第42話 混浴、からの二人っきりの時間
ウィンの表情が、きらきらとし始めた。
そして、石鹸を泡立てると恐る恐るタオルを俺の背中に当てる。
「痛く、無いですか?」
「大丈夫だよ」
決して痛くない、優しい感覚で俺の背中を洗っていく。
そして、背中を洗っていると──。
「ウィン、当たってるよ……」
「あっ、ごめんなさい」
ウィンが俺の体に寄っかかってきた。
何と、ウィンの大きな胸が俺の背中にあたってしまっているのだ。
むにょんとした、弾力があって柔らかい感触。
「ちょっと、ガルド様に抱き着きたくて……」
口を押え、恥ずかしそうしている。
何で、そんなことしたのだろうか……。
それから、すぐにウインは再び背中洗いを再開。
何でなのか、本当に気になる。
しばらくすると、ウィンが背中洗いを終える。
「終わりました、ガルド様」
「ありがとう」
お礼を言って立ち上がると、ウィンを俺が座っていた椅子に座らせる。
今度は俺がウィンの背中を洗う番だ。
「よろしく、お願いします」
「こっちこそよろしく。痛かったら言ってね」
ウィンは両手で胸を押さえて、縮こまって椅子に座っている。
女の子の肌は、男よりも繊細だと聞いた。だからいつもより優しくしないと──。
そしてタオルを泡立てタオルをウィンの背中を優しく洗う。
「大丈夫?」
「はい、とっても気持ちいいです」
その言葉が聞けて、俺もとっても嬉しい。
優しく、背中を洗っているうちに気が付いた。
真っ白で、綺麗な背中。前が見えていなくても、それだけで欲情を誘ってしまう美しさだ。
それでも、こんな所で間違いを犯すわけにはいかない。理性を総動員して、何とか事を起こさずにこの場を過ごすことはできたのだが──。
体と頭を洗い終えてから、俺達は温泉につかり始めた。
外にある、景色を見ながらの入浴。露天風呂ってやつらしい。足からゆっくりと、温泉につかっていく。
「おっ、あったかいね……」
「はい。気持ちいい─です」
冷えた肌に染みるお湯の暖かさに、思わず声が漏れた。
岩風呂の縁に背中を預け、思いっきり足を延ばした。
あまりのリラックス具合に、俺もウィンもボーっとしてしまう。
「混浴にはびっくりしたけど、来て良かったね」
「はい……」
なんとウィンは俺に体を預けてしまったのだ。
ウィンの柔らかい肌が、俺に密着する形になってしまった。
「一緒に、温まりたいです」
「そう──」
そして、しばらく時間が経つと──。
「ウィン。大丈夫?」
「なんか、フラフラするです……」
貧血かなんかかな?
ウィンの体をよく見る。うなじの生え際、耳、ぷにぷにのほっぺ。血が上っているのかピンク色に肌が高揚している。
……のぼせているんだな。
「とりあえず、風呂からあがろう」
ということでウィンの背中を抑えて立ち上がる。
フラフラとしながら歩くウィンを、抑えて歩く。
のぼせているなら、涼しい所で休ませて、水分補給。
そして建物の方へ歩き始めたのだが……。
ぎゅっ──。
俺の腕に身体を密着させ、しがみついてきたのだ。
確かにふらついてるような歩き方だから仕方ないのだが──。
体重をかけているせいで、離れられない。離した瞬間に、転倒してしまいそうだ。
番台のおじさんに事情を言って水をもらう。
受け取った水を、ウィンに渡す。
その水を飲むと、ウィンは大きく息を吐いてただコップを見つめていた。
ふらつきもなくなったし、どうやら落ち着いたみたいだ。
「あ、ありがとうございます……」
「落ち着いた?」
「──はい」
番台のおじさんは俺の肩をバンバンと叩きながら、からかうような口調で話す。
「兄ちゃんね。いくら裸で恋人と一緒にいるって言ってもさすがに一線を越えるっていうのはね~~」
「してませんから、そんなこと」
「わかったわかった。そういうことにしておくから、涼しい所で休んでな」
「はい……」
それから俺達は、靴を脱いで風通しの良い畳が敷かれた休憩所に入る。
窓側に木でできたベンチがあり、そこに二人でちょこんと座る。
「大丈夫?」
「大丈夫、です……少し、落ち着きました」
ウィンが大きく息を吐く。
顔色は……良くなってるみたいだし、強がっているわけではなさそうだ。
「もう一回、水持ってくるね」
そう言っておじさんの方へ戻って水を取ってくる。
「ありがとうございます」
ウィンは水を飲むと、うとうとし始め少し経つと──。
すぅ──すぅ──。
俺の肩に体を預け、うたた寝をしてしまった。
起こすかどうか迷ったが、今日はいろいろ歩いた。だから疲れがたまっているのだろう。
まだ閉店時間じゃないし、このままそっとしておこう。
それに、ウィンの寝顔。とってもかわいい。
見ているだけで、とっても幸せな気分になれる。ほとんど芸術に近い。
あどけなくて……、守ってあげたくなるようなかわいさ。
確かに、こんなものを見られたら誰だってウィンのことを意識してしまう。
それでも、ウィンの境遇のことを考えたら手を出す気になんてなれなかった。
やがてウィンが目を覚ます。眠そうに目をこすりながら俺の方に視線を向けてくる。
「す、すいません……寝ちゃって」
「いいよ。ゆっくり休めた?」
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