人間
空っぽの壺
男
男は孤独だった。今年で30になるにも関わらず、女性経験はゼロに等しく毎日仕事から帰ってきて酒を飲む。そして寝る。そんな日々の繰り返し。幼いころにもっていた希望、夢は大人になるにつれ失い、毎日の酒が楽しみだった。
だが男はそんな暮らしに満足していた。そんな日常に満足していたのだ。
自分に残った幸せに満足していたのだ。
いつものように男は会社に向かうために電車に乗った。満員電車、いつもの見慣れた光景、男は電車に揺られながら「今日はどんな酒を飲もうか」そんなことを考えていた。
電車が駅に到着し、男は降りようとしたところ、誰かに腕をつかまれた。
「この人痴漢です。」
電車の中に響く女性の金切り声。男は何がなんだかわからなかった。
周りの突き刺すような視線から男は自分のことを言っていることに気づく。
警察に全てを話したが結果は変わらなかった。男は痴漢したと決定づけられたのだ。
男は全てを失った。残ったもの全部。
男は憎んだ。全てを憎んだ。自分以外の全てを。
男は包丁をバックに入れ、今までとなにも変わらない様で電車に乗り込んだ。
男は包丁を取り出した。
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