第3話 フリースクールに通う
児童精神科を受診してみると、とても不思議な気持ちになったのを覚えています。おそらくそれは、これまで本当の意味で、私のことを理解してくれる人がいなかったのですが、児童精神科医の先生は理解しようとしてくれているからです。私はこれまで感じていたことを全部話しました。それは親にも話したことのないことも含めてです。すると先生は、今後のことを話してくれました。そしていくつか選択肢を提示してくれた中にあったのが、冒頭からずっと話をしていた「フリースクール」です。私はフリースクールの見学、体験授業を受けてから、ここに通いたいと思い、通うことになりました。
また児童精神科医の先生は、親にこんなことも言っていました。学校に行かないからと言って罰を与えてはいけない、家では好きにさせてあげること。私がフリースクールに通う頃には、親も私への態度が変わり、私は家が落ち着ける場所になっていました。
フリースクールは、月火木金は自習です。自分のペースで勉強ができ、わからないことがあれば先生に聞くことができるので、焦ることなく勉強ができます。私が通っていたフリースクールは、定年で学校を辞めた先生たちが作った場所だったので、教えてくれるのもとても上手です。先生は3人で、生徒は10人。不登校の子どもを育てたいと、定年退職した先生と児童精神科医が市に掛け合ってできたところだと、後から聞きました。
フリースクールは通常の学校とは違うので、中学校を通っていたことにはなりません。ですが、在籍している中学校の校長先生と児童精神科医が、ここのフリースクールでの通学する証明書があれば、市から受給者証が発行され、中学校に通っていたことになります。このシステムを作るまでに10年もかかったそうです。大人の中には、本当に不登校の子どもたちのことを考えている人もいるんだなと思いました。
フリースクールでは、月火木金が自習だと書きましたが、じゃあ水曜日は?と思った人もいるのではないでしょうか。私がいたフリースクールでは、水曜日は市の体育館を借りて、1日体育の授業をしています。思いっきり体を動かせるので、この日を待ち遠しくしている子もいるぐらいです。それに、自習の日は、全員が同じものを食べられるようにと、先生が作ってくれるのですが、水曜日だけは違います。この日は、市から提供される「赤いきつね」「緑のたぬき」が机の上に並べられ、私たちは好きな方を選んで食べることができました。市が非常用に備蓄していたこともあったのかもしれません。でも私は、水曜日だけは、自分で好きな方を選べるので、とても嬉しかったのを覚えています。
あと、フリースクールでは、チクチク言葉……相手を傷つけるような言葉や嫌味をいう言葉は禁止で、ふわふわ言葉……まあるくて優しい言葉を遣いましょうと書かれたポスターが、いたるところに貼られています。だから、誰も誰かを傷つけることはしません。それに通っている子たちは、みんなどこか似ている性格で、優しい先生たちと一緒に過ごす時間は、本当に気持ちがわかり合えるような気持ちになれました。ここに通うことができたから、私は人を信じられるようになったんだと思います。
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