第2話 使徒の使命

目が覚めると俺はベッドの上にいた。

……あれ?昨日は椅子の上で寝たはず。

疑問に思っていると隣で寝ていたルセが起きた。


「……おはよう、タナト」


そう言いながらルセは上半身を起こし伸びをする。

可愛い。天使のようだ。いや、神の子だから天使か。

ともかく、ルセを見ていたら考えていたことがどうでも良くなった。


「おはよう」

「……ごめん、嫌だった?」


ルセが俺をベッドまで運んだのか。重くなかったのかな?


「嫌じゃないよ。心配してくれたのは嬉しいよ」

「……そう、良かった」


可愛いすぎる。まるで天使だ。いや、俺達は神の子で神の使徒なのだから天使といえば天使なのか?


そういえば今日はこの世界について知るとか何とか。魔法があるかは気になるな。

そういえば、昨日からご飯食べてないのにお腹が空いてないな。体のつくりが人とは違うのかな?

すると、1階で扉が開く音がした。お母さんかな?2人で1階に行くとやはりお母さんがいた。


「おはよう2人とも。昨日はゆっくり休めましたか?」

「はい、ちゃんと寝れましたが、……何故ベッドが1つしかないのですか?」

「2人で寝るには充分な大きさですよ。それとも、ルセと一緒に寝るのが嫌ですか?」

「いえ、そういう訳では……」

「なら大丈夫ですね。何回か一緒に寝れば緊張も無くなりますよ」


見透かされてる!自分の子供の考えてることはお見通しってわけか。


「では今日はこの世界について話ます。長くなりますから2人は椅子に座って下さい」


1階には椅子が2つしか無いから1つ足りない。

流石にお母さんをずっと立たせる訳には行かないから2階から持ってくるか。


「椅子を持ってきます」

「あら、ありがとう」


椅子を持ってきて、ルセと並んでお母さんと向かい合う。


「じゃあまず2人はこの世界について気になることはありますか?」


気になること…ある。


「魔法ってありますか?」

「ありますよ。…ただ適性が無ければ初級しか使えませんが」

「適性?」

「はい。適性は4種類あります。火、風、水、

そして守護です。タナトには守護の適性が、ルセには残念ですが適性はありません。ちなみに守護は味方を護るための魔法なので直接攻撃することには使えません」


後に聞いた話だと適性がある人は20人に1人程らしい。


「……適性がないと不利?」

「いいえルセ、そんなことはありませんよ。適性を持たない人は武技と呼ばれるものが使えますので、適性がないと不利とは一概には言えません」


適性があれば魔法が、適性が無ければ武技が使えるのか。


「他には……なさそうですね。じゃあまずは、この世界の歴史から話しましょうか」


お母さんの話を要約すると、この世界にある大国は全部で7個。そのうちの4つが人間の国らしい。

エルフや獣人は人間とは別の大陸で暮らしているらしい。

人間の国は小国がいくつかあり、大国が4つある。王国、帝国、神聖国、共和国が人間の大国そして残り3つは獣人の獣国、エルフの森緑国、そして魔人が暮らす魔帝国という国。魔人は人間の常識だと、魔物が人間のように進化したものとされているが、実際は逆で人間がより多くの魔力を操る為に進化したものらしい。

大陸は4つに分かれている。西の大陸に魔帝国が、東の大陸の中央辺りに人間の国があり、さらにその東は荒野と森が広がる。さらに北の大陸には獣人が、南の大陸にはエルフがいる。



そしてこれが今日の本題。

およそ200年前、突如東の大陸にある森から後に邪王と名付けられた存在が現れた。当時大陸の東一面に広がっていた森は邪王が暴れたことで、南半分が荒野となった。


人々は勇敢に立ち向かったが、傷一つ与えることが出来なかったため、魔法を使い戦う魔法士と呼ばれる者達から、大量の魔力を集め何とか荒野に封印した。

そしてこれまで人間の国々から魔法士を送り、封印に魔力を流し続けた。しかし今から数年後に封印は破られるそう。俺達神の使徒がやるべきことは

1つ目、人界に降りて人に異世界から勇者達を召喚させる。


2つ目、勇者達の育成のサポートをする。


3つ目、お母さんや俺達は世界の命運に直接関わることができない(この場合邪王と戦ってはいけない)ので、勇者達と共に戦える人材を確保もしくは育成する。


4つ目、これは今後を見据えてのことだが、前世の知識を活かし、この世界に無い危険な兵器を作ろうとする転生者を見つけ次第説得、もしくは武力行使をしてでも止めること。


そのためにお母さんは、俺とルセを含め8人の使徒(お母さんが言うには愛しい我が子)を生み出したらしいが、基本は自由に暮らして欲しいらしい。


「さて、こんなところですが……何か質問はありますか?」

「…他の6人はもう人界に?」

「そうですね。人界に行けば必ず会うでしょう。ああ、後はここから私も何かあれば指示を出しますが、基本的には貴方達のまとめ役であるリーベが、招集をかけ、指示を出すでしょう。他には質問はありませんか?では今日はこれで終わりです。ゆっくり休んで下さいね。明日からは貴方達の師匠となる方の元で戦い方等を学んで貰いますから」


そう言ってお母さんは帰っていった。



「……他の兄妹、どんな人かな」

「話しやすい人達だといいな」

「……前世で戦いの経験は?」

「無いよ。平和な国だったから。ルセは?」

「……私も無い」

「そっかー、お母さんの期待に応えられるように頑張らないとな。」

「……うん」


そろそろ眠くなってきたな。天界は昼も夜も無く、天気も変わらないから時間が分からない。だから、眠くなったら寝ることにした。


「そろそろ寝るか」

「……うん」


2人でベッドに入る。……もう抵抗しても無駄だと分かったから、諦めた。心臓に悪いが、慣れるのを待つしか無い。

この日は中々寝れなかった。

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