HAPPY/CHAOS/FAIRY/TALE
そこら辺のチビ
#0 自堕落吸血鬼はそれでも世界滅亡の夢を見る
あぁ、なんてくだらない世界だ。こんな世界勝手に滅んでしまえばいい。
この世界に命を受けてから三千年もの月日は経っていると思う。
いや、五千年だっけ? ……あー、いいや、三千年から五千年の間くらいは生きているだろう。多分。
流石に長生きし過ぎてるから細かい年数とかはあやふやになってる部分に関しては許して欲しい。とりあえずむっちゃ長生きしてきたということだ。
それに加えて、産まれた頃から吾輩は不死身だった。
どのような攻撃を受けたところで、何事もなかったかのようにあっという間に再生してしまう。
それだけではない。人知を超えた怪力、知識、俊敏さや煌びやかさを兼ね備えている上に、体内に駆け巡る血を媒介にして操ることで、武器として活用することも出来る。
通称、血塗れ混沌武闘術【プルガトリオ】。いやぁ、我ながら良い名だ。
このプルガトリオで、今まで立ち向かってきた命知らずの猛者共を全て追い返してやった。
本当にどいつもこいつもぬる過ぎる。
最後の奴なんてただの自称世界最強格闘家とかいいつつただのヒョロガリ虚弱体質野郎だった。
中には度胸試しだとか罰ゲームだとか恋人にいいところ見せたいとか言っている輩もいた。
どいつこいつも吾輩のことなめすぎだろ。せめてもう少し鍛えてから来て欲しい。
「……つまらぬ」
……吾輩は孤独だ。
寂しさを少しでも埋めるために、人間共のくだらない余興に付き合ってはいるものの、結局の所は孤独なのには変わらない。
吾輩の力に恐れをなした王と服従の契りを交わし、衣食住と富と名誉を保証する代わりに外敵を討ち滅ぼす生活を一時期送っていたこともあったが、楽しかったのは最初だけだった。
最初はあれだけ吾輩に媚びを売っていた王も、結局は吾輩を利用してのし上がりたかっただけだ。
吾輩の力を利用するだけ利用して、利用し尽くしたら用済みで裏切られそうになったが、ちゃんと返り討ちにしたのは言うまでもない。
結局の所、吾輩は一人だった。
千年以上生きてきたところで、この虚しさにはいつまでも勝てない。
「……つまらぬ」
何をすれば、この飢えを満たすことが出来るのだろうか。
答えのない問いを、夜空に投げかけてみる。
当たり前だが、答えが返ってくることはなかった。
あぁ、本当につまらない。つまらないにも程がある。
この世界は、吾輩が生きるに値しない。
せめて、吾輩の血肉を踊らせるような何かが起きて欲しいものだ。
例えば、この星以外の生命体が突如攻め込んできたり、未知の病原体が蔓延したり急激な気候変動が発生して、吾輩以外の生物が突如死に絶えたり。
「……そんなこと、起こる訳もないか」
何万回かは思ったくだらない妄想に我ながら馬鹿らしいと思いつつ、踵を返して部屋へと戻り、眠りにつく。
眠たかったわけではない。起きていた所で楽しいことなんて一つもないからだ。
次目が覚めた時は、何か面白いことが起こっていれば嬉しいものだ。
淡い期待を胸にしまい、意識が段々と落ちていく。
そして次に目が覚めた時、吾輩は目を疑った。
この地に巨大な何かが墜落し、生命体が全て死に絶え、一面が氷河に飲み込まれていたのだから。
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