第63話 ズイラン男爵

「カイル兄様。行って参ります」


「うん。到着は明後日だね。こちらも準備しておくよ。

 国王陛下やエリック宰相は、ある程度耐性があるけど騎士団の者たちは、アイリスのこと知らないんだから、やり過ぎてはダメだよ」


「わかっています。転移魔法使えばあっという間なんですけどね」



「そうなんだけどね。王族や貴族は、ファミーユまでの旅で、顔を売りその街の状況を確認する。

 それも王族や貴族の役目で、国王陛下とエリック宰相は、顔を売る必要はないけど、街の状況は確認する必要もあるみたいだし、国を豊かにするためにも、通過する街々にお金を落とす必要があるからね。馬車での移動になるんだよ」



 一部が潤っても国全体が豊かにならない治安も悪くなったりするからね。


 必要ないのに買い物をしたりして、街にお金を落とさなければならないんだろうけど……


「貴族って面倒ですね」


「まあ、屋敷馬車を使うみたいだから寝泊まりは、宿使わないみたいだけどね」


「国王が泊まったとなれば宿泊客が増え、街の活性化繋がると思うのですけど」


「アイリスの所為かな。結界も展開できて、馬車の中は、空間を魔法で拡張されているから、宿に泊まるより、安全・安心・快適だからね」


 まあ、そのような目的で造りましたから、そうなっちゃうか。


 結界もあるし、部屋たくさんあるから、護衛も寝ずの番の見張りが要らないからゆっくり休めて、護衛の効率上がるしね。造った私は流石だね。


「アイリス。造った私は流石とか調子に乗っちゃダメだよ」


 心を読まれたか。ついついカイル兄様が心を読めるスキル持ちってこと忘れちゃうんだよね。


「わかってます。では改めて行って参ります」


「うん。いっといで。アナリスさんもルシフェルもサクヤもアイリスのことよろしくお願いします」


「「「任せろ(て)」」」


 私たちは、王城に転移した。


「国王陛下、エリック宰相様。護衛の依頼を受け参りました」


「うむ。よく来た……」


「おい。子供がどうやって入って来た!!それ以上近づくな。

 それ以上近づけば、子供だからといって、容赦せぬぞ」


 一応、立ち止まるけどさ。確かに私は子供だけどさ。


 騎士だから国王陛下やエリック宰相様から危険を排除して、身の安全を護るのが役目なのもわかるんだけどね……

 国王陛下が話されているのに話を遮っちゃダメでしょう。


「セマイよ。私の話を遮るとは何事だ。

 それにその子供。アイリスは、私がギルドに依頼した護衛の冒険者の一人で、私の姪だ。次はないと思え」


「申し訳ございません。国王陛下」


「済まぬな……アイリス。セマイは、シヤ子爵家の嫡子でそれなりに腕は立つのだが、たまに周りがよく見えなくなってしまうのが、困りもでな」


「いいえ。国王陛下の話を遮ってしまわれましたが彼は、職務を全うしただけですから私は気にしておりません」


 それにしても狭い視野とか。

 あのギルドで会ったお坊ちゃんもだけど、王族や上位貴族は普通なのに、この世界の下位貴族は、つい笑ってしまいそうな名をつけるセンスがあるのかな。


 嫡子ってことは、シヤ子爵家の次期当主なのに視野が狭くて大丈夫なのかな?


 他家のことだからどうでもいいか。

 そんなことより、ついでだからお坊ちゃんのお父さんについて聞いてみよう。


「国王陛下。お聞きしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか」


「構わぬ」


「ファミーユのギルドで、子息に会ったのですが、ズイラン男爵とは、どのような方なのでしょうか」


「何かあったのか?」


「まあ、そうなのですが……貴族家の方が多くいらっしゃいますので、この場では詳細は控えさせていただきます」



「そうか。ズイラン男爵は、エリック宰相の補佐をさせておって、毎年起こる大雨による川の氾濫の大被害の対策や備蓄の重要性を提案し、完璧とはいかぬが四年間も最小限の被害にとどめることができている。

 使わず不要となった各領の備蓄は、貧しい領に格安で譲る案や貧しい民や孤児院に無償でという案を出したりして実施しており、と国や民のことを考えて仕事をしてくれている素晴らしい男だな。

 その功績により近々、子爵に陞爵される予定だな」



 前世でも堤防とか色々対策されているけど、絶対氾濫しないってことはないからね。

 最小限の被害にとどめられているのは凄いね。


 氾濫で作物がダメになって、食料不足や価格の高騰とかになったりするからね。


 備蓄も使わなければ、そのままにしておくとダメになって食べられなくなっちゃうから、ダメになる前に必要なところに譲るってのはいい考えだね。


 何で国王陛下からの覚えもいい優秀な親からあんな残念な子が育ってしまったのやら……


 まあ、アリステラ公爵家では、私を除いて考えると親がダメで嫡子は優秀、次男三男、長女は親に似たって感じではあるけどね。


「国王陛下の覚えもいい優秀な方なのですね。

 会ってみたいたいですね」



「今回の視察に同行するぞ。急激に豊かになり、発展したらしいファミーユの町を見てみたらいらしいからな。

 取り入れられそうな所は、国や自領で取り入れたいらしいぞ。

 ライス草が美味しく食べられることを教えたら、早速、試してズイラン領では、パンに代わり主食なっているらしい、魔動馬車も自領の錬金術師や魔道具師を使い造らせて、導入して王都より早く普及しているらしい」



「そうなんですか」


 ファミーユの町は、私の魔法フル活用だから全てを取り入れるのは無理だろうけど、取り入れられそうな物があったら参考にして貰えたらいいね。


 話しはこれくらいにして、ファミーユに向けて、出発する事なり、ズイラン男爵にも軽く挨拶をして、国王陛下たちを乗せた馬車がファミーユに向けて走り出した。


 私たちの護衛依頼もスタートだ。

 探知魔法も常時発動させているから、奇襲対策もバッチリだ。


 ズイラン男爵には、後で三男坊の話をしなきゃだし、公爵邸にも来てもらうことになるだろうな。


 真面目な感じだったから、坊っちゃんがどうなろうと構わないけど、陞爵辞退するとか言い出さなきゃいいな。

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