第8話 狂戦士な子

 僕は中学生の時にその漫画と出会った。


『隻眼の狂戦士』


 惜しくも2021年、作者様が亡くなってしまった。

 この世で大好きなマンガベスト3の一つだ。


 中学生時代のころ、僕は主人公にめっちゃハマった。

 身の丈を超えるような大剣を振り回す黒き戦士。

 最高じゃないか。


 その主人公は、夜になるとバケモノに襲われるのだが、他のキャラがそれを心配すると、決まってこういう。

 背を向けて、剣を構え「いつものことさ……」と。

 そう言い残すと、夜が明けるまで血まみれになりがなら、戦うのだ。


 くしくも未完で終わった作品だが、僕の人生におけるバイブルとして、今も心に深く刻まれている。

 そして、この作品の特徴として、もう一つある。


 なかなか新刊が発売されないことである。

 これはもう、あんな繊細な描写を書くのだし、先生が苦労されているので、ファンなら待つのは苦ではない。

 何年経とうとも……。


 だから発売日になると、ウキウキで本屋に走っちゃう。

 僕は電車で隣り町の本屋まで新刊を買いにいった。

 帰宅するのが待ちきれず、帰りの電車内でビニールを破ると、読みだした。


『いつものことさ……』


 かっこいい!

 くぅ~ 僕もこんなセリフ言ってみたいもんだ。

 読了すると、本を閉じて余韻にひたる。


 ふと、反対側の席を見ると、ひとりの若い女性が座っていた。

 驚くことに、僕と同じ新刊を手にしていた。

 眼鏡をかけた大人しい子で、食い入るように、あの名作を楽しんでいるようだ。


 なるほどなるほど、こんな若い女性も好きなのかぁ。

 さすがは、先生の作品だ。

 僕は自分のように、その光景を優しく見守っていた。


 その子は僕の視線に気がつくこともなく、本を読んでいる。

 読書家の彼女に感心していると、僕はあることに気がつく。


 それは、彼女の足元だ。

 膝丈ぐらいのミニスカートを履いているのだが、わずかに隙間が見える。

 どうやら、マンガに熱中しているせいで、太ももの力が緩んでいるようだ。

 徐々に、その開き方は大胆になっていく。


 車内を見渡すと、僕と彼女しかいない。


 気がつけば、彼女の太ももは全開だ……。

 つまり、シマシマのパンティが丸見え。

 

 わざわざ僕の目の前に座り、パンツを見せつけるだと!?

 しかも、同じマンガまで用意して……。


 まさか! この子、僕に惚れているのかもしれない!?

 いつものように……。


 了



 

 

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帰ってきた童貞くん 味噌村 幸太郎 @misomura-koutarou

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