UNUNIQUE
@roi-ghost
′ 編
1
それは2005年の十月頃だったと思う。
夏の残暑が抜けずまだ暖かい日が続く中、午後から降り出した雨のおかげか、少しすごしやすい気温になったと記憶している。
僕は友人である遠藤照久から連絡を受け、最寄駅の近くにあるパン屋のイートインコーナーで来客を待っていた。
約束していた時刻の18時を過ぎており、日没の早いこの時期ではもうすでに外は暗い。
「ちょっと遅れるのかな?」
僕と共に来客を待つ友人、四月まどかは店内に設置されている時計を見ながらそう言った。彼女は小学校の頃こちらに越してきて、それからの付き合いなのでもうかれこれ十年来の付き合いとなる。
僕は「そのようだね」と軽く相槌をして外に目をやる。雨に打たれたガラスが細波を立て、街頭の明かりを揺らしていた光景が目に入った。
午後一からパラパラと降り始めていた雨だったが、少し本格的になってきた様だ。
普段から天気予報とか見ていなかった僕は、傘も持ってないしどうしようかとなー考えていると、雨から逃げる様に黒い人影が窓を横切った。
その人影は店の入り口から店内に入ると、店内に陳列されているパンなどには目をくれず、体を傾けてイートインコーナーのほうに視線を向けている。
顔は目深にかぶった黒色の合羽のせいで良く判別が出来ない。合羽から滴り落ちる水滴が、外の雨量がそこそこ多いことを物語っていた。
結構な雨量のようだなとその人物を見ていると、その人物と目が合った。……気がした。なにぶん合羽でよく顔が見えないが、確かに相手の顔はこちらを向いている。
合羽の人物は弾かれたようにこちらに歩き出す。途中、レジで客を待っている店員に「ミネストローネひとつ下さい」と軽く言い、ズンズンと僕らがいる席に近づいてきた。
その人物は当然のように僕らのテーブルの前で立ち止まり、「遅くなりました」と小さく会釈をして合羽の頭の部分をまくった。
あらわになったその顔は、女性とも男性ともとれる容姿をしていたが、確実に言えることは今まで見てきたどの人物よりも顔が整っていることだった。
僕が相手を男性か女性かと逡巡しているころ、まどかは「もしかして、森田くん?」と疑問口調で問いかけると、肯定の意味だろう、まどかの顔を見返して軽く頭を下げた。
「なに? まどか、知り合い?」
僕はまどかの顔を見返しすと、彼女は軽く首を振る。
「ううん。直接話したことはないけど、私たちの1コ下の後輩だよ。なんか、すっごい顔の綺麗な子がいるって有名だったけど、はぁ……。確かにすっごく綺麗なお顔をしてるね」
「あぁ、はい。恐縮です」
森田は聴き慣れているのか、特に褒め言葉に対して特に照れなどの反応をすることなく近くにある椅子に座った。
「…………で、何か話があるって、テルからは伺ってるけど」
彼(彼女か?)が椅子に座ったことを確認後、僕は早速用件を聞く。森田は「そこなんですけどね……」と小さく濁した後、店員から渡されたミネストローネを一口飲み、物思いにふけるように右手で自らの額を支えた。
悩みや相談事というのは言葉に表すのは気恥ずかしさも相まって難しい。しかも、僕に舞い込んでくる相談というのは、飛び抜けて異質なものだったりする。
ここで少し僕の話をする。中学に入った頃の僕は都市伝説などのオカルト系に傾倒し、それの趣味が昂じて自作小説などを書き出していた。隣にいるまどかは数少ない読者の一人であり、自称ファン第一号と謎の豪語をしていた上、「何かあったら手伝うから目立つキャラに自分を登場させろ」と普段からのたまっている。
都市伝説などの怪異に詳しいから小説を書くのか、小説を書く中で怪異に詳しくなるのか。自分でも分からなくなった頃と重なり、僕にはそれ系統の相談事が舞い込んでくることとなった。
今回の森田の件も、普段交流の少ない遠藤からの「折入った相談」とのことで、まず普通の事案じゃないのは確かだろう。遠藤もよく知らないのか「詳しい話は本人から」と煙に巻かれたが、それ絡みなのは容易に想像ついた。
しばらくして沈黙していた森田が、意を決した様子で大きく息を吐いた。あたり一帯の空気が変わったことが感じ、僕もまどかも神妙な面持ちで森田の顔を見返す。
彼(彼女か?)はキッと真面目な顔をして僕に聞いた。
「僕って、男と女、どっちに見えますか?」
…………それが分かんねぇから、三人称をどうしようか迷ってるんだが。
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