第91話 まさかの、再会


「本当か?」


「相当強い魔物だと聞いた。それで、血相を変えて俺達に援軍を頼んだんだとさ。どれだけ金を突っ込んでも、俺達の国に今すぐ助け舟をくれってな」


「ビッツさんの言う通りです。それで、大金を払った代わりに、国に一人しかいない転移魔法を使える人を呼び出して、送ってもらいました」


「俺が来ているって、知っていたのか? ギルドの人達は──」


「はい。ガルドさんがこの地に来ているって聞いたんで、私は手を上げて志願しました」


 確かに、それなりの期間街を離れるだけに、ギルドへ報告はしておいた。むろん、どこへ行くかも。

 フィアネさんあたりから、情報を聞いたということだろう。

「ってことで、これからは仲良く倒そうね──。グラーキ」


 エリアがにこっと笑い、ウィンクをして言う。

 確かに、グラーキの強さは タツワナの冒険者では歯が立たないというのも事実だ。


「まあ、そういうことでこれからは俺達も加わるから。よろしくな」


 ビッツがそう言うと、ニナがなぜか顔を膨らませて不満そうにこっちを見てくる。

 そして、自信満々の表情を作り親指を立ててきた。


「先輩。私が来たんですから、もう大丈夫です。任せてください!」


「分かった。ニナには、期待してるよ」


「任せてください。このニナ様が、全部解決して差し上げます!」


 そう言って、ピッと敬礼をした。ニナの、自身たっぷりの言葉。こっちの気分が上向いてくる。


「もう大丈夫よ。私達がいるんだもん。あ? ガルドはやっぱりウィンちゃんと二人っきりが良かった? 良からぬことをしたいとか──」


「おい!」


 エリアのからかいに、慌てて突っ込む。ウィンは、顔を赤くしてフリーズしてしまっていた。

 しかし、思わぬ援軍だ。3人がいれば、かなり戦いは楽になる。


 強敵ではあるが、力を合わせて戦っていきたい。


「ということでよろしくね、ウィンちゃん」


「はい!」


「あれ~~、


「ちょっと、何言ってるんですかエリア先輩。変なこと言わないでくださいよ──」


 ニナは慌てて顔を赤くして言葉を返す。

 明るくなったこの場の雰囲気。



 ニナとウィンも、意気揚々としている。二人とも、この前初めて出会ったばかりなのに、仲がよさそう。



 いい雰囲気だ。さっきまでどう戦おうか悩んでいたが、彼らがいるだけでとても希望が持てたように感じた。


 それから、シャフィーと合流。

 俺達の姿を見るなり、驚いた表情になる。


「なんだと、エリアにビッツ。どうしてここに?」


 エリアが俺に話したのと同じようにいきさつを話す。


「ということよ、シャフィー」


「ああ、転移魔法なんて生まれて初めてだったぜ」


「ビッツ、マジかよ。転移魔法か、よほど危機感を持ってたんだな」


「まあ、彼らだって保身はあるだろうし、よほどグラーキが脅威だったんでしょ?」


 エリアの話にニナが強引に入ってくる。自信を持った笑みでしゃべった。


「まあ、この私がいる限り、大丈夫ですよ」


 そしてポンと胸を叩く。


「ガルドの彼女さん、自信満々そうだな。こりゃあ行けるんじゃないか?」


「か、か、か、彼女さん??」


 ニナは素っ頓狂な声を上げて言葉を返す。両手を頬に当て、かなり動揺しているのがわかる。

 俺も少し動揺してしまった。鼻頭をかきながら冷静に突っ込む。


「からかうのはやめろ。そんなんじゃないから」


「ははは……ごめんごめん。しっかしお前も変わってないな」


 冗談交じりのシャフィーに突っ込もうとすると──。


「そうですよっ! 変な事言わないでください!」


 ニナがそう言って俺の背中を軽く叩いた。


「なんだよニナ!」


「そういう所ですよ。いつもいつも」


 ニナはふてくされたように顔をぷくっと膨らませている。

 最近、いきなり不機嫌になることが増えた。何が原因何か考えているのだが、待ったくわからない。


 やはり、女心というのは俺にはよくわからない。特にニナはそうだ。

 良かれと思ってやったことが裏目に出て、顔を膨らませてプイッとなったり、ジト目でにらまれて「先輩、鈍いです。そういう所ですよ」とと言われたり。


 何がニナに嫌な思いをさせているのか、俺にはわからない。


 まあ、これから大事な任務だ。それは、おいおい考えよう。


 シャフィーが、現状について話し始める。

「すでに、ギルドの支配人に現状を話してある。それで再び冒険者をかき集めて、準備が出来たらまた再戦だってよ」


「そうか。じゃあそれに協力すればいいってことだな」


「まあ、そんなところだ」


「あくまで私たちは協力ってことね」


 エリアの言葉通り、俺たちが行うのはあくまで彼らの手伝いだ。

 基本的なこの世界のルールとして、自分の領地は自分たちの物である代わりに、何かあったらまず自分たちで対処するというのが基本だ。


 俺たちはあくまで協力する立場。


 だから、彼らが戦うという決意と準備ができて初めて俺たちは武器を手に取るのだ。


「大丈夫。こいつらだって一人の冒険者だ。絶対に、決断してくれる」


 シャフィーは、自信満々にそういってこの場を去っていった。

 冒険者たちに一人一人声掛けをして、戦う人たちを集めてくるのだそうだ。



「まあ、あれだけ自信があるのなら大丈夫でしょ」


 この場を去るシャフィーを見ながら、エリアがつぶやいた。

 同感だ。一回目戦うときも、拙い様子ではあったが、決して戦う気がないわけではなかった。


 その後、俺たちも協力して街を上げて再戦の準備を始めた。


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