第14話 ドラゴンとの遭遇
冒険者ギルドにて、食料をアイテムボックスに詰めようとしているところだ。
「カエデちゃん。お願いね」
受付嬢がそう言う。
俺はまず、野菜や果物をアイテムボックスにどんどん入れていった。
「ふう。こんなもんかな。次は肉と穀物だな」
引き続き、俺はどんどん入れていく。
「これで最後だ」
無事に用意されていた全ての食料を入れ終えた。
アイテムボックスにはまだまだ空き容量がある。
「カエデちゃんのアイテムボックスは大きいとは思っていたけど……。まさか、全部入るなんて……」
受付嬢が目を丸くして驚いている。
「ふふん。すごいじゃろう?」
ユーリが得意げに胸を張る。
お前は何もしていないだろ……。
「え? 全部入れるつもりで用意したんじゃないのか?」
「違うわよ! ……限界まで入れてもらうつもりで、多めに用意したわ。これでも足りなかったみたいだけどね……」
受付嬢は苦笑している。
「なら、もっと入れておこうか?」
「ムリにとは言わないわ。入れ過ぎると、魔力を消費するのでしょう?」
「ああ。確かに、少し魔力を消費しているな。でも、まだまだ問題ないぞ」
「そうなの? カエデちゃんは規格外ね……。それならお言葉に甘えちゃおうかしら……」
受付嬢が遠慮がちに言う。
「よしきた!」
そして、さらに追加で食材を入れていった。
「助かったわ。ありがとう」
「いや、気にしないでくれ。依頼のためだしな」
「それでもよ。報酬は上乗せしておくから、帰ってきたら受け取ってちょうだい」
「ああ。そうさせてもらおう」
「それじゃあ、気をつけて行ってきてね」
「ああ。行ってくる」
俺たちは冒険者ギルドを後にし、出発の準備を整えた。
そして、俺たちは港町へと向かい始めた。
……………………。
町を出て、数日が経過した。
「おお……。港町に向かうには、この谷を超える必要があるのか……」
目の前に広がる光景を見て、思わず声を上げてしまう。
かなりの高さを持つ崖があり、その下は川が流れている。
川幅は広く、流れはかなり急だ。
落ちれば、命はないかもしれない。
「これは迂回するのは大変じゃな」
ユーリも同じことを考えていたようだ。
「そうだな。どうするか……」
「我に任せるがよい」
ユーリは俺の前に立つと、両手を広げて呪文を唱え始めた。
「【空中浮遊】」
すると、俺たちの体が宙に浮かび始める。
「おぉ!?」
俺は驚きの声を上げる。
ユーリの魔法により、俺たち二人は空を飛んで移動していた。
「ほれ、見てみるのじゃ」
ユーリが指差す先に視線を向ける。
谷底だ。
かなり深く、底が見えない。
俺が内心でビビっていた、そのとき。
「ゴアアアアァッ!!!」
突然、大きな雄叫びが鳴り響いた。
同時に、巨大な影が現れる。
俺は上空に視線を向ける。
「あれは……ドラゴンか!?」
俺は目を見開く。
「そのようじゃな……」
ユーリも呆然とつぶやく。
俺たちから離れた上空に、巨大な黒い鱗に覆われた体と翼を持った生物がいた。
「ゴアアッ!! グオオオォッ!!!」
ドラゴンは大きな雄叫びを上げながら、飛び去っていった。
こちらの存在は歯牙にもかけていないようだ。
「なんだったんだ?」
「おそらく、この辺りの魔物の親玉じゃな。普段は山の中にいるはずなのじゃが……」
「そうなのか……」
「うむ。それにしても、あの巨体が浮くとは……。ドラゴンの魔力は規格外じゃの」
「魔力?」
「ああ、カエデは異世界人であったな……。あの巨体が翼のみで浮くはずがあるまい? 人族でいうところの風魔法の亜種を発動させておるのじゃ」
「なるほど。つまり、魔力を使って飛んでいるわけだな」
「そういうことじゃ。まぁ、魔法だけで言えば、我も負けるつもりはないがの」
「へぇー。なら、あの森のゴブリンも自分で討伐できたんじゃないのか?」
「そうもいかぬ。我が全力で魔法を放てば、森が焼け野原となってしまうからの」
「ふうん。なら、肉弾戦は?」
「我はカエデやドラゴンと違って、身体は脆弱じゃからの。肉弾戦はムリじゃな」
「そっか」
ユーリが全力を出せば強力な魔法を使えるが、手加減は苦手なようだ。
魔物との戦いは、今後も俺が中心に行っていかないとな。
「しかし、ドラゴンがなぜこんなところにおったのじゃろうか……」
「ユーリがわからないのなら、俺がわかるはずもない。とりあえず、港町に向かおう」
「そうじゃな」
こうして、俺たちは谷を飛び超えた。
さすがにずっと飛べるほどの魔力はユーリにないようで、その後は引き続き歩いて進んでいった。
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