第11話 その気持ちは、わかる
「二手に分かれましょう。私とガロが後方。ガルドとニナが前方のゴブリンを相手取る。良いわね」
「わかった」
幸いここは一本道の間。二手に戦えば背中から襲われることはない。
そして、俺とニナがゴブリンとにらみ合う。
ゴブリンたちはグググ……だのグォォ……だの奇妙な鳴き声を挙げながら、俺達に一歩一歩近づく。
背後から襲われないよう、互いに背中を向けた。
ニナは弓を構えて詠唱する。
ゴブリンたちは詠唱を妨害しようとニナに向かってとびかかろうとする。
ニナは遠距離攻撃が得意な使い手。半面、接近戦になると弱さをさらけ出してしまう。
なので俺がニナにゴブリンたちを近づかせないようにしなければならない。
といっても守ってばかりでは敵は減らない。
一気に間合いをついて、一匹一匹ずつ倒していく。
ニナはどこか申し訳なさそうな表情で俺の背中で互角の戦いをしていた。
すると──。
「バカ、前に出るな!」
何とニナは接近戦が苦手だったにもかかわらず、俺の背中を離れ前に出てしまった。
弓を使いゴブリンの攻撃を防ぐが、本来の力を出せないニナは防戦一方になってしまう。
そして──。
「ぎゃぁぁっ!」
棍棒を右肩に食らい、思わず弓矢を離してしまった。
残りのゴブリンたちはチャンスとばかりにニナに向かって襲い掛かる。
俺も目の前のゴブリンを倒してニナの救援に向かうが間に合うかギリギリだ──。
そしてゴブリンの一匹がニナに襲い掛かろうとした。
ニナに攻撃を防ぐすべはない。
俺は横から割り込む形で、ニナとゴブリンの間に割り込んだ。
そして、ゴブリンの振り下ろした棍棒が俺の胸のあたりに直撃。
そのまま後ろに吹き飛ばされ、後ろにいたになと一緒に後方に吹き飛んだ。
「ガ、ガルド様──。すいませ──」
「謝るのは後」
言葉をかぶせるように言い返す。そんなことは後で言えばいいし、戦場ではお互い様みたいなものだ。
それより、すぐに立ち上がらなければ──。
最悪なのは倒れこんだまま攻撃を受け、サンドバッグの様になってしまうこと。
そうすれば、ゴブリン相手に袋叩きに会ってしまい、致命傷は免れない。
事実、チャンスとばかりに周りのゴブリンたちが一斉に襲い掛かってくる。
俺はニナの確認をする間もなく立ち上がり、応戦。
まずは目の前のゴブリンに突っ込んでいき、1体。さらにくるりと反転して背後から襲い掛かってきた奴を1体、切りかかる。
周囲から囲まれないように気を付けながら、俺はさらに応戦。
ニナも立ち上がり、彼女なりにゴブリンと戦いを続けていた。
接近戦が苦手なニナが頑張っているんだ。俺も負けていられない。
一匹一匹間合いを詰めて、一撃一撃追い詰めた後、急所を突く。
2匹目を倒したところで慌てて身を引いた。
左右同時にゴブリンが襲い掛かってきたためだ。
右の攻撃をかわしてからカウンターを見舞った後、身体を回転させ、勢いをつけて左のゴブリンを切り裂いていく。
そして、残りのゴブリンが後数体となったその時──。
「ガルドさん。いきます、伏せてください!」
ニナの弓矢からただならぬ魔力を感じ、俺はニナのそばによって身をかがんで座り込む。
その瞬間、ニナが弓矢を3本束ねて身体を回転させ、各方向の数メートルほど前方に矢を解き放つと──。
ドォォォォォォォォォォォォン!!
弓矢が直撃した場所の周辺が大きな爆発音を上げる。同時に耳をつんざくようなゴブリン達の断末魔が聞こえた。
すぐに煙が晴れていくと、爆発の衝撃で息絶えたゴブリンたちの姿。
ほとんどはかわしきることができず、屍となったが一部はまだ生きていた。
──が。
「ギィィ──。キィィィィ──」
残りのゴブリンたちはここから逃げ出していった。
深追いは禁物。周到な罠を仕掛けている可能性だってある。
「す、すいません。ガルドさん……」
ニナが女の子すわりで座りながら申し訳なさそうな表情で頭を下げる。
「何で、接近戦が苦手なのに前に出たの?」
「……ガルドさんばかり戦って、なかなか役に立てないじぶんが嫌になって。私も、ガルドさんみたいに活躍したくて……」
その言葉を聞いた俺、頭をポリポリかいて考えこむ。その気持ち、先輩は必死で戦っているのに、自分は何もできない無力感というのは、俺も感じたことがあるからだ。
だから、強く攻めたりしない。そっと、ニナの頭を優しくなでる。
「ガ、ガルドさん──」
「その気持ちはありがとう。だけど、無茶をするのはダメだ。その気持ちは、もっとこれから強くなって、そこで返していけばいい。わかった?」
そう言って、ほほ笑んでからニナの瞳をじっと見つめた。
ニナは、ほんのりと顔を赤くした後、ボソッとつぶやく。
「あ、ありがとうございます」
「ご、ごめんね……偉そうなこと言っちゃって」
結局、何の解決にもなっていない。もうちょっと、気の利いた言葉を言えるようになりたいな……。
おっと、戦いはまだ終わってはいない。エリアがまだだった。
「こっちは片付いた。後はガロとエリアだ」
そう考え2人が戦っていた後方に視線を向けた瞬間──。
「こっちも終わったわよ──。そっち、すっごい爆発音だったわね。大丈夫?」
「大丈夫」
そして、周囲を確認したがゴブリンは姿も気配もない。任務は完了したといっていいだろう。
「ふぅ……」
敵がいなくなったことで安心し、俺は座り込む。
他の仲間達も、大きく息を吐いたりして同じように腰を下ろした。
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