第74話 不思議な、雰囲気の風呂

「大丈夫です。顔つきが幼く見えるだけですから……」


 ウィンも、空気を呼んでくれたのかコクリとうなづいてくれた。おばあさんはご機嫌そうにニヤリと笑い、机の下から鍵を取り出した


「1泊でいいのかい? ほらよ」


「はい。ありがとうございます」


 宿泊場所が決まったことに、嬉しくなり、思わず声が裏返ってしまった。


 そしてお礼に頭を下げると、お金を払ってキーを受け取り、部屋へ。


 3階。淡いランプに照らされた、若干色あせた赤絨毯の道の一番奥にある場所。そこに指定の部屋はあった。



 中に入ると、予想とは違った光景に俺もウィンも驚く。



 灯は薄くピンク色に光っていて、部屋全体が艶めかしい雰囲気となっていた。


 まず視線に入ったのは、目の前に二つ並んでいる天蓋付きの大きなベッド。

 家のベッドの2倍はあるであろう広さで、余裕をもって一緒に寝られそうだ。


 淡いピンク色の掛布団の上に、薄く黄色い花びらがまかれている。何というか、豪華なホテルだ。おまけに、雰囲気が独特。


「ここ、お風呂があるみたいです」


 ウィンが部屋の隅にある扉を開けて囁く。

 俺も、その場所に移動して扉の先を見る。


 確かに、ドアをこじ開けると灰色の浴槽があった。バスルームがあった──のだが、それがなんとハート型になっていたのだ。色はピンク一色。

 広さも、まるで2人で入れと言わんばかりの大きさ。本当に、何だこれ……。


「こんな感じの部屋。止まったことあるか?」


「……ないです」


 唖然としていたウィンがぷるぷると顔を横に振る。

 初めて見た雰囲気のホテル。


 なんて言うか、いかがわしさをとても感じさせるホテルだ。

 この街に来たのは初めてだが、こんな風変わりな文化なのか? 良く分からない。


「とりあえず、食事にしよう。それでゆっくり体を休めよう」


「──そうですね」


 考えてもしょうがない。何であれ、体を休めなきゃ。

 そして俺達はいったん街に出て、食糧を買い足した後、夕食。


 チキンを焼いたステーキとライムギのパンにトマト。それから、デザートのオレンジ。


 王都と比べるとどうしても質素なものになってしまうが、贅沢は言っていられない。

 簡素で、丸い木の机に食べ物を並べ手を合わせる。


「いただきます」


「いただきます」


 長旅で疲れがたまり、お腹が空いていたこともあって、あるいはウィンと一緒だということもあって美味しく感じられた。


 それから、交互に入浴。流石に2人一緒というわけにはいかない。

 ──と思ったのだが。


「背中、洗ってほしいです。ガルド様」


「えっ??」


 俺の胸に、ウィンが抱きついていってくる。

 流石に、それは──そう思ったのだが。


「今日だけ。お願いします」


 強くせがんでくるウィンに抗しきれず、今日は一緒にシャワーを浴びることとなった。


 着替えをし、タオル1枚でバスルームへ。

 バスルームは、すでにお湯で満たしてある。

 まずは互いに体を洗うため、浴場の椅子を取り出したのだが──。


「こんな椅子、初めて見ました」


「俺も──」


 初めて見る椅子の形状に、互いに目を合わせる。

 簡単に言うと、凹の字のように真ん中に窪みがあるのだ。


 座ってみたが、真ん中がスース―して違和感だらけ。

 そこがちょうどお尻の当たりであるため、変な感じになってしまう。確か、スケベ椅子って言うんだっけ。噂で聞いたことがある。


「なんていうか、おかしな気持ちになります」


 ウィンが、顔を赤くして下を向きながら言う。恥ずかしがっていると言うのが、わかる。

 ──とりあえず、体を洗おう。冷えちゃうし。


「ウィン、背中洗うから、後ろ向いて」


「はい」


 ウィンは壁を向いた。俺はウィンの背中を向いてから、お湯でぬれたタオルに石鹸をよく練り込んで泡立たせる。


 そして、泡立ったタオルをウィンの背中に当てて、優しくなでるようにしてすりすりと背中を洗う。

 ウィンの、滑らかな肌を傷つけたりしないように丁寧に。


 丁寧に洗って、タオルをウィンに渡した。


「はい、あとは前だけだよ」


「前も、お願いします」


「え……えっ? それはちょっと──」


 その言葉に、思わずあたふたしてしまう。流石に、前となると話は別だ。

 胸とか、大事な所とか、色々なところにふれなければならないからだ。


「お願いします。ガルド様に、やって欲しい気分なんです」


 そう言ってウィンはごくりと息を呑んで背中を丸くする。

 思いっきり、甘えたいということだろうか。


 まあ、これからのこともあるし、長旅での疲れもある。今日くらいはいいだろう。


 大きく深呼吸して、ゆっくりとタオルをウィンのお腹にくっつけた。


 まずはお腹、フニフニとしていてとっても柔らかい。

 タオル越しでも皮膚の触感が伝わってくる。大丈夫。体を洗う事態は、以前のデートの時も経験した。こんなことで発情して、間違いを犯すような俺ではない。


 次に足。か細くて柔らかい。最後に、胸のあたり。大きくて、滑らかでマシュマロのように柔らかい。


「う、うぅぅ……」


 ウィンも、意識してしまっているせいか喘ぎ声のような声を上げている。俺も、大きくて柔らかい胸にどうしたって意識してしまう。

 気持ちが、変な方に行ってしまわないうちに早く終わらせよう。


 そして、俺はお風呂からお湯をすくい、ウィンに掛ける。


「はい。終わりだよ」


「ありがとうございます。次は、私ですね」


「……いいんだよ。俺は1人でやるから」


「お願いします。やらせてください」

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