バイクを添えた短編集

空き缶文学

小さなライオン

 赤いボディのネイキッドバイクが停まっている。

 タンクの横に刻まれた三つの星と文字、それから小さなライオン。

 ハンドルにも刻まれているブランド名。

 メカメカしい、少し角ばったマフラーから、ドが連続して唸る排気音。


 革ジャンを着て、サングラスをかけて、ブーツとグローブ、イタリアカラーのジェットヘルメットをかぶるライダーに、私の下がっていた口角は可笑しさを堪える。


 初めて褒めてくれたチュールスカートで浮かれていた私が馬鹿みたいじゃない。


 茶化すように親指を立て、後ろに乗りなって指す。

 つま先立ちのプルプル震える足で踏ん張っているのが、どこか可愛く見え、同時に呆れてしまう。


 三〇分の遅刻を咎める気が失せた私は軽く息を吐き、部屋に戻った……――。

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