ワールド・エンド・ラブ・ミュージック
異世界アナーキー
第1話 ワンチャン
おいおいおいおい、こんなことあんのかよっ!?
俺はただナンパしてただけだぜ!?
それがなんだ?こいつは?
この、目の前の化物は!!
口は耳まで裂けて、まるで肉食動物。腕はいきなり爆発したみたいになって、肥大して、ウネウネと大蛇のようにうごめいている。
そして、その両方が、俺を狙っている。
一体何でこんなことになったんだ?
恋愛っていうのは、ゲームだ。
いや、恋愛だけじゃない。
本当は社会的なものすべてがゲームだ。
そして、そのすべてがクソゲーだ。
けど、恋愛だけは、そのなかでも特別にマシなクソゲーだ。
だから、今日も今日とて、俺はプレイする。
スタイルはナンパだ。
「こんにちはー」
気になった娘に街中で声を掛ける。
当然無視だ。
十人に九人は無視。
けど、これで傷ついているヒマなんてない。というか、それは無駄なことだ。
向こうはこちらを虫みたいに思っているのだ。だから、ほら、今だって羽虫を振り払うように腕を振った。
でも、こんなことにイチイチ傷ついていたり、腹を立てていたらキリがない。
それでいい。
こちらだって、人間扱いなんてしてないのだから。
人間扱いしてくれない相手に、イチイチ人間扱いしてやる義理なんてない。
先攻後攻はあるだろって?つまり、俺が相手を人間扱いしてないから、向こうも人間扱いしないでいいのだって?
ま、一理あるかもな。
それでいいと思うよ。
けど、ナンパしてくる奴は人間扱いしないでいいって最初から決めてるのは、そちらも同じで、どちらが先攻かはわからんなって気もするな。
一体どこであなたは出会うのよ?
狭苦しい学校で?職場で?友達の紹介?世に与えられたルートに従順に世の中を生きていくのかい?
まぁ、それでもいいだろ。
空から女の子が降ってくる。王子様がいつか私を見つけてくれる。
俺から言わせれば、それと大差ない考えみたいにも映るけどな。
せいぜい神に祈りなさい。
ま、神はいないけどな。
さて、話しかけて、話してくれる残り一人だって、適当に話して、ハイ、サヨナラだ。
でも、それでいい。
そのくらいがちょうどいい。
その中の何人かは連絡先を教えてくれる。
いきなりおいしい思いができるなんて思っていないですよ。
というか、そういう相手には、全力で人間扱いしたいと思ってしまうものだ。だから、ある程度警戒してくれ。そっちの方が、なんかいい。
少しずつ距離を縮めていきたい。その道行きを楽しみたい。まるで中学のときのたどたどしいフォークダンスみたいな感覚。向こうの足が出て、ひっこみ、こちらもそれに合わせるように。いや、それよりももっと、外へと踏み出すような感覚。
クソゲーの中で、唯一クソゲーから抜け出させてくれるように感じさせてくれる。それが恋愛。この狭っ苦しい上に天井が落ちてくるような社会で、唯一そんな現実を忘れさせてくる。
だから、求めてしまう。
ま、こんなものを求めてナンパしてる奴は少ないだろうな。だから、ナンパ野郎を虫のように追い払うあんた方は、なるほど、たしかに正解だろうなって気もするよ。
大抵はワンチャン狙いだもんな。
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