第134話 スタンピードの鎮圧

『グォオオオオオオオオッ』


 雄叫びと共にダンジョンの入り口から爆発的にモンスターが溢れ出してきた。


 今まで遭遇したことはなかったが、これがスタンピードの始まりだ。


「ふんっ!!」

「はっ!!」

「にゃーんっ!!」


 俺たちは物理攻撃で応戦するが、このままでは対応できそうにない。


「うぉおおおおおおおおおっ!!」


 俺は戦士の雄叫びウォークライで敵の敵愾心を煽った。何百匹というモンスター全ての視線が俺に引き寄せられて、たちまち俺の方に向かって来る。


 全く熱烈な歓迎じゃないか。


「今うちに変身してくれ!!」

「うむっ!!」

「にゃにゃっ!!」


 二人はその間に本来の姿へと戻った。


『行くぞ!!』

「ガォオオオオオオオンッ!!」


 二人はそれぞれ範囲攻撃で敵に襲い掛かる。ソフィはブレス、チャチャは雷を放つ。


『グォオオオオオオオオオッ!?』

『ギャァアアアアアアアアッ!?』


 凄まじい轟音と砂煙を巻き上げてモンスターたちは仲間に邪魔されて、避けることさえできずに吹き飛ばされていく。


 それでも敵の勢いが衰える様子はない。


 スタンピード中のモンスターは、普段よりもさらに凶暴になっていて、とにかく仲間のモンスター以外を手当たり次第に襲うと聞いているから、そのせいだろう。


「敵は俺が引き受ける。二人は俺に構わず全力で倒してくれ」

『任せよ』

「ガォンッ」


 二人は俺の指示に何も言わずに従う。なぜなら、二人の攻撃が俺にダメージを与えることができないと理解しているからだ。


「うぉおおおおおおおおおっ!!」


 俺は戦士の雄叫びウォークライを発動させながら前方へと突っ込んで敵を叩きのめしていく。


 ――ゴォオオオオオオッ

 ――バチバチバチバチッ


 そんな俺の背中から二人のブレスと雷が襲い掛かる。心地の良い暖かさと、体を揉まれているような気持ちよさが通り過ぎていく。


「容赦ないな……だけど、それでいい」


 全く躊躇することなく、俺ごと攻撃に巻き込む二人に、思わず笑みがこぼれる。


 俺の防御力を信頼してくれている証拠だからだ。


「うぉおおおおおおおおっ!!」


 俺は遠くの敵がどこかに行かないように立ちまわりながら、敵を殴り続けた。


「おっ、あれは……」


 出てくるモンスターを倒し続けていると、中からひと際大きなモンスターが姿を現わした。


『恐らく今回のスタンピードを率いるボスであろうな』

「ガォンガォンッ」


 ソフィの推測に、チャチャが同意して首を縦に振る。


「つまり、あれを倒せば今回のスタンピードは終わりってことか」

『うむっ。もうひと踏ん張りだ』

「よし、いこう」


 スタンピードには群を率いるボスがいる。そのモンスターを倒せば、それ以上モンスターが出てこなくなる。


 俺たちはボスの前にいるモンスター達を消し飛ばしながら突き進んだ。


「グッグッグッ。俺はゴブリンヒーロー、最強のゴブリンだ。部下たちは倒されたようだが、俺はそうは――ピギャッ」

「ん? 何か言ってたか?」


 俺はボスモンスターに近づくとそのまま思いきりぶん殴ってやった。なんか喋っていたような気もするけど、モンスターが喋るなんて聞いたことないから気のせいだな、うん。


『容赦ないな』

「ガォンガォンッ」


 後ろの二人から謂れのない誹謗中傷を受けているようなが気がする。


「何か言ったか?」

『いや、なんでもないぞ?』

「ガォガォッ」


 俺がブリキ人形のように振り返り、訪ねるとそれはどうやら俺の勘違いだったらしい。


 うんうん、二人がそんなこと言うはずないもんな。


「よし、残党を殲滅するぞ」

『うむ』

「ガォンッ」


 俺は二人に声を掛けて、散り散りになった敵を戦士の雄叫びウォークライで集めて叩き潰していった。


「ふぅ……」

『片付いたな』

「ガォンッ」


 スタンピードを鎮圧した俺たちはホッと一息つく。


「ユーシアをダンジョン探索に行ってもらっても大丈夫かね」

「スタンピードが終わってダンジョン内も正常化しているはず。問題なかろう」

「よし、そうしよう」

 

 ソフィの返事を聞いた俺は、ユーシアをダンジョン探索に連れていくことにした。

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