第120話 アトラスとの戦い
「こっち! かかってきなさい!」
アトラス2匹は、示し合わせるかのようにコクリと頷いた後こっちへ向かって来る。
強力な力を持つ相手、それを接近戦で。苦戦はするだろうけど、木が生い茂るジャングルじゃ私の遠距離攻撃はあまり有効じゃない。
いばらの道だとわかっていても、行くしかない。ごくりと息を飲んで、強く弓矢を握りしめた。
アトラスは、一気に距離を詰めて持っていたこん棒で殴り掛かってくる。私は、一度立ち止まって一歩下がって攻撃を受ける。
アトラスの力任せに殴り掛かってくる攻撃。私は、その力を受け流しながら攻撃を受けていく。
時折、そのスキを狙って反撃に転じるものの、得意ではないパワーのある相手、ランクが高い敵2人がかりに来られると、さすがに苦戦してしまう。
先輩がいたら、助けてくれたのかな──。強い相手に心細くなってしまい、思わず弱音が出て先輩のことを考えてしまう。
先輩がいたら、ピンチに時に助けてくれるのかな……。頼りになって、こんな敵なんか一瞬で倒してくれるのかな……。それで、私に笑顔を向けてくれるんだろうな──。いけないいけない! 戦いに集中しないと──慌てて弓をアトラスに向け、解き放つ。
アトラスは攻撃をかわし切れず弓矢を額に食らう。アトラスは2人とも激高し、大きな叫び声をあげてこっちに向かってきた。
大きく感情的になっているのか、力はありそうだが猪のように単純に突っ込んでくるだけの攻撃。
それなら、大丈夫。かわしたところに、カウンターを食らわせればいいだけのことなのだから。
そして、アトラスの攻撃を身軽に攻撃をかわして反撃しようとしたその時──。
「しまった!」
背後から気配を感じて、慌てて振り向く。やってしまった。
敵は、なんと後ろにもいたのだ。襲い掛かってくる敵の姿に、言葉を失う。
多分、正面の敵に囚われている間に、背後から奇襲をする作戦だったのだろう。そして私は、その策にまんまとはまってしまったわけだ。
そして、宙を舞っている私は敵の攻撃を受け流すことも出来ない。
まずは1体目。とげのあるこん棒で私の背中に殴りかかってくる。
弓矢の上の部分をかざし、強引に攻撃を受け、魔力を体に回して強引に体制を変えてギリギリ直撃を免れる。強すぎるパワーのせいで、腕がしびれて感覚がない。
そうして一度目の斬撃を何とか交わすものの、もう1体の攻撃についてはどうすることも出来ず、回しけりを直接食らってしまった。
「ニナ!!」
エリア先輩の叫び声が聞こえる。
私の身体は後方に吹き飛ばされた後、大きな木にぶつかってそのまま地面に落下。
まともに受け身が取れなかったせいで、強打した背中の感覚がない。
痛たたた──。すぐに感覚が戻る。全身が硬い武器で強打したときみたいに、張り裂けるくらいの痛みが走る。
涙がこぼれそうで、昔の自分ならもううずくまって指一本動かせなかっただろう。
しかし、泣き言言っている暇なんてない。隙を見せたら、こいつらは一斉に束になってかかってくる。こっちが弱みを見せるのは、絶対にやってはいけないのだ。
その通り、視線を前に向けると好機とみなしたアトラスたちが距離を詰めて襲い掛かってきた。
感覚が戻らない体を無理やりたたき起こし、慌てて後方に身を投げる。
そして、アトラスと再び交戦。
数で圧倒されるも、なんとか敵の攻撃に対応していく。けど、力の差を覆すのはなかなか難しい。
やはり防戦一方になってしまう。多分、私の精神が安定してないのも原因だと思う。
先輩のことが、たまに脳裏をよぎってしまうのだ。
なんていうか、全くうまくいかない。
押され続けて、とうとう攻撃を受けて再び吹き飛ばされてしまう。
再び体を起こし、一度後方に撤退。アトラスたちから逃れ、いったん落ち着く。
このまま戦っても、勝ち目がないのがわかっているからだ。
しまった……敵の策にまんまとはまってしまった。落ち込む私。
「ニナ──」
しょんぼりしている私に、誰かが話しかけてくる。涙を拭いて、顔をあげた。
エリア先輩──。
ああ……思わずしょんぼりしてしまう。これは、同情されている目だ。
また、先輩たちを頼ることになりそうだ。まだまだ先輩たちには及ばないなぁ……私。
「ニナ……」
「はい──」
思わず涙目になってしまう私。じっと顔を見上げたまま、エリア先輩を見る。
「エリア先輩──突然何を」
エリア先輩が私に近づいて──おでこにデコピンしてきた。
予想外の行動に、キョトンとなってしまう
あいたたた……。涙目でおでこを押さえていると、ちっちっちっと言わんばかりにエリア先輩は人差し指を振ってさらに話を続ける。
「何をじゃないでしょっ! 今日のニナ、絶対おかしい──」
「そ、そ、そんなことないです!」
図星を言われて、動揺しながらもあわあわと手を振って否定する。はたから見れば、バレバレ何だろうなぁ──。
「そんなことないわけないでしょ! 一体いつからあなたのこと見てると思ってるの?」
「はい……」
自信たっぷりの先輩の言葉に、私は何も返せなかった。
「ガルド君ね。好きなんでしょう」
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