第101話 声を合わせてサヨナラ①
孤児院にいる人たち全員の着替えが終わりダメクは、また院長がこちらに近づいてこないように対処するためにカイトさんの元に戻った。
私は作った囲いを魔法で元の土に戻すと子供たちや副院長たちと談笑を始めた。
「本当にありがとうございます。服まで頂いて、感謝致します」
ダメクは、一人一、二着とかではなく気を利かせて一人十着選べるくらいの古着や下着を買ってきてくれたのだ。
副院長から感謝の言葉を頂いたが、まだ全てが解決したわけではない。
この悪徳院長を排除しなければ、私たちが去ったあとは元通りではないな……院長に逆らったのだから今までより劣悪な環境になるだろう。
そう考えていると魔道馬車が孤児院に入って私の前で止まった。
「アイリス。待たせたな」
馬車から降りてきたカイル兄様が私に声をかけてきた。
まあそれはいいのですが、カイル兄様に続き、次々と馬車から降りてきてますが、何か三人ほど人数が増えてますね。
しかも見知った方たちですけど、一番この件の解決を簡単にできてしまう方たちですけど、王都だからといって、気安く出てこれる方々ではないと思うのですけど大丈夫なのでしょうか。
副院長たちや子供たちは、その場で慌てて平伏した。
子供たちは、良くわかってないのか副院長たちに同じようにするように言われてって感じたけどね。
まさか孤児院に国王陛下が直々に来るなんて思わないもんね。
驚いている子供たちや副院長たちに申し訳ない気持ちになったが、とりあえず挨拶しなきゃだね。
「お久しぶりです。国王陛下、王太子殿下、エリック宰相様」
「「「久しぶりだな」」」
挨拶も済んだので、国王陛下たちに今の状況を説明した。
「なるほど、距離をとっておるあの太った爺さんがその院長か。
確かに一人だけ贅沢三昧をしているようだな。
カイト。その院長をこっちに連れてこい」
王太子のトマスさんが院長を見てそう言ってカイトさんとダメクに院長をこちらに連れてくるように言った。
連れてこられた院長は、国王陛下の前で平伏した。
「院長以外の者は折角、着替えをしたのだし汚れてしまうだろうからな、頭を上げ立って構わぬぞ」
副院長たちは、恐る恐る立ち上がった。
「それで、国から予算が出ているはずだし、寄付もあったりするだろう。なのにこの孤児院はどういうことだ。嘘偽りなく、説明しろ」
副院長たちや子供たち全員が立ち上がったのを確認した国王陛下は、院長に説明を求めた。
「申し訳ございません」
「私は、謝罪を求めたのではない。説明しろと言ったのだ」
院長は、謝罪の言葉を口にしたが国王陛下は、謝罪を受け取らず、バッサリ切り捨てた。
「しゃしゃ借金がありまして、国からの予算や貴族からの寄付を借金返済に回してしまいました。
出来心でつい愚かなことをしてしまったのです。
お許しください」
院長は、汗をハンカチで拭きながら必死に説明をし、許しを乞うた。
「借金があるのは本当なのだろうが、国からの予算も貴族からの寄付も少ない額ではないよな。全てを借金返済に使ったわけではないだろう。
国から支給されている金を横領したのだ。
謝って許されるようなことではないんだよ。無駄な謝罪は不要だ」
何で、悪あがきするかなこの院長……素直に全て話しちゃえばいいのに。
「アイリス。子供たちに聞こえないように防音結界を頼む」
一旦、話を切り、子供たちを見てから私に防音結界を張るように頼んできたので、私は防音結界を張った。
「では、結界も張ってもらったし、子供たちに聞かれることもなくなったからな。
他にも話さなければならぬことがあるだろう。なぁ~。話してもらおうか」
結界の外にいるので聞こえないが副院長たちは、私に出るように言っている感じだ。
私が転生者だとしているので、私が結界内に居ても国王陛下たちは特に気にもしないが、一旦、結界の外に出て、私は副院長を説得して、また結界内に戻った。
「子供が急に居なくなることがあるそうですね。
その居なくなった子供たちは、どうしたのですか?」
院長がなかなか話だそうとしないので、こちらから質問してやった。
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