第109話 店や店員の対応はいいけど副支店長だけグズ

 魔石か宝石を使うことが決まったので、魔道馬車で商業区画に移動した。


 商業区画に到着すると護衛のために同行したカイトさんが一番最初に降り、次に私が降りた。


「お嬢様。段差がございますのでお気をつけてお降りください」


 先に降りた私は、手を差しのべてアイリスさんに紳士の対応をしてみた。


「「……」」


 アイリスさんは、ポカーンとして動かず、なかなか馬車から降りてこない。


「お嬢様は貴女様でしょう。アイリス様……」


 後ろから呆れたような声でカイトさんにそう言われた。


 だってやってみたかったんだから仕方がない。

 正気を取り戻したアイリスさんが私の手を取り、馬車から降りた。


「魔石や宝石は高価で、スクラルド王国では特に宝石はあまり採れないので他国の商人が店を出していることが多いみたいですよ。

 魔石は、スクラルド王国が最も多いのですけどね。

 アイリス様のお陰で更に増えましたしね」


 カイトさんがそう説明してくれた。

 魔石が多いってことは、魔獣も多いということだ。

 スノーとグレンが魔の森で魔獣狩りをしてくれるので、魔石がたくさん取れているのだ。


 とても大きな魔石は、売らず無限収納にしまってあるが、それ以外はギルドで買取してもらっている。


「アイリスさん。どっちから見に行きます」


「そうですね……カイトさん。どちらも扱っている店ってありますか?」


「ありますよ。他国の大商会の支店になりますけどね」


 どちらも扱っているなら一軒だけで済むので、取り扱っている品が良ければ何軒も回らなく済みますね。


 という事で、その店に行ってみることにした。


「いらっしゃいませ。どんな物をお探しでしょうか」


 店に入ると店員が話しかけてきた。

 店内を見回してみたが、内装も見たことような造りだけどいい感じの店だし、店員の対応も丁寧だ。


 区画整備以降に出店した店などは私は関与していないので、私が魔法で建てた店以外を見るのは新鮮でいい。


「宝石と魔石を見せてもらってもいいですかね」


「かしこまりました」


「いらっ……副支店長。今日はお休みのはずでは……」


 新たに入ってきお客さんだと思って、私たちの対応をしている人とは違う店員さんの一人があいさつをしようとしたが、途中でお客さんではなくこの店の副支店長だと気づき、あいさつをやめた。


「何だ。ガキが来るような店じゃないんだ。ひやかしなら帰れ、それにここは獣人お断りだ。獣臭さが店に付いたら客が来なくなり、売上が下がるだろう。営業妨害で訴えるぞ」


 うわぁ~。これは一時期夫婦喧嘩や喧嘩などが頻発して、毎日何人も結界に弾かれる者が続出した。


 なので結界を悪意がある者を通さないから人殺しや誘拐など犯罪を犯す考えを持っている者を通さないってルールに変更した弊害だな。


 今まで問題なかったけど、他国の者が出店することも多くなってきたみたいだから、特にファミーユは他種族も多くいるので、他種族に悪意がある者は通さないも追加しよう。


 なんでもっと配慮しなかったかな……これは、私のミスだ。


「スクラルド王国では、他種族を差別するのは法律で禁止されているのですよ。

 一回目は注意だけですけど、何度も繰り返すようなら捕まりますよ」


「ふん!私はイスタリスタ共和国の人間だ。イスタリスタ共和国では、獣人は奴隷として扱っていいのだ。

 だから罵倒しようが殺そうがイスタリスタ共和国の法律で許可されているのだから問題ない」


 そんな国もあるんだね。でもここはスクラルド王国だ。


 他国のであってもスクラルド王国にいるのなら自国ではなくスクラルド王国の法に従うのが当たり前のことだ。


 支店長以外の店員も他種族にいい感情を持っていない人もいるかもしれないけど、態度に出さずちゃんと対応をしている。


 私は、当主でないから不敬罪の対象外だが共和国ということは、王族や貴族などの身分の者がおらず、国の者も全員が平民で、国民の中から政は代表を選出しておこなっているということだ。


 なのでこの副支店長は、王族や貴族に不敬を働くとどいうことになるのか理解してない可能性が高い。

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