第8話 先輩とのデートはアキバで
先輩から来たメッセージの内容はこうだ。
『やほー! えっとね、前に言ってたご飯のことなんだけど、休みが金曜日になりそうなんだけど大丈夫?』
金曜日か……。確か次の日は休みだったな。担当さんとの打ち合わせも無かったはずだし……よし、有給とろう。全然使ってないから溜まってるしな。使わないともったいないし、ちゃんと消化しないと怒られるもんな!
だから俺の返事は一択。
『大丈夫です!』
これに尽きる。当たり前だろ? 好きだった先輩からのお誘い。これを断る奴がどこにいるというんだ。
少なくとも俺は断らない。このチャンスを逃してなるものか。
『え、ホントに? 仕事じゃないの?』
『仕事じゃないですよ。ちょうどこの前休日出勤した分の振替で休みとってたんです。ナイスタイミングでしたね』
もちろん嘘だが。
『ほぇ〜、ホワイトな職場なんだね〜。いいなぁ。私のバイト先そんなのないよ。ちゃんと休み希望出さないとひたすらシフト入れられるもん』
『えぇ……それはキツいっすね……。うちの会社はまぁまぁマトモかも』
これも嘘。ホワイトなわけない。まっくろくろだし。何度サービス残業したことか……。ニュースで色々騒がれてやっと最近まともになってきたけど、それでもキツい部署はキツいみたいだもんなぁ。もしそっちの部署に入れられてたら小説書く暇なんて無かっただろうな。
『そう。キツいんだよ! そうそう、ちょっと聞いてよ!』
そこから届いたのは怒涛のグチのメッセージ。最初は電話にしようかと提案したんだけど、バイトの休憩中らしくてそれは無理だった。
『わかる? わかってくれる? この切なさ! ってもう休憩時間終わりだや』
『わかりますとも! バイト、残り時間頑張ってくださいね』
『うん、ありがとね』
『店とかは俺が予約しておくんで、時間決まったらまた連絡しますね』
『え? ご飯だけ?』
『へ?』
『だってせっかくの休みなんでしょ? 早い時間から遊ぼうよ! だから待ち合わせは十時ね! 場所はアキバの電気街口!』
え? え? ちょっと待って? ご飯だけじゃないの?
丸一日デートとか数年ぶりで心の準備が出来てないんですけど!? ってその前に返事返事……
『わかりました!』
わかってないけどな! そして返信は来ない。きっともう戻ったんだろう。
俺はすぐに隆平に連絡を入れる。助けてマイフレンド!
『今ちょっといい?』
『あ? 子供寝るまで待ってろ』
『らじゃ』
ドスの効いたキレ気味の返事から待つこと一時間。隆平から電話が来た。
『で、なんだよ。また自慢か?』
「ちゃうわ! 聞いてくれ。前に先輩と飯食いに行くって言っただろ? それが丸一日デートに変更になったんだ。教えてくれ隆平。俺はどうすればいい? ネットは俺に何も教えてくれない」
『アニメのセリフをパクるぐらいには余裕あんじゃん。抱け』
「それ極論! とりあえず待ち合わせ場所はアキバにはなったんだけどさ」
『なら良いじゃん。まぁ、久しぶりなんだからあんまりグイグイ行くなよ? 下心丸出しがバレるからな。まぁ、バレたところで……だろうけど』
「おいコラ。それはどういう意味だ。どうせ相手にされないとでも言いたいのか」
なんて失礼なやつだ。そんなこと少しは覚悟してるわ! ホントにそうだったら泣くけど。
『いや……まぁいいや。ちゃんと次に繋げられるように頑張れよ。先輩はきっと……ん? 悪いけどちょっと娘が起きてきたから切るぞ。じゃあな』
「わかった。って待て! 何を言いかけた!? 気になるんですけど……ってうわ、まじで切りやがったコノヤロウ!」
スマホに向かって文句を言っても何も聞こえず、画面は自分のラノベの挿絵に設定した待ち受け画面に戻っていた。
先輩はきっと、ってなんだよ。その続き言ってから切れよぉ! どうせコイツの場合また聞いても言わないだろうなぁ。ましてや娘と一緒なら尚更だ。
あぁぁぁぁぁ! 気になるぅ!!
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