第4話 恐怖

その日は雨が降っていて、少し憂鬱な気分だった。

授業が終わり、背伸びをする。

帰宅準備をすると教室を後にした。

欠伸を噛み殺しながら、昇降口に向かう。

雨は、強くなっていた。

持っていた折りたたみ傘を用意していたその時、俺は見てしまった。

藍川の想い人である梶谷先輩。

傘を広げたその隣には、ストレートで長い髪、華奢な女子生徒が居て、2人で仲良く相合傘をして互いを気遣いながら見つめ合い、微笑み合いながら帰宅する姿を。

眠気は一気に覚め、空いた口が塞がらなかった。

ふと、藍川の事を思い出した。

目を見開き、怒り狂う姿を想像した。泣きわめき、暴れ出す姿が目に浮かんでしまった。

、、、とても恐ろしかった。


次の日はとても良い天気で、澄み渡った青空と心地よい風。気分良く中庭で昼寝をしていた。

すると1匹の猫が迷い混んで来た。

昼飯の残りの惣菜パンがあった事を思い出し、猫くんに差し出すとスルスルと寄って来て食べ始めた。とても人懐っこい奴だ。

俺はカメラを構える。

猫ってとても魅力的だと思う。全てのパーツが愛らしい。フワフワの毛並みも、長いしっぽも、耳も、肉球も。気分屋な所もクルクル変わる表情も。

食べ終わると毛繕いを始めた。すると、今度は飛んでる虫に気を取られ、遊び始めた。

思わず、微笑んでしまう。

誰かに、似ているような、、、?

そこに、藍川がやってきた。

「あ、猫たろう!」

猫くんは、退散してしまった。

藍川は、出会ったあの日から、ちょこちょこ昼休みに、ココを訪れる。

もしくは、俺が気づかなかっただけで彼女は常にこの辺で、昼休みを過ごしていたのかも知れないが。

いつの間にか、顔を見ればそれなりに会話する仲になっていた。

「逃げちゃった、、、」

「取って食われると思ったんじゃね?(笑)」

「何それ(笑)私、そんなに怖い顔してた?たまに遊んであげるんだけどなぁ」

「イジメてるの間違いじゃね?(笑)」

「えー」

藍川は、口を尖らせ、不満げな表情を見せた。

昨日の光景が頭をよぎった。

つい、藍川に聞いてしまった。

「あんたさ、いつまで続けるの?こんな事」

「こんな事?って、、、」

「コソコソ隠し撮りしたり、そういう事だよ!」

藍川は、少し沈黙した後

「笑った顔も、怒った顔も、どんな表情も焼き付けておきたいの。彼の瞳(レンズ)に私が映るまで」

藍川の瞳は真剣で、揺るぎないものだった。

しばしの沈黙、、、

ゾッとした。

恐るべき、ストーカー魂。


うやむやにしてきた隠し撮りの件は、よく話をして、断りの方向で理解して貰えた。

ただし、もうすぐ先輩の引退試合があり、その日だけはどうしても撮影して欲しいとお願いされ、しぶしぶながら引き受ける事になった。

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