第100話 ウィンを、受け止める


 それなら、答えは一つしかない。力になれるなんて保証はないけど、ウィンのために全力で尽くしていこう。

 初めての告白の返し。ドキドキして言葉がつっかえてしまう。何とか言葉を返していく。


「ウィンが俺のことを想ってくれているというのは、本当に嬉しい」


「──ありがとうございます」


「俺は、ウィンと一緒にいて分かった。優しくて、いつも一生懸命で、俺に尽くしてくれて──わかったんだ。こんな素敵な人だって、思って、一緒にいるのがとても楽しかった。もっと、一緒にいたいと思った」


 その言葉に、ウィンの表情がはっと明るくなった。


「そんなウィンのことが、俺も好きだよ」


 ウィンは両手で口を押え、俺のことを見ている。やがて、そのきれいな瞳がうるうると潤いだしたかと思うと、ぽとぽとと涙が落ち始めた。


「嬉しい──嬉しいです。ガルド様──これから、こんな私ですけど、よろしくお願いいします」


「こっちこそ、恋愛経験なんてなくて大したことはできないけれど、よろしくね」


 そして、俺とウィンは抱き合った。ふわりと、ウィンのさらさらした髪を優しくなでる。


 ウィンのぬくもりを全身に感じ、とても心地よい。ウィンの温かさが抱き合っている場所すべてから全身に感じる。


 ウィンの、全身が幸福感に包まれたような、安心しきっている表情。ウィンの首に手をまわして、距離を埋めるかのように体を引き寄せた。


「ガルド様。これから、よろしくお願いいたします」


「こっちこそ。ウィンのためにたくさん尽くしていくよ」


 そういってにこっと笑顔を作る。ウィンは、俺に視線を向けた瞬間再び顔を赤くした。


 俺は、ウィンを抱きしめた。それ以外、どうしていいかわからなかったからだ。

 ウィンの温もりを全身に感じさせながら、優しく髪をほぐす。


 甘くて、とてもいい香り。ウィンのにおいをかいでいるだけで、心が安らいでとても落ち着いた気分になれる。


 ずっと、抱きしめていたいという気持ちになれる。

 ウィンは、うっすらと瞳から涙を浮かべて、俺の身体を抱きしめている。


「ありがとうございます、ガルド様──」


「こっちこそ。好きって言ってくれてとてもうれしかったよ。これから、よろしくね」


 そういって俺は、ウィンの両肩をつかんでそっと顔を近づけた。


 ウィンは俺がしようとしたことを察したようで目をつぶって唇を寄せてくる。


 俺は、優しくウィンと唇を重ね合わせた。


 ふわふわとした、やわらかい唇。

 甘酸っぱい感触に、とてもドキドキする。


 それでも、ウィンが痛い思いをしたりしないように細心の注意を払う。それだけじゃない──。


 クチュ──クチュ──。


 ウィンは俺の口の中に舌を入れてきた。俺も、ウィンの舌──とろけるように柔らかく、甘く感じる。そして温かい。まるで、俺の理性を溶かそうとしているみたいだ。


 ウィンの舌はまるで俺のすべてを感じようとしているみたいに口の中全体をかき回す。俺は──その想いにこたえるかのようにウィンの舌に俺の舌を絡めた。


 ウィンの全身を感じているかのようで、とても甘美な味がするような気がした。

 時間にして数十秒だが、永遠のようにも感じる。


 目をつぶったウィンの顔つきも──ウィンの唾液が混じった舌も。とても官能的な印象を持っている。


 ずっとこうしていたい。すっと、ウィンを感じていたい。


 それすら、感じるようになれるくらいだ。


 永遠ともいえるような時間が終わり、ウィンの唇から顔を離す。

 ウィンが舌を俺の口から離すと、ウィンの舌と俺の舌で唾液のブリッジが出来る。それは、やがて地面に落ちていき、口に残った唾液を拭きとる。ウィンは──同じように残った唾液をなめとった。



 生まれた初めての告白、そしてキス。ウィンを抱きしめた時の感触も、ウィンの温もりを感じるような、唇ととろけるような柔らかさの舌も──。


 すべて心に残っている。まるで、ウィンの愛を体全体で受け止めているかのようだ。


 幸せそうに、笑顔を浮かべているウィン。

 心の底から、幸福そうなのが一目でわかる。



「とっても、幸せでした。甘くて──ふわふわした気持ちです」


「ありがとう。俺も、とっても幸せな気持ちだよ──。こうして交際することができて、本当にうれしいよ」


 そして俺はウィンを、もう一度抱きしめる。優しく、そっと。


「これからも、こんな私ですが、よろしくお願いします」


 こうして、俺とウィンは交際をする事になった。

 初めての、異性との交際。うまくいくのか、ウィンを幸せにできるのか──やはり不安だ。不幸にしてしまうのではないかと、考えてしまう。


 しかし、ウィンが俺と交際することを望んでいる以上、やるしかない。

 絶対に、ウィンの期待に応えるんだ。



 一緒に住んでいるだけの関係から恋人同士になったということで、やはり意識してしまう。

 心臓が、とってもドキドキする。


 これから先、ウィンを幸せにすることができるのだろうか。


 交際経験がないせいか、どうしても不安に思ってしまう。


 首を横に振って、ネガティブな気持ちを振り払う。

 するんだ、絶対に──。


 ウィンを幸せに──。









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