にしない。構わず反撃に出る。
そして、タイミングを見計らいくるりとターンをして、相手の後方に立とうとする。ぎりぎりの判断で、うまく受け流し切れず、体が反れてしまったり、攻撃がおでこのあたりをかすり、血が滴ってくる。
しかし、これでアトラスの背後に立つことが出来た。慌ててアトラスはこっちを向こうとするが時すでに遅し──。
アトラスが振り向ききる前に、私が最後の一撃を入れればいいのだから。
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