第16話 子犬を拾いました。新たな家族ができた

 各村に行き、治療して廻るという予想外のことは、あったものの、無事に外壁を取っ払い、結界を町に張るという予定を終えた私は、畑の様子を見に来ていた。


 まだ私が、掛けた魔法の効果が残っているのか、植えられている苗は、通常より早く育っていた。


「あれ、こっちに近づいてくるのなんだろう?」


 結界近くの畑の端まで行ったら、結界を通過し、こちらに白い何かが近づいてきたのが見えた。

 魔の森の方から来たみたいだけど、結界内に入れたので、悪いものではないだろう。


(ねえねえ、僕に名前つけて欲しいの)


 いきなり、頭の中に声が聞こえてきた。

 おお、これは念話というやつだね。


(君に名前をつければいいんだね)


 真っ白で、もふもふしたい毛並みの子犬だな。

 かわいい名前にしてあげよう。


(スノーって、どうかな? 雪って意味なんだけどね。 毛が真っ白だし、フワフワした毛並みしているからさ。ちなみに私の名前は、アイリスだよ。)


(スノーって名前、気に入った。つけてくれてありがとうアイリス。今日から僕の名前はスノーだ)


(かわいい子犬だな。スノーは、なんでここに来たの?)


(僕は、子犬じゃないよ。フェンリルだよ。ここに来たのは、アイリスに会うためだよ)


(そうなんだ。私に会いに来たのか。)


 フェンリルって犬種あったかな?聞き覚えがあるような……まあ、いっか。


(勝手に飼うと兄様が怒るから、一緒に来てくれるかな?)


(わかった)


 私は、スノーを連れて屋敷に戻った。


「カイル兄様、子犬を見つけました。飼ってもいいでしょうか?名前はスノーっていいます」


「何処に居たの?」


「畑を見に行ったら、魔の森の方から結界内に入ってきて、話しかけられました」


「!!」


「どうしたのですか?カイル兄様」


 カイル兄様が黙り込んで、何か考え始めてしまった。


 魔の森の方から来たことを気にしているのかな?

 私は考え事をしているカイル兄様の顔を覗き込んだ。


「魔の森の方から来たみたいだけど、結界内に入れたのだから、そこはあまり気にしていないよ」


 私の考えていること読まれた!!顔にでやすいのかな?

 私は、自分の顔を触ってみた。


「アイリス、忘れちゃったのか? 私は、人の思っている事が読めるスキルを持っているんだよ」


「ああ、そうでした」


「それでね。スノーは、子犬じゃないと思うよ。それに、動物とは話せないからね」


「そういえば、スノーも子犬じゃない、フェンリルだって言ってました」


 魔法がある世界だから、動物と意志疎通取れるのかと思っていたけど、違うみたいだね。


「フェンリル!!聖獣様!!」


(アイリスは、僕のこと犬扱いだったけど、わかってくれる人がいた。よかったよ)


(スノーって、聖獣なの?)


(そうだよ)


「どうしたんだい?アイリス」


「スノーは、聖獣らしいです。あと私は、スノーを犬扱いしちゃったけど、カイル兄様は、私の話を聞いて、聖獣だとわかってくれたから安心したみたいです」


「まあ、魔力すごいから子犬ではないとは、思っていたよ。話し聞くまでは、聖獣様だとは思わなかったけどね……本来はその大きさじゃないと思うよ」


(スノー、聖獣なのに子犬と間違えてごめんね。スノーは、本当はもっと大きいの?)


(いいよ。アイリスだから許す。そうだよ。アイリスくらいなら楽に背中に乗せられちゃうよ。あとカイルに聖獣様じゃなくて、スノーって呼ぶように言って欲しい。折角、アイリスにつけてもらったからね)


(ありがとう。今度乗せてね。カイル兄様に伝えるね)


(わかった)


「聖獣様と念話で話しているのかな?」


「そうだよ。あとスノーが、聖獣様じゃなくって、スノーって呼んで欲しいそうです」


「……」


 スノーからの言われたことを伝えたらカイル兄様が黙ってしまった。

 聖獣のスノーを名前で呼んでもいいのか考えているんだろうな。


「本当にいいの?」


(いいよ)


「いいって言ってます」


「そうか。スノーこれからよろしくね」


 スノーが尻尾を振って、カイル兄様にすり寄っていった。


「スノーって、名前をアイリスがつけたってことは、従魔契約結ばれちゃっているんじゃないかな?アイリスは、従魔スキル持っていたよね。しかも神獣、聖獣、精霊とできるやつ」


(そうだよ。僕は、アイリスと従魔契約するために会いに来たんだからね)


「カイル兄様。スノーは、私と従魔契約するためにここに来たらしいく、名前つけたので私の従魔になりました」


「やっぱりね。まさか従魔になる為に聖獣フェンリルの方から来るとは、思ってもみなかったけど、スノーが聖獣フェンリルだとわかった時点で、そうじゃないかと思っていたよ」


 こうして、聖獣フェンリルのスノーが、新たな家族に加わった。

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