BFC3感想たち
赤上アオコ
Aグループ
10月末からずっとバタバタしていたが、ようやく落ち着いて読めるようになってきた。
ということで今更ながら感想書いていきます。
・元々大衆文学ばかり読んでいた人間なので、あっっっさい読みになると思います。
・ネット中毒者としてTwitterは徘徊してたので、一部先に感想を読んでしまった作品もあるのですが、それはそれ込みの感想としてご容赦ください。
「幸せな郵便局」 竹田信弥
「幸せ」と銘打っているが全体的に不穏な作品。森は犬をこっそり輸送しようとしてたのか?それとも捨てようとしていたのか。山田は本当に与田に親を殺されたのだろうか。高木は永遠に伝票を書き損じ続けるのだろうか。列はどこまで伸びるのか。一見星野しか幸せになっていないが、やはり考えを変えればみんな幸せなのかもしれない。与田は好きな犬を引き取るかもしれないし、森は助かるはずだ。山田は注目を浴びることができた。高木は自己否定だけでなく、自分の経験が糧になることを思い出した。でも何も解決せず幕を閉じるあたり、どこかやっぱり不幸で不思議な話だと思う。
「成長する起案」 鞍馬アリス
成長するってそういうことか!というのが最初、めちゃくちゃディスアドバンテージすぎる特技?なのに周囲から畏怖の念を抱かれている所に笑ってしまった。現実では大量のハンコが押された書類って見るとうんざりするけれど、これからは様々な部署を旅してきたと考えられてとても素敵な話だなと思った。
もし中西さんが重要なポジションに就いて、めちゃくちゃ世間に影響を与える起案を作ったらどうなるのだろうか。内容が数億円単位の起案だったら?それともボールペンの時と変わず、世間は何も荒波立てず起案は育っていくのだろうか。全ては中西さんの前では等しく起案なのだろうか。
一方で中西さんに(というか中西さんのポジションに)そんな重要な起案は回ってこないのかもしれない。だから騒ぎにならないのかも。そんな格差的なところも連想されてしまってちょっと複雑な気持ちになった。
「夏の甲子園での永い一幕」 夜久野深作
甲子園かー野球あんま知らないんだよな~と思って読んでいたが、2回読んだ後で戦争の暗喩だと気が付いた。「色の少ない千羽鶴」や「敗戦」、「敵チームの方が多くホームへ帰った」「試合で負傷した後」など、戦争を連想させるワードが前半に連なる。
確かに夏休みって楽しく悲しい。高校球児の熱い戦いがテレビを沸き上げ、終戦を振り返り黙とうを捧げる時期でもある。神宮外苑から学徒出陣したんだっけ。あの土っぽい熱い香りを、昔の人も嗅いだのだろうか、そうして思うと楽しいだけで終わらないのが日本の夏休みである。
そんな生者の黙とうを何年も見続けた主人公たちは、甲子園が行われない世界に置き去りにされてしまった。人類が滅亡したのか、亡者たちが別次元に行ってしまったのかはわからないが、自力で試合をしようとする様は読んでいて切ないような、希望を感じられる最後だった。
「花」宮月中
個人的にはAチームの中で一番好きかも。事件?いじめ?でクラスメイトが亡くなり、弔いか贖罪か机に花がおかれ始めた場面から物語が始まる。面白いのは主人公が花を置く「ゲーム」として認識していることだ。劇中では「出来事」に対して一切責任なんてないような、むしろ完全に第三者として振舞っているが、ラストで荷が下りたような独白がある。わかるよ、「弔い」ってやらないままだとずっと心に引っかかるんだよね。一方で気になったのは、主人公が机の主をあまり思い出せなくなっており、罪悪感がゆるゆると解けている描写にも読めるが、「弔い」が目的となってしまって、誰を弔ったのか忘れてしまったような不安定さを覚えた。主人公は「ゲーム」として弔いを、弔う対象を消費したとも読める。でも実際、正面から向き合おうとすると辛くて、弔う対象がぼやける事って結構あるのではないか。それが少女の淡々とした独白として語られることで、余計生々しさを感じた。クラスメイトもそうなのだろうか。そういう残酷でほわっとした読後感が好きだと思った。
「連絡帳」星野いのり
まさに連絡帳。小学校低学年の時の、世界への純粋な親しみや驚きが瑞々しく描かれてる。
好きなのは「クレヨンの水色みじか夏休み」。絵日記にプールか海、夏の青い空を描いたのかもしれない。わかる、季節によってクレヨンの残りって変わるよね。すごく好き。こんな感じで1年間を通して素朴な感性が綴られていく。先生の描写が多いのが気になった。単純に大好きな先生だからよく見てるのか。先生、疲れ果てて担任変わった?ようにも読めるけどそんな風には読みたくない。綺麗な1年間でいてほしい願望がある。
「矢」 金子玲介
BFCでギャグが読めるとは。ギャグでいいんだよねこれ。大家君のクラスメイト優しいな。なんで不登校になったんだろう。こんなクラスメイトがいるなら大家君も心配ないんじゃないか。そういう理由じゃないんだろうけど。学生のこういう日常的な会話劇好きなんですよね。何気ないやり取りって本当に気の置けない人同士じゃないとできないじゃないですか、それをサラッと書けるのがすごい。そしてオチが完璧。うん、そりゃ知らないわ。
BFC3感想たち 赤上アオコ @AkagamiAoko
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。BFC3感想たちの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます