第3話
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真弓は 小さな果樹園で枇杷を収穫している。
毎年春の連休の頃に 摘果して袋掛けをして置き、六月中頃迄待つと、甘くてジユーシイな実を付ける。未だ完熟前に出荷するお店の物より うんと甘くて香り高い枇杷が生ってくれる。大きく色味の良い実を選んで、従姉妹や、親しい友人や、果樹園のお隣さんに届けるのも例年どうり。果樹園の隣の伯母さんは八十歳代で、深い観察眼と思慮深い考えを持った人で、“そんな見方が有るんだ”と感心させられる事が多い人だ。今年も枇杷を届けて 少しお話しをした。「和子さんが いきなり玄関で叫んだのは どうしてなのか不思議で仕方無いのだけど 伯母ちゃんはどう思う?」と、かいつまんで説明すると、「たぶんずっと羨ましかったのょ 、 真弓ちゃんが恵まれ過ぎているから。」「若い時、同じように洋裁の仕事をしていたし、ライバルだと思っていたんだと思うょ」 確かに独身時代、和子さんは近くの街の洋服屋で お針子さんをしていたと聞いている。私はデザイナーに成りたくて 東京の洋裁専門学校を出て 地元に帰り、地元のデパートでデザイナーとして働き、結婚後は現在迄、洋裁教室を続けている。教えているのに 既製服を着ていたら恥ずかしいので、自分の着る服はTシャツ、セーター類以外は殆んど 自分で縫った物を着ている。和子さんは結婚後洋裁から離れ、自分や二人の娘さんの服も 御自分で縫った服を着ているのを見たことが無い。と、私の母や彼女を知る複数の人達から聞いていたので、ライバル視されているなんて考えた事もなかった。 他人から見たら若い時に同じ洋裁の仕事をしていたら、ライバルだと思われているのか‥‥‥「でも全くお付き合いが無いし、遠目で黙礼するくらいなのに?」
「和子さんは今入院しているょ、この前、自転車ごと、ご主人の車にぶつかって 救急車で運ばれたそうょ。」 「クモ膜下らしくてね、半身不随らしい。」「???エエッ ほんとに!!」
「人間なんてそんな者ょ 真弓ちゃんを 嘲笑って意地悪するから、 自分はもっと不随になったわねぇ。」 伯母ちゃんは思慮深い瞳で、気の毒そうに言った。
身に覚えのない嫉妬 キャロットケーキ @carrotcake
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