第66話 護衛三日目ファミーユ到着

 昨夜の夕食は、倒した魔獣を使って、焼肉、ステーキ、しゃぶしゃぶ、すき焼、唐揚げと、肉肉三昧の異世界料理の夕食となった。


 国王陛下たちは勿論、騎士たちにも大変喜ばれた。


 サクヤも懐かしい料理ばかりで、泣きながら食べまくっていた。


 私は三年……もうすぐ四年になるけど、サクヤはこの世界に来てから三百年以上だもんね。


 片やこの世界に召喚され、日本から居なくなり、片や殺され日本での生を終え、記憶を持ったまま異世界で新たな生を受けた。


 同じ日に日本から居なくなったのに四年と三百年以上と、かなりのズレがあるのは、転生と転移の違いなんだろうな。


「おはようアイリス嬢。昨夜は、初めて食べるものばかりだったが美味しく、色んな物があったからとても満足した」


「おはようございます。セマイ様。昨日もそれ聞きましたよ」


「そうだが、何度でも言いたいのだ。

 私は、飯など食べられれば何でもいいと思っていたから、あんなに美味しいものがあるなんて知らなかった。アイリス嬢には、感謝している」


「そうですか」


 初めて会った時は、職務とはいえ剣を向けられたけど、数日でよく話をするようになったな。

 視野が狭くなってしまうところもあるけど、基本いい人なんだな。


「それで、今朝の朝食もアイリス嬢が作られるのだろう?朝食は何なのだ?」


「またお肉になりますが、ハンバーガーにしようと思います」


「ハンバーガー?」


 この世界は、肉は好きな大きさに切ってステーキするのが一般的だ。


 肉をミンチにして、成形して焼くハンバーグがないからハンバーガーと聞いてもセマイ様は、ピンっとくるわけがない。

 なので、わからないから聞き返してきた。


「ハンバーガーはお肉をミンチにして、みじん切りにした野菜にパン粉を混ぜ、塩を加えて粘性を出し、卵を繋ぎにして成形してから焼いた料理をハンバーグというのですが、そのハンバーグとレタスなどの生野菜をパンで挟んだものがハンバーガーです。

 付け合わせにフライドポテトもつけましょうかね」


「また知らぬ料理名が出たな。フライドポテトとは?」


「フライドポテトは、じゃがいもを……」


「じゃがいもか……我、シヤ子爵領はじゃがいもの生産量が多いので、毎日のように蒸して、軽く塩を振っただけじゃがいもが出るのだが、飽きたし、うまいものではない。

 毒があり、腹を壊したり、最悪死ぬこともあるしな。

 アイリス嬢の料理なら毎日でも飽きずに食べれるし、毎日でも食べたいな」


 ああ、ほぼ毎日同じ味付けの同じ料理を食べさせられたら飽きるよね。


 セマイ様のフライドポテトは、塩じゃなく粉末のコンソメをまぶしたものにしてあげよう。


 じゃがいもの毒。芽とかに含まれているソラニンや

 チャコニンのことだね。

 ソラニンよりチャコニンの方が毒性が強いんだったけかな。


 ソラニンやチャコニンの致死量は成人体重一キログラム当り三~五ミリグラム。


 芽に含まれるソラニンやチャコニンの量は三ミリグラム~六ミリグラムらしいので、体重五十キロの人は五〇ミリグラム摂取すると症状が出る可能性があり、 一五〇 ミリグラム ~ 三〇〇ミリグラム摂取すると死ぬ可能性があり、意外と少なく感じる。


 じゃがいもにより含まれている量が違ったりするからちゃんと処理してなかったり、緑化したじゃがいもを一個、二個食べただけでも症状が出る場合もある。


 ソラニンやチャコニンの毒は、ちゃんと加熱すれば大丈夫と思っている人も多いみたいだけど、加熱しても毒は消えず、六割ほど残っているという研究結果もあるらしいので、しっかり処理をしたり、緑化したものは食べない方がいい。


 私の料理なら毎日でも食べたいって……何かプロポーズの言葉みたいだよ。

 もうすぐ四歳になる幼女に言う言葉ではないですよセマイ様。



「毒はしっかり処理をすれば、だいじょうぶですよ。

 では、フライドポテトの説明しますね。

 フライドポテトは、皮を剥かずに食べやすいサイズに切ったじゃがいもを油で揚げて、塩などをまぶしたものです。

 食べ過ぎは身体によくないですが、手が止まらなくなるくらい美味しいですよ。

 じゃがいもに飽きてしまわれているセマイ様にも美味しいと思ってもらえると思います」



 前世には、皮なしの細長くしたフライドポテトもあったが、私は皮つき派なので、皮つきのフライドポテトにする。


「そうか。では楽しみにしている。

 それからハンバーグとやらを作るのに肉をミンチにする必要があるのだろう?力仕事だろうから私も手伝おうか?」


「お言葉は嬉しいのですが、宮廷料理人の人たちがいますので、料理人に手伝って貰いますので、大丈夫です。

 セマイ様は、楽しみに待っていてください」


「わかった。そうさせてもらおう」


 私は、セマイ様と別れて、厨房に向かい料理人にたちと朝食を作った。


「アイリス。朝食も美味しかったし、さっきの昼食のラーメンも美味しかったよ。

 ハンバーガーも、ラーメンも久しぶりに食べたから食べすぎちゃったよ」


 昼食は前世の某ラーメン屋のもやし山盛りにチャーシューをたくさん乗せたラーメンを作った。


「ありがとう。サクヤ。喜んでもらえて嬉しいよ」


「おうおう。仲いいなあ。カイルが見たらなんというかな」


 私とサクヤのやり取りを見て、ルシフェルが茶化してきた。

 アナリスさんもニヤニヤしている。


 護衛中にこんな軽口を叩けるほど、何事もなくファミーユに到着した。

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