君が魅せてくれた景色
蒼桐 光
第1話 出会い
「ちょっとーーー!!!どぉしてくれんのよーーーーー!!!」
俺は今、一人の女子生徒に胸ぐらを掴まれている…
目の前には池
池の中には彼女のものらしきスマートフォンが沈んでいた
事の起こりは数分前に遡る
俺の名前は大瀬寛也(オオセヒロヤ)
この春で高校2年生になったばかりだ。
その日は天気が良く、青空がとても綺麗で、昼休みに中庭で昼寝を楽しみながらのんびりと過ごしていたところだった。
春の陽射し、青空の美しさ、流れる雲の一瞬一瞬違う表情。
そして、散りかけた桜が風に吹かれ、空を舞って池の水面に着地して浮いている様がとても美しかったので、俺はカメラを構えた。
その矢先に、何かに衝突された、、、
そして、ぶつかった拍子に、彼女の携帯は池へダイブした、、、というわけ。
目の前には、鬼のような形相で俺を睨みつける一人の女子生徒がいた。
意思の強そうなハッキリとした瞳と肩までのセミロングの少しくせっ毛のある髪、、、見た事はある。
携帯のデータが失われた事によるショックで、ひどく取り乱し、奇声に近い叫びを上げていた。
その様子に俺は、ただただ絶句していた。
ふと、彼女は何かに気づくと表情を変えた。
「そのカメラ、望遠よね?」
彼女の名前は藍川 優(アイカワ ユウ)
同じ学年、隣りのクラスだと、後に判明する。
これが、藍川との出会いだった。
彼女の失ってしまったデータは、一年間想い続け、陰ながら撮り続けた憧れの先輩の写真だった。
彼女の俺に対する要望は憧れの先輩の隠し撮りをして欲しいとの事だった。
気が強くて、自由奔放で、オマケにストーカー、、、
それが彼女の第一印象だった。
チャイムが鳴り、返事がうやむやになってしまった。
確かに、カメラに夢中になっていたばかりに周囲への配慮に欠けていた俺にも落ち度はあるが、、、。
乗り気では無い。
大事な写真データを失ってしまった悲しみは理解出来るが、、、。
隠し撮りという行為に抵抗があるのはもちろんの事、俺は被写体に''人物"は、撮りたくない。
なぜなら、人間は偽装するから。
作られた笑顔や表情に俺は魅力を感じない。
自然が好きだ。
飾らないありのままの姿にこそ、美しさがあり、人は心を奪われるのでは無いかと俺は思う。
ので、携帯は弁償するとして、隠し撮りはキッパリと断る事にした。
放課後、藍川の姿を探す。
各教室を覗いて見たが、姿は見えず昇降口を出て、校庭の見える中庭で、藍川を発見した。
彼女は、フェンス越しに真剣な表情で何かを見つめていた。
視線の先には、陸上部の練習する様子があった。
もちろん彼女の憧れの''梶谷先輩''の姿もそこにあり、長身で長い手足、整った顔立ち、引き締まった身体、爽やかな笑顔、男の俺から見ても良い男だった。
藍川が先輩を見つめる眼差しは、熱く真剣だった。まるで獲物を狙うハンターのよう、、、(怖っっ)
その日は、声をかけずに、その場を後にした。
そもそも、俺には人を好きになると言う感情は理解出来ない。
まず、あまり他人に興味が無い。
友達も、いないに等しい(笑)
かといって、コミュニケーションに問題がある訳では無いし、見た目もまあ、普通。
身長も、低くすぎず、高すぎる訳でも無い。
まあ、中の中の中ぐらい?(笑)
中学生の時に告白されて付き合った事はあったが、特に興味は持てず、特に会話も無く、交流もなく、終わってしまった。
1ヶ月くらいかな(笑)
果たして付き合った事になるのか?
そんな俺は、人を好きになる感情を理解出来る訳もなく、藍川の熱い想い(?)に、どこか冷ややかな思いを抱いていた。
ましてやただ見ているだけの恋愛に何の意味があるのだろう?
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