第60話 アイリス、人違いで囲まれる

 従魔登録のためだけで、冒険者として依頼を受けたりするつもりはなかったのだが、魔国での狩りが楽しかったこともあり、冒険者として活動する気になったアイリスは、冒険者ギルドに来ていた。


(スノー、グレン。どんな依頼があるかな?)


(僕に聞かれてもわからないよ)


(私も同じくです)


(そりゃあそうか)


(受付で、聞いてみたりするのがいいんじゃない)


「ちょっといいか」


 スノーとグレンと念話で話していたら声をかけられた。


「なんですか?」


「ソロで活動しているSランク冒険者でエルフ族のアナリスだろう?

 最年少のSランクなって、小さくって子供くらいの身長って噂だからピンっときだぜ。

 よかったら、一緒に依頼受けてくれないか?」


「違いますよ」


「Sランク魔獣ねホワイトウルフとファイアバードを従魔にしている冒険者っていったらアナリスしかいないんだから、隠しても無駄だぜ」


 違うって言ってんじゃん。


 スノーとグレンは、ホワイトウルフとファイアバードっていう魔獣じゃなくて、聖獣でフェンリルとフェニックスだよ。


 それに私は、エルフ族ではなく、人族ですよ。


「どうしたどうした」


「アナリスだよな。俺たちと依頼受けないか?」


「私は男爵家の三男だ。私のパーティーに加えてやるから感謝しろ」


「おい。俺が先に声掛けたんだ。割り込むなよ」


 冒険者たちが集まって来て勧誘してくるけど、人違いだし、言い争うのやめてくれるかな。

しかも貴族までいるのか面倒だ。


 私は受付に行きたいんだけど……

 この人たち、私のことを知らないみたいだし、私も見たことがないから他所から来た冒険者だな。


「あの!!受付に用があるので、喧嘩するなら退いてもらえますかね。

 私は、アナリスさんではないですから!!」


 アナリスさんは、エルフ族の女王であるミリーナの姉で、エルフの里を出て冒険者になったらしい。


 区画整備が終わった翌日に姉に会いにファミーユにひょっこり現れて、新たにファミーユの住民となったのだ。


 ミリーナは、銀髪で身長が高くナイスバディーだが、姉であるアナリスさんは、銀髪で身長が低く幼児体型なのだ。


 里にいた頃は、ミリーナが姉でアナリスさんが妹だと間違われていたそうだ。


 まあ、私も銀髪だし、従魔をつれているから間違われても仕方がない部分もあるが、違うと否定したのに引かない上に、私を囲んで、目の前で言い争いをするのはやめてもらいたい。


「ガルル」


「従魔が人に危害を加えたら、Sランクとはいえ罰せられるぞ」


(スノー。気持ちはわかるけど落ち着いて)


(アイリスが言うならやめるよ)


 邪魔だからとスノーが威嚇で喉を鳴らすとそんなことをいわれたので、一応、スノーに威嚇をやめさせた。


「ルシフェル。アイリスちゃんが冒険者として活動するらしいから、ソロでやってきたがパーティーを組もうと考えている。

 容姿も似ているから美人姉妹パーティーとか言われるかな?」


「実力はあるが、アイリスは登録しているが、活動していなかったからCランクだぞ。

 顔は整っているが、幼女と幼児体型エルフで美人というのはどうなんだ」


「うるさいぞ!!気にしていることを!!

 実力があるならランクは気にしない。

 特別にルシフェルもいれてやってもいいぞ。

 あとサクヤも入れてもおもしろそうだな」


「サクヤは、カイルの手伝いがあるから難しいんじゃないか」


 私が冒険者たちに囲まれ行く手を阻まれているとそんな話をしながら、ルシフェルと一緒にご本人が登場した。

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