第64話 護衛一日目

 護衛依頼がスタートした。


 馬車を囲むように前後に三人ずつ騎士たちが、左右に私たちが二人ずつ配置されてファミーユに向けて進んでいる。


 騎士たちもアナリスさん、ルシフェル、サクヤも馬に騎乗しているが、私はスノーに乗っての移動だ。


「馬がスノーを怖がるかと思いましたが、大丈夫そうですね」


「そうだな。私たちの方が聖獣様と一緒に居るこに緊張している感じだ。

 こいつらは乗り手の気持ちがわかるから、私たちの緊張していて、不安になってしまうといけないから私たちも気を落ち着かせなければな」


 後ろにいる騎士さんに話しかけるとそう返ってきた。


 馬は、体が大きい割に臆病で、敏感だって聞いたことがある。


 スノーを怖がるかと心配したが、全くそんなことなかったのだ。


(アイリス。こいつらは、馬じゃないよ。

 ダークホースとホーリーホースっていう魔獣だよ。

 強い部類で頭の魔獣だから、僕たちを怖がることはないよ。

本来の大きさだとわからないけど、この大きさだしね)


スノーの今の大きさは、二メートルくらいのダークホースよりすこし小さいくらいのサイズだ。

子犬サイズ~本来のサイズまで自由に大きさを変えられる。


グレンも大きさを変えられるらしいけど、いつもオオタカぐらいサイズでいる。


(魔獣なのか。騎士たちと従魔契約しているのかな)



(ダークホースは従魔契約しているけど、ホーリーホースはしていないね。

 ダークホースは騎士それぞれが個人で所有していて、基本的に契約している者しか騎乗できず、ホーリーホースは、御者がいつも同じなわけではないから従魔契約しないで、誰でも言うことを聞かせられるようにしているんだと思う。

 ホーリーホースの方が人に懐きやすいし、頭もいいから)


(そうなんだ)


 ダークホースは、従魔契約しているから契約している騎士専用で、ホーリーホースは契約してないから誰の言うことでも聞くようにしているのか。


「私もダークホースに乗ってみたいな」


『ヒヒィ~ン』


 私が乗ってみたいと言ったタイミングで、ダークホースたちが鳴いた。


「どうしたんだ。急に」


「「「よしよし」」」


「「落ち着け、落ち着け」」


 騎士たちが急に鳴いたダークホースたちを宥めだした。

 これは、タイミング的に私の所為か?


(誰でも乗せてあげるよ)


(是非、乗ってくれ)


(聖獣様に主なら大歓迎だ)


(どうしてもって言うなら乗せてやってもいいぞ)


(美味しいご飯くれたらいいよ)


(可愛い娘に乗ってもらうために僕はいるのさ。だから君なら乗せてあげるよ)


 これは、ダークホースたちの声が聞こえてきた。


 ダークホースたちも人と同じで、色んなのがいるんだね。


 契約しているけど乗せるのは誰でもOKだったり、食いしん坊だったり、ツンデレだったり、キザな台詞を言ったりと……

 そして、鳴き出したのは私が原因で確定だね。


「騎士の皆さん。すみません。私がダークホースに乗りたいって言ったから、ダークホースたちが騒ぎだしちゃって」


(皆、後で乗せてもらうから落ち着いてね)


(やった~)


(わかりました)


(御意)


(しょうがないな)


(ご飯も忘れないでね)


(わかったよ。子猫ちゃん)


 騎士たちに謝罪したあと、ダークホースに念話を送るとダークホースたちは、おとなしくなった。


「私たちはできないけど、もしかして、アイリス嬢は、ダークホースと話せるのかい?」


「はい。念話で、話すことができます」


「それは、凄いな。私のことをどう思っているか後で聞いてくれないかい?」


「構いませんよ」


(何かありましたか?)


 ダークホースが騒いで、馬車が停まったので、空から様子を見ていたグレンが戻ってきて、私の肩に留まった。


(私が、ダークホースたちに乗りたいって言ったから騒いじゃったんだよ)


(そうでしたか。彼らも落ちついたみたいですし、私は、空からまた警戒しておきます)


 グレンは飛び立ち、空からの警戒に向かった。


「野営場に到着しました」


 しばらく進むと拓けた場所に到着し、馬車が止まった。

 私たちより先に野営をするために止まっている馬車や野営の準備をしている人たちがいた。


 今日は、私の所為で、ダークホースたちが騒ぎだした以外は、特にトラブルもなかったな。

 明日も何もないといいな。

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