キング・オブ・モンスター

 ギルドに国から緊急招集がかかりました。


「皆さん、べリリア王国に所属する各ギルドに招集がかかりました。王都の近くに凶悪なモンスターが現れたそうです」


 アリスさんがギルメンを集めて状況を説明します。ギルドバトルも終わって全てのギルドが動けるようになったこの状態で、全ギルドに招集ががかかるとなると、相手のモンスターはよほどの強敵なのでしょう。考えられるのはあのモンスター……。


「何が出たにゃ?」


「ドラゴンです」


 ですよねー。


 モンスターの中でも最強の種族、ドラゴン。体長は小さいものでも十メートルを超す大型の生物で、その身体を覆う鱗は非常に硬く、炎や冷気もほとんど通さない耐熱仕様。鋭い爪と牙を持つ上にコウモリのような羽で空を飛び、尻尾の一振りで城壁も破壊するほか、口からは様々な吐息ブレスを吐いて広範囲を攻撃します。


「ドラゴン……」


 ユーリが険しい表情を見せます。ドラゴンスレイヤーを目指しているんですからね。今の状態では難しいでしょうけど、いつかは一人で倒せるといいですね。


 その前にまずゴブリンぐらいは狩れるようになってもらわないと。


「全ギルドが集まるとなると数百人規模になるでござるな。連携が取れるとは思えないでござる」


「軍隊ならともかく、冒険者では無理でしょうね。ですから、ギルドごとにまとまって交代で挑むようです。王都に侵入させなければいいので、無理に仕留めようと思わない方がいいでしょう」


 保有戦力としてはうちのギルドがこのべリリア王国内で一番弱いはずですが、先日のバーリント候討伐に続きバジリスクを退けたことでギルド評価が急激に上がって今回の作戦では一番最後に挑む役目を与えられました。他のギルドが討伐に成功すれば私達の出番はないそうです。


「最近戦ってばかりだから今回は楽したいにゃ。他のギルド頑張れにゃ」


 ミィナさんが不真面目なことを言っていますが、これはユーリのことを気遣っての言葉でしょうね。彼が剣を振れるようになるまでは、あまり強敵と戦わない方がいいですし。いくらトロール並みの体力を誇るユーリでも、ドラゴンの攻撃をまともに食らえば危ないでしょう。防御の練習も始めたのですが、これまで剣技ばかり磨いてきた彼にはまだ厳しいです。


「俺も参加するよ! 騎士らしく盾役として」


「無理はしないでくださいね。私の回復力では支えきれませんから」


 通常の騎士様でも、盾役として活躍する時にはその傷を回復させる司祭ヒーラーの存在が不可欠です。騎士が攻撃を受けて、それを司祭が回復させ、仲間が敵を倒すまで耐え続けるのです。


 防御が苦手な騎士と回復が苦手な司祭のコンビではドラゴンの攻撃なんて到底耐えきれません。


「ティアは殴るにゃ。それが存在意義にゃ」


「左様。ユーリ殿もティア殿も無理して普通の戦い方をしようとしなくていいのでござる」


 確かにそれを目指していたんですけど、大切な仲間ができた今はただ殴るだけというわけにもいかないですよ。本当に、どうしてちまたに有り余る司祭がこのギルドには近寄らないのでしょう。


「十分な準備をしていきましょうね。我々の出番はまだ先ですから」


 アリスさんの言葉を合図に、ギルメン達は準備を開始しました。本当に他のギルドが討伐してくれればいいのですが、そう簡単にはいかないんでしょうね。


 私も、メイスの手入れをして十三個の魔石がちゃんとセットされていることを確認するのでした。


 さあ、頑張っていきますよ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る