彼は地味…?
桜が私達、新入生を迎えるように、ヒラヒラと手招きするように舞っている。
私は今日から高校生。
(早くクラス見に行こう)
特別仲の良い子は居ないから、どのクラスでも良い。
今張り出されたばかりなのか、周りは騒がしい。
(えっと… 奥村…果子…奥村…)
「あっ、あった」
私は6組だった。
一応クラスメイトの名前を見て見たけど、誰1人として分からない。
また初めから人間関係を作るのは面倒だけど、この高校に来た私が悪い。
私は、クラスの感想を言い合う相手も居ないので、すぐ教室へ向かった。
ーーーーーー
「…つら…辛すぎる…」
一年は、やっぱり教室は3階だった。
中学からバリバリの帰宅部だった私には辛すぎる。
「…はぁはぁはぁ…体力なさすぎでしょ…」
あまりの体力の無さに、自分でも引いている。
ようやく三階に着いたけど、私は疲れすぎて立ち止まった。
ものすごい鼻息と呼吸をしている。
何してんだ私は。
「大丈夫?」
柔らかく、少し低くい男の人の声だった。
顔を上げてみると 、今の私とは正反対に、爽やかな雰囲気だった。
「…あ、大丈夫です。気にしないでください。」
私は、いきなり知らない人に、高校初日から心配をされてしまった。
ちょっとだけ恥ずかしくて、素っ気なく返してしまった。
「でも、階段にいたら誰だって心配するよ。」
いや、そうですよねー、
階段にこんな鼻息荒い女がいたら色んな意味で心配になるに決まっている。
「ちょっとごめんね。触るよ。」
「えっ……」
いつのまにか、私のおでこには冷たくて、少し骨張った手が触れていた。
今の状況は…?
え、何これ?
「うーん…熱はなさそうだね、良かった。」
完全に私の思考が停止した。
何が起きてるのか自分でも分からなかった。
今まで付き合った事も好きな人もできた時ない私にとって何が何だか分からなかった。
ましてや今日初対面の見ず知らずの人に触れられるなんて一大事だ。
「はいこれ、良かったら使って」
そう言って皺1つない綺麗なハンカチが私の目の前に出された。
私は全く動けず只々ハンカチを見つめる。
「…あれ聞こえてる?やっぱり体調悪い?」
「…あっ…あ!ああ!、だ、大丈夫です!!」
ハッとして私は少し大きめの声を出して返事をしてしまった。
一瞬私の声にびっくりしたのか目を少し丸くしていたが、すぐに笑顔になって
「大丈夫なら良かったはいハンカチ」
そう言って差し出されたハンカチを反射的に受け取ってしまった。
「…あ、あり「おーーーい!!!みのるーーー!!!」
お礼を言おうとした私の声に見事に被った声。
彼の低い声とは真逆の高い声が聞こえた。
「びっくりした!この距離でそんな大声だすなよ」
さっきとは違う少し乱暴な口調になった彼。
少し顔を歪めたけどすぐにまた笑顔になった。
「いいじゃんいいじゃん!朝の
あ・い・さ・ つだよ♡」
階段の上には少し背が低めで中学生のあどけなさをまだ残してる男の子がいた。
(あー多分クラスの人気者タイプじゃん、結構苦手なタイプかも)
私は無意識のうちに少し眉を潜めて彼を見た。
私の視線に気づいたのか彼と目が合う。
私の顔を見た後目を何度かパチパチさせていた。
(まるで新種の動物をみたような顔されてる…
こいつ失礼だな)
すると次は口角を少し上げ新しいおもちゃでも見つけたような顔で爽やかな彼の方に視線を向けた。
「おいみのる、朝から女子とイチャイチャしてんなよ」
(…え…イチャ…イチャ…とは…?)
私は次から次へと頭の中で処理しきれない事が起きてフリーズした。
「…え、あ、あの…」
ぐちゃぐちゃの頭の中を抱えながらなんとか言葉を出そうとした。
「そんなんじゃないよ、いくぞとうま。
あ、体調悪かったら無理せず休むんだよ」
また笑顔で『みのる』という人はもう1人の彼と教室に向かっていった。
「…あー…お礼言うの忘れたし…」
素性も知らない彼からのハンカチも受け取ってしまった。
(とりあえず洗って返そう…どこのクラスかぐらい聞けば良かった…はぁついてない…)
小さい果実と実る恋 のぐち @nogu221
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。小さい果実と実る恋の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます