後はお任せた。草葉の陰から応援しています。 ……ってまだ僕は死んでないって!!
原田たくや
1章 01話 プロローグ01(忌まわしい過去)
キンコンカンコン。小学校から続くお馴染みの聞き覚えが耳に残るメロディ。
先生が授業の終わりを告げ、学級委員が僕たちに向かって起立の号令を掛ける。
本来ならこれから胸踊らせて喜ぶハッピーエンドの時間なんだけど……。
「今日のお楽しみ給食楽しみだよねっ!」
「あの歯が折れそうなクッキーはもうやめてくれよなっ~」
先生の姿が教室から消えると貯まっていたクラスのフラストレーションが
一気に解放。
楽しそうに笑みを浮かべて机を繋げて思い思いに独立国家を作っていく
クラスメイト達。
だが入学式から鎖国を命じら、1つ独立した島国に僕は漂流しているわけで。
「志保、志保トイレ行く? 咲子は行く? 睦月は?」
「行く、行く、行く」
「オッケーーー」
今日は3分遅かったな? これが僕が動き出す合図にしている女子の集団行動。
活発な女子達にお前ってクラスに友達いないじゃんってツッコミを
入れられないためにもあの仲良し3人組が教室から消えるのを見計らって、
「……うーーん、今日は確か……佐藤君と約束してたっけ?」
おもむろに呟いてから僕は席を立つ。
密輸(人身売買)を犯そうとも守るべきプライド。
もちろんエアー友達である佐藤君はこの学校っていうか
この世にいない空想上の人物だ。
日本で一番多いとされる当たり障りない名字の佐藤を
カモフラージュにした友達トリック。
同学年に佐藤君がいないことはクラス合同授業の体育の時間で
既に確認済みである。
だから必然的にクラスメイトのみんなは3年生か1年生に友達がいるって
勝手に思い込む。
その先入観に漬け込んで別校舎あるトイレに向かっても
誰も不信感を抱かないわけで。
最初頃は緊張の余り、口の中がもごもごして上手く独り言を発せられなかった。
でも今の僕は違う。
ようやく苦い経験を重ねてついにオオカミ少年の極意を身につけたんだ。
ボッチってバレない限り、オオカミ(いじめっ子)の群れに
襲撃されることもないだろう。
給食が準備されるまでの辛抱だ。給食を食べる時間だけはもっとも苦痛だけど。
今日も背景に混ざり合うように。リア充どもに気付かれないように
自然な笑顔で廊下に忍び込むようにして……。
「きゃっ! ごめんなさい」
「わーーーっ」
教室の後ろ扉の出入り口付近の惨劇という名のハプニング。
ボディアタックから男女仲良く上下に座っての組み体操。
今日も平然とクラスの空気に溶け込んでいるって思っていたのに。
「……痛てててっ」
死角から突っ込んでくる女の子がいるなんて。
ま、まさかお約束の口に食パンを咥えて走ってきたってマンガ的なノリなんじゃ?
「大丈夫っ、玲音くん右腕は大丈夫?」
しかし繰り出された技は違うけど男女の体の違いはこうも変わるものなのか?
ゴツゴツとした重さじゃなく、柔らかな肉感に石鹸の良い香りが
ほのかに心地よくて温かい。
「もう、玲音くんって聞いているの?」
思えば久しぶりに玲音って響きを聞いた気がするな?
このクラスには変わった名字なのに篠染っていう名前がもう1人いるから
嫌なんだ。
成績優秀でスポーツ万能の完璧超人である篠染優介。
それに対して全てが劣化版の量産型である篠染玲音。
優介と玲音は光と影。月とすっぽん。とにかく血の繋がった兄弟出ないのに
よく比較される。
「うん、大丈夫。この右腕は余り感覚がないからね。
それよりも田崎さんこそ怪我はない?」
「平気、平気。こう見えてわたし頑丈だから」
えっへんとばかりに両手を脇に当てて姿勢を崩さない田崎さん。
因みに田崎さんは先頭を歩き小柄で瞳が大きいまるでチワワみたいな
強がりの女の子だ。
気遣う心も愛情深く、きっと車にぶつかっても
血を流しながら大丈夫ですかって
加害者に寄り添おうとしそうだから少し心配な部分でもある。
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