第9話 ナニしたんですか!?

 俺は追求を諦めてスマホを机の上に置くと、買ってきた弁当を食べ始める。チキン南蛮弁当。美味い。チキンの下に敷いてあるパスタも美味い。

 なんかスマホが震えてる。烏丸さんの名前だ。スルーしよう。


 ……よし、着信止まった。


 カリカリ梅干しが乗っていた赤くなってる部分の白米が美味い。


 また着信だ。


「…………」


 長いな。あーもう!


「はい」

『空園先生!? 私にナニしたんですか!? 気が付いたら部屋で下着姿だったんですけど!』


 声でかっ! まーだ酔ってんのか!


「なにもしてませんが!? 僕は送って行っただけですよ! アナタが勝手に脱いだんでしょう!?」

『……ちゃんと言ってくれたのなら私は空園先生だったら……』

「はい? なんて言いました?」


 電話なのにボソボソ言わないで欲しい。さっきの大声でちょっと耳キーンなってるんだから。


『なんでもないです! これでナニかあったら責任取ってもらいますからね! 編集長に言ってやるぅ〜!』

「ちょっと待てコラァ! それだけはやめて!」

『…………』

「ちょっと? 烏丸さん?」

『…………すぅ……』


 ね、寝やがった……。


 くそぅ。先輩からの連絡で上がったテンションが下がったじゃないか。

 よし、なんかアニメでも見て寝よう。今日は何にするかな? ロボかな? いや、やっぱりラブコメにしよう。

 この現実感が無いのがいいよね。むしろこんなの現実にあってたまるかよ。羨ま死するわ。



 その翌日、仕事を終えた俺がいるのはぬいぐるみの置かれた可愛らしい部屋。

 壁には二次元美少女のポスター。部屋の角にある机には三つのモニターにPC。そしてなんか絵を描く時に使うような名前も分からない機材。その周りにはゲームやアニメのキャラのアクリルスタンドがずらーっと並んでいる。


「空園せんせ? 何ボーッとしてるんですか?」


 混乱中の俺に背中から声をかけてきたのは金髪の美少女。


「繭梨先生? 俺は何故ここに?」

「え? さっきも言ったじゃないですか〜。コミカライズ用のキャラデザ描いてみたから見てくださいって」


 そう言ってケラケラ笑うのはラフな部屋着になった繭梨先生。つまりオフィーリアさんだ。


 そう、俺は今、繭梨先生の部屋に来ている。

 仕事終わりにスマホを見ると、繭梨先生からまたしてもDMが届いていたのだ。

 なんでも仕事で大事な話があるらしくて、駅で合流したあとに彼女に連れられるがままに着いてきたらこの部屋に着いていたのだ。

 てっきりどこか喫茶店とかかと思ったのに、まさかの自室。誘ってるのか? 誘われてるのか? いやいやいや。そんなまさか!


「それでそのキャラデザなんですけど、今こっちのモニターに出しますね。空園せんせはこの椅子に座ってください」

「あ、はい」


 俺は言う通りに椅子に座る。


「えーっと……」


 そう言いながら俺の後ろから手を伸ばしてマウスを操作する繭梨先生。


 ……っ!?


 ちょっと待て。この背中に伝わるこの二つの膨らみはまさか!?


「ちなみに空園せんせ? ワタシ、部屋に男の人を上げるの……せんせが初めてなんですよ?」


 ちょっとどういうこと? え? 何この状況!


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