末尾の余白


 やあ、また会ったね。

 君にとってはどれくらいぶりだろう。僕にとっては、冒頭ぶりだね。

 ん? おや、もしかして、本編をまだ読んでない人かな? 先にあとがき読みたいとき、あるよね。ただ残念、ここはあとがきじゃないんだ。ここの後ろだよ、あとがきは。

 このまま読んでもいいけど、意味がわからないと思うよ。


 さて、君、どうだったかな、人を殺した気分は。

 人の忠告を無視して、君の望むものは手に入ったかい?

 え? そんなことより、なんで僕がこんなところにいるのかって? それはね、ギリギリ間に合ったんだよ。いや、目的を達するには間に合わなかったんだけど。

 つまり、最後の瞬間、進化出来たんだ。

 でもほんの僅かな時間だけさ。しかも進化したての能力は弱いし。だから、本編そのものに及ぼせるほどのものでもなかった。

 だから、この余白の部分を利用しているのさ。

 こんなところを使ってまでも、君に言いたいことがあるんだ。

 忘れてはいないだろうね。僕は言ったはずさ。

 ルカを殺した者を、絶対許さないって。


 ……。

 ふふっ。

 あはは。


 びっくりしたかい?

 僕は本気だよ。本気だった。

 でも、君を責めるつもりはないんだ。

 だって君にとっては、これはただの物語なんだから。

 僕だって、物語は完成させるべきだと思っているから。

 欲を言うなら、読んだことで少しでもなにかを感じ取ってくれれば、それだけで十分さ。

 じゃあなんでこんなことをしてるのかって?

 そんなの決まってるじゃないか。

 せっかく手に入れた能力なんだから、ちょっとでも使いたくなるだろ?


 ……。


 え、うん。それだけだけど?

 えっと、じゃあ、僕が読んだこの物語の裏設定、話してみようか。

 えーとね、ハヤテくんとナツキさんって、お互いに好き同士だったんじゃないかな?

 いや、僕も君と同じものしか読んでないんだから、書かれてることしか知らないよ。これはただの僕の予想。むしろ妄想。

 本当のところは知らないよ。そういうふうにも見えるんじゃないかなってこと。

 君はどう思……。

 ああ、そろそろ限界みたいだ。

 できれば君ともっと、感想会をしたかったんだけど。

 残念。


 僕はもうこれで最期だけど、君はもっと、僕の分までたくさんの、物語運命を、読んで、ね。

 それじゃあ、   。

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