何が言いたい。

エリー.ファー

何が言いたい。

 殺されたくないという気持ちは分かる。

 しかし、運命は確定した。

 今から行われるのは蹂躙である。

 ただ、死が押し付けられるのだ。

 それを避けてはならない。

 いや。

 避けられるものなら避けてみるがいい。

 できるものなら。




 死を司る神がここにいる。

 それを埋めるための勇気がそこにいる。

 誰もが正義の執行を待ち望んでいる。

 同じだ。

 共に歩むべき道を見つけるための殺し合いだ。

 まぁ。

 すべては嘘なわけだが。




 人類は地球の敵となった。

 地球を守るために人類を根絶やしにしなければならない。

 地球は人類の幸福のための犠牲にされるところだった。

 ここから先の物語は償いである。

 フィナーレを迎えるのである。




 英雄と名の付く者たちには、必ずと言っていいほど歪んだ正義が存在する。

 一つの視点から見る正義は、非常に形がよく、そしてお行儀が良い。これだけでは正確な評価をすることはできないはずだ。だが、その思考を無意味に信じている。

 踏み外したのだ。

 もう二度と正道に復帰することはできない。

 黒と白の戦いだと思っているのは英雄だけだ。ここには、灰色も存在する。

 学ぶ気にもならないか。

 誰にも教えてもらえなかったのか。

 それが、すべてか。

 どうであったとしても構わないが、手加減はできない。

 分かっているな。

 これは仕組まれた戦いだ。

 しかし。

 それでも始めねばならない血で血を洗う戦いだ。




 すべてが薄汚れている。

 悪も正義もあってないようなものだ。

 それを知っているから、ここまで来ることができたのだろう。

 愛しているとだけ伝えておこう。




 ボスについての研究は進んでいますが、まだ多くの点において不明となっています。ボスの発言内容に共通する点は哲学的であることと、こちら側、この場合は英雄側ですが、少しばかり同情しているように感じられるところです。これは、元々ボスが人間であった可能性を示唆するものであり、別種の生物ではないとの説を有力なものとしています。認知を歪ませる魔法などの使用がワールド全体に確認されていない以上、変身は物理的なものであると考えられますが、これは検証段階であり個人的には想像の域を出るものではないと考えます。

 ボスの死体から立ち上る煙は、特殊な成分を含んでいることが分かっています。これはチツヴェニ研究所からの情報ですが、この成分からは魔法素子が検出されていないため、ボス側が人間の知らない未知の技術を使用していると考えられるそうです。つまり、私たち人間と同じような魔法を使用しているからといって、それは効果が同じなだけで全くの別種と考えるのが妥当なのではないか、ということです。この点についても、研究は非常に早いペースで進んでいますが、結論を出せるフェーズにまでは達していません。

 報告は以上となります。お疲れ様でした。




「どうする。もう、帰らないか」

「いえ、今日はもう少し、ボスの研究を進めようかと思います」

「随分、根を詰めているじゃないか。大丈夫か」

「まぁ、いつものことですから」

「いつものことだから心配しているんだ。今日くらい帰りなさい」

「いえ、あと少しだけ」

「いいから帰りなさい」

「でも」

「帰るんだ」

「はい、すみませんでした。失礼します」

「あぁ、さようなら」

「あの」

「なんだい」

「ボスは、本当に人間なんでしょうか」

「分からないな」

「本当に人間だったとして、何だというのでしょうか」

「どういう意味だ」

「失礼します」

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