セピア色の魔法

ある日世界はセピア色になった

魔女が現れた夜のことだった

世界から色を消してあげよう

真っ黒な魔女がそう囁いた途端に

私の目の前から色が消えた


朝の白い光も

夜の闇も

どこかもの寂しく懐かしい感慨の中


喜びの色も

悲しみの色も

どこかに忘れてきて

何もかもセピア色に変わった


セピア色の魔女には

不気味ささえも消えてしまった


凪のように何もない世界はどこまでも穏やかで

私の心は少しも揺れない


希望の白い光も

絶望の暗闇も

セピア色は奪っていって

世界はなんて退屈なのだろう


こんな世界はいらない

そう呟いたとき

世界は色を取り戻した


太陽の日差しを浴びながら

雲ひとつない青空に浮かぶ白い月を見上げた








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