第77話 カレー再びとトマト好き
後でこっそり聞いたら、マーガレット義姉様たち、親しい者は、ハルナさんが転移者であることや国外追放になったことやその理由を話してあって、知っているらしい。
まあ、そうだよね。
王女殿下の専属メイドだもんね。普通のメイドすら、しっかり調べる必要があるんだから、知らないわけないか。
ハルナさんのご希望で今夜の夕食は、カレーに決まった。
そういえば、ライスがいいかナンがいいか聞いてなかったな。
新しく来た人たちがは、ご飯を知らず、慣れていない人がほとんどだから、両方用意すればいいかな。
タンドール窯もあるし、タンドリーチキンも付けよう。
「お待たせしました。今日は、ハルナさんリクエストのカレーになります」
「おお、カレーか。ハルナさんのリクエストなのか……」
「転生者のアイリスちゃんも転移者のサクヤさんもいますし、カイル様も関係あることなので、お話しますが、ハルナもサクヤさんと同じ転移者なのですよ」
「そうか。だからカレーを知っていたのだな」
「アイリスは、知っていたのか?」
「はい。名前や容姿からそうではないかと思ったので、町を案内していた時に確認しましたから」
旧本邸の時には、絶対にあり得ませんでしたが、アリステラ公爵家では現在は、料理長のゾイルさんと料理人のマキさんは別の場合もありますが、使用人もたちも私たちと同じテーブルを囲い食事をするようにしています。
広いダイニングルームで、私とカイル兄様の二人だけの食事は寂しいですし、食事はたくさんの人と食べたの方が楽しめますからね。
「ハルナは、父上や私に近しい者以外は知っておりますが、大っぴらに転移者であることを話していないので、異世界料理は食べる機会が無かったので、たのしみですわ」
「マーガレット様。大変言いにくいことではありますが、私が転移者だと大っぴらに話していたとしても、異世界料理を食べる機会は、なかったと思います。
私は、その……アイリス様と違い、料理が得意ではないですし、料理人に作ってもらうにしてもなんとなく使う材料はわかりますが、料理の行程をせつめいできませんから……」
「ファミーユの住民たちのほとんどが、アイリスが転生者だと知らぬが、アイリスは、異世界の知識を使いまくりだがな。
サクヤが召喚された勇者だということを知る者も少ないな」
「サクヤさんに関しては、我が先祖たちが隠蔽していたので、勇者が召喚されたことも、伝承も残っておりませんからね。
もし伝承があったとしても、まさか三百年以上昔に召喚された者が私たちと同じくらいの年齢の若い姿で、まだ生きているなどと思いませんしね」
人族も魔力が多い者は、長生きだけど、若干遅いらしいけど、ちゃんと老けていくみたいだしね。
若い姿で、現れても同一人物なんて思わないよね。
「ライスは、ハルナさんは食べ慣れていますが、他の方は、はじめてでしょうからライス以外のパンのような物も用意してありますので、お好きな方を召し上がりください」
「ライスとはなんですの?」
「どこにでも生えているライス草を炊いたものです」
「ライス草は食べられましたのね。こちらのパンと同じで小麦粉からできている感じの物はなんですか?」
「はい。その通りです。マーガレット義姉様。ナンですよ」
「アイリスちゃん。何なんですか?」
「ナンですよ」
「マーガレットとアイリスの会話は、かみ合っているようで全くかみ合ってないな」
「アイリス。マーガレットは、この食べ物の名を知っていたわけではなく、何かと聞いていたのだ」
「なるほど、だからその通りだと言ったのにナンナンいっていたのですね」
「それからマーガレット。私も始めてみるが、これはナンというのが食べ物の名だ」
「そうでしたのね。紛らわしい名の食べ物ですわね」
全くです。誰がこんなややこしい、ダジャレに使えそうな名を付けたのでしょうかね。
「私は、久しぶりのご飯で、カレーライスもいいけど、カレーの本場はインド。インド料理店ではナンが出てくるし、本場の人たちから食べ親しまれているナンいこうかしね」
「ハルナさん。日本のインド料理やインドの飲食店では、ナンを提供していたりしますが、残念ながらインドの方は、ナンをご家庭で食べたりしません」
「そうなの!!」
「理由は、白い精製された小麦粉が高級品であることとナンを焼くための大きなタンドール窯と、それを熱する燃料が必要となってきます。
一般に窯を買えるような家庭は少ないらしいですし、窯の置き場所がないため、家庭でナンを焼いているインド人は基本的にいないらしいです。
元々は、北インドの宮廷料理だったらしいですからね」
「じゃあ、インドの家庭では何と一緒にカレーを食べているの?」
「南インドは、日本などと同じくライスです。北インドでは、全粒粉を水と塩で練って薄くのばし、フライパンなどで焼いたチャパティですね。
クレープのような薄い円形をしていて、これを手でちぎりながらカレーにつけて食べるらしいです」
「物知りだね。インドといえば、ナンだと思っていたよ私」
そういうのあるよね。あと文化の違いとかさ。
日本では、例に例えやすい鍋は皆で一人ずつ器に取り分けて食べる。
居酒屋とかで焼き鳥を串から外して皆で食べたり、一品頼んで、皆でシェアすることが多いけど、海外では自分の食べ物は自分の物で他の人と一つの物を食べたりするシェアをしない国もある。
「どうですか?マーガレット義姉様。始めて食べたカレーライスの感想は」
「スパイシーで美味しいよ。癖になるね。ライスもそこら辺にたくさんあるんだからもっと早く食べればよかったと思いますわ」
「ちゃんとした炊き方をしらないと美味しくないから、だから家畜の餌としてしか使われていなかったんだと思いますよ。
私たち以外にも私たちと同じ世界からの転生者や転移者は、いたかもしれませんし、いるのかもしれませんが、そこら中に生えている雑草が米だとは思わないでしょうし、精米する機械もないわけですからね。
私は鑑定スキルがありますし、機械とかも魔法で造れちゃうのでできましたけどね」
「確かにそうだな」
そうだよ。完全に能力があるので、自分が食べたいと思ったから、やっただけだけどね。
「マーガレット義姉様は、作ってもらいたい異世界料理とかありますか?この食材を使った異世界料理が食べてみたいとか?」
「私は、トマトが好きなので、トマトを使ったお酒に合う料理がいいですわね。
トマトならどんなトマトでも一日四キロくらいなら食べられますわよ」
お酒好きは、王妃殿下からの遺伝ですかね。
ちょっと待てよ。どんなトマトでも一日四キロ食べられるの?
「マーガレット義姉様。まさか緑色の完熟していないトマトをたくさん食べたことがあったりとかしませんよね?」
「美味しくなかったので、たくさんは食べてはいないが、食べたことはある」
マジか!!伝えるべきだろうなトマトには毒があると
「マーガレット義姉様。トマトには毒があります」
「何、トマトを食べると死ぬのか!?私はもうトマトが食べられないのか……」
「安心してください。緑の完熟していないトマトを一日に四キロ食べたら死にます。
ただ赤く完熟したものなら微量の毒性は残っておりますが、致死量は一日に四トンなので、四キロ食べても死ぬことはないので問題ありません。
しかし、一つの物ばかりを食べ過ぎたり、偏った食事ですと病になったりするので、お気をつけください。
トマトを使ったおつまみ考えておくので、楽しみにしてくださいね」
「わかった。楽しみにしている。だが私を驚かすようなことは止めてほしいです。
一生大好きなトマトが食べられなくなってしまうのかと思いましたわ。
赤じゃなく、黄色いものとかもダメですか?」
「完熟すると黄色くなる品種のトマトなら大丈夫です。
完熟すると赤くなるの品種なのに黄色っぽくまだ完全に完熟していない物はダメですけどね」
仕方がないじゃないですか。完熟していない緑のトマトを食べたことがあるなんて言うんだから、カイル兄様の婚約者の王女様に死なれては困りますからね。
しかし、王女殿下が緑のトマトを口にする機会など普通は、ないと思うのですけど……
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