第44話:シロの見解
「ジェル。アレク兄ちゃんはどうやら風邪のようだ。日本では昔から風邪にはネギが効くって言われてるんだよ」
「ネギですか……そういえばそんな話を聞いたことがあるような」
「うん、民間療法だけどよく効くんだよ~! それっ!」
シロはそう言ってアレクの布団を引っぺがし、パジャマ姿のアレクのお尻をバシンと思いっきり叩きました。
「さぁさぁ、アレク兄ちゃん! ネギをブッ刺すからお尻を出して!」
「ひゃぁっ……し、シロぉ⁉」
急にお尻を叩かれたアレクは、目をまん丸に見開いて情けない声を上げました。
「大丈夫だよ! お尻にブスっとネギを刺せばきっとアレク兄ちゃんの風邪も治って元気になるから!」
「なるほど、肛門の粘膜から薬効成分を浸透させるんですか……!」
まさかそのような民間療法があるとは知りませんでした。東洋医学とは奥深いものですね。
「あぁ……や、やだぁ! シロ……俺……実はその……」
「おやぁ~? どうしたのかなぁ? 何も恥ずかしがることなんてないよ? だってアレク兄ちゃんは病人なんだから」
「いや、そういう問題じゃなくて……」
「しょうがないなぁ。ジェル、パンツ脱がすの手伝って!」
「はい!」
「――待ってくれ! 俺もう元気だから! もう治ってるからぁぁぁぁー!!!!!!」
アレクはそう叫んでガバッと起き上がって、ベッドの上でぴょんぴょんジャンプしながら手を振り回し、元気であることを必死でアピールしました。
「ちょっとどういうことですか、さっきまであんなに具合が悪そうだったのに!」
ワタクシがあまりの変わりように目を見張ると、シロはネギをプラプラと手でもて遊びながら言いました。
「なんてことないよ。アレク兄ちゃんが仮病を使ってただけだから」
「お、おいシロ……!」
アレクはうろたえています。その表情でどちらが真実を語っているのかは
「アレク……ワタクシを騙していたのですか?」
「いや、最初はホントに風邪ひいてたんだよ。熱もあったしさ……」
アレクは問いに対し、ばつが悪そうな顔で弁解し始めました。
「なんか寝てたらあっさり治ってたんだけど……ほら……アイスクリームもらえたりハンバーグ作ってもらえるし、ジェルが優しくしてくれて何でも言うこと聞いてくれるから、もうちょっとこのままがいいなぁ~……なんてね?」
だからごめん……と彼は甘えるような目でこちらを見ながら小さな声で謝ってきました。
普段ならしょうがないですね、と許してしまうのですが、さすがに今回ばかりはそうはいきません。
「ワタクシがどれだけ心配したと思っているんですか! このお馬鹿さん!」
「す、すまん……」
さて、どう落とし前をつけたものか。――そうだ。同じことをしてもらいましょう。
「罰としてワタクシがアレクにしたことを全部してくれるまで、許しません!」
「へ?」
「アレクは今すぐアイスクリームを買いに行って、ワタクシの代わりに晩御飯を作って、そうですねぇ……スワロ○スキーの限定品のブローチを百貨店から取り寄せてワタクシにプレゼントしなさい!」
「――えぇっ⁉」
ワタクシの提案にアレクはすっとんきょうな声をあげ、目を丸くしました。
「自業自得だね、アレク兄ちゃん」
シロがアレクの表情を見て、にやにや笑っています。
「そんなぁ~……」
「――あ、もちろんアイスクリームはハーゲン○ッツでお願いしますよ?」
「アレク兄ちゃん、僕もアイス欲しい! ジェルと同じの!」
「え、シロにまで……」
アレクは、観念してがっくりとうなだれました。
さんざん心配をかけたんだし、この程度で許してもらえるなら安いものだと思いますけどねぇ。
しぶしぶアイスクリームを買いに行くアレクを、ワタクシとシロは笑顔で見送ったのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます