3 要塞都市クラリスポート4
夕食には、ジャガイモの塩ゆでがもってこられた。
給仕にきた老婆は
「すまないね。おかげで今夜はひさしぶりに、みんなお腹いっぱい食べられる。塩ゆでしか出来ないけど、今の我々にはビフテキに見えるよ。それに薬はほんとに助かる、一か月ほど前から切れて………何人も亡くなったんだよ………」
言葉をつまらせる老婆に、
「私たちみたいな者でも少しは役にたったみたいね」
エリカが言うと、給仕の老婆は下を向いて去っていった。
翌朝も塩味だけのポテトのボイルだった。
エリカが味気ない朝ごはんを食べていると、突然、艦内に警報が鳴り響いた。
次に爆発音とともに、ステーション全体が振動する。
「なんなの! 」
「どうやら敵襲のようだな」
カイトは落ち着いているが、エリカは焦っている
「どうしよう、出ないと。ここも危ないかも」
「そうだな、ここはまずいな、ちょっとまってろ」
しばらくすると、カイトが監房を出てエリカの前にいる
「カイト! どうして」
「こんな監房、簡単に抜け出せるよ」
エリカは驚いて。
「どうしてそんなことが出きるの。ひょっとしてカイト、あなたが失踪していた五年間って……まさか……それだけは考えたくなかったのに……」
エリカは頭を抱えて下を向いた、カイトは一瞬エリカに気づかれたかと思い、恐る恐る
「エリねぇ……まさかって……」
エリカは涙目でカイトを凝視して
「コソ泥していたなんて! 」
カイトはエリカの思わぬ推察に
「コソ泥! おれはそんなことしてない! 」
「そりゃあ、本当のことは言えないでしょ。でもね、ひもじいからって、人の物を盗んでは絶対だめだからね、これからは私がカイトを真人間に更正してあげるから」
「だから、してないって! 」カイトが言い訳した時、さらに破壊音と振動が響いた。
「とにかく、エリねぇ急ごう」
カイトは独房を開けると、エリカは急いで奥の箱の中にあるガンベルトを腰にまいて銃を抜いた。カイトもハンドレールガンをもつと。
「エリねぇいくぞ」
二人は慎重に様子を見ながら通路にでた。
その間も敵襲を告げる警報のアナウンスが流れ、騒然として兵隊の走る音が聞こえ、隠れ歩いていたが、前を数人の兵隊が駆け抜ける。
慌てて、エリカは身構えたが、兵隊はかまわず過ぎ去った。
「どうやら、私たちどころではないようね」
「ああ。とにかく、早くスカーレットルナに戻らないと」
その時、近くで大きな破壊音と振動がした。それは、住民の居住区の方だった。
「何! 今の音」
「爆発ではないな」
エリカとカイトは、腰をかがめて慎重に進んだ。
奥の方から住民の叫ぶ声がする。
急いで通路を進み、壁を曲がったとろで、少し広い場所にでた。そこには逃げ惑う住民の向こうに、体長5mほどの六本足の平らな流線型のロボット兵器が向かっている。
カイトは身をかがめて、ハンドレールガンの安全装置をはずし
「無人の自律型ロボット、コンバットGだ。住民に向かっている。守備隊はいないし、少しでも住民から引き離そう……って………エリねえ、どうした」
エリカは、そのロボット兵器を見て蒼白の表情で固まっている。
「ごっ……ゴキ虫! 」
うす平らな黒褐色に輝く流線型の胴体に六本の脚、カサコソと蠢動する脚は、まさにゴキ虫だ。
「エリねえ、そんなこと言ってる場合じゃないって………わかった、俺がなんとかする。エリねぇは、住民たちを避難させてくれ」
「わ……わかった。ごめん、あれだけは………」
すると、カイトはハンドレールガンを数発発射してロボットの注意をひきつけ、躊躇なく飛び出した。ゴキ虫型ロボット兵器(エリカ呼称)は、すぐにカイトを標的にして追っていくが、カイトは物陰に隠れながらも、動きを止めず次の障害物に移動する。
それは、とても素人の動きではない。カイトがなぜ、そんな動きができるのか。
エリカは一瞬呆然としたが、すぐに我に返り、住民に向かい。
「みんな! こっち」
住民を自分達がきた方向に誘導した。子供や、老人もいるのでなかなか動きが鈍いが、なんとか通路の奥に非難させると、エリカはカイトを追って戻っていく。
そこに、息をきらしたカイトがもどってきた。
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