019 ~シャングの黄金の道⑥~
「おお!これはこれは!
出迎えてくれたのはいつもの王の使者だ。
今回はいつもの部屋に通さず、ずっと廊下に立たされて待っていたが、王の使者も忙しいのかもしれない。
「今日はどうされましたか?」
「ああ、その…実は武器と防具とアイテムを貸してもらえないかと思って」
「ほぅ…それは何用で?」
「何って、ソフィ姫の依頼だよ。少々手間取っていて…少し武器や防具を調達したい…だ、大丈夫だ!俺たちはS級、国から防具や武器が支給されれば、あんな敵一瞬で片づけられる。だから貸してくれないか?」
「……なるほど、それで…」
王の使者は何やら渋い顔をして俺と、その奥にいるアンデス、ロッソ、ティメルを見た。
「な、なんだよ…なにか問題でもあるっていうのか…?」
「ええ、ありますとも、シャング殿」
「な、なんだよ…問題って」
王の使者は、一歩前に出て少し間をおいてから口を開いた。
「先ほど、わたくしはこう、申し上げました。良くいらっしゃいましたね。と」
「あ、ああ…それがなんなんだよ…」
「よく、その面を私、この王のいる城に出せたなと言ったのですよ…」
「は、はあぁあああ?な、なんだよ!!その言い草!!!俺は王
「いえ、もうあなた方は王
「な、なにを…いって………お、俺たちはあんたたちの依頼をこなしただろ!!それに今だってあの姫の……!!」
「その!!!……ソフィ姫から先ほど連絡鳥が飛んできました。依頼は別の冒険者の方にこなしてもらったそうです」
「な、なにぃいいい!!!!??????????」
俺はその事実に驚き、動揺した。
後ろの3人を見ると、3人共驚き、絶望の表情をしていた。
「う、うそだ……そ、そんな…」
「え、ど、どういうことなのよ…」
「は、はは…私たちの栄光は……」
王の使者は続けた。
「それだけではありません…あなた方は私たちの名前に泥を塗りました。ただのダンジョンからボロボロになって帰ってきたと報告を受けています」
「え…!?な、なんのことだ……!!?」
「洞窟のダンジョンという物があるらしいですね、そこはD級やC級がいくダンジョンだそうな……そこから逃げかえってきた姿を城の兵士たちが見ていました」
ば、バカな!!!?誰にも気づかれない様に最新の注意を払ったというのに…!!?な、なぜ…!!!?
「さらに、古代の遺跡という場所からA級の冒険者パーティーに助けておぶられて帰ってきたとか、しかも目を覚ましたのはギルドの中……もう、国中に噂になっています」
「そ、そんな……そんなぁああああ……」
「あなたたちは、もう、この国に居場所はありません。私共の名前に傷をつけた代償は大きいですよ…」
「ま、待ってくれ!!!頼む!!!まってくれぇえええええええ!!!」
俺は王の使者の足元に倒れ込んで服を掴む。
「頼む!!もう一度!!もう一度!!!チャンスをくれぇえええ!!!!!!」
俺は全力でお願いをした。頭を下げた。
涙と鼻水をたらしながら。
ここで終われない。俺は!!ここで終わるような人間じゃないんだ!!!
「…分かってないようですね……大きな地位と名誉を持つ人間にはそれ相応のリスクも付きまとうモノです。それを、ごめんなさい。もう一度チャンスをくださいと、許される国がどこにありますか?」
「あ、あああ…あああ」
俺たちの周りには城の兵士たちが数人近づいて来ていた。
「ど、どうするんだ…シャング…!」
「もう、おしまいよ…私たち……」
「シャング様…」
俺はそれでも、お願いした。全力で自分のプライドを折ってでも……ぐぐぐぐぐ!!!くそぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!
頭を地面に擦り付けて何度も何度も。
「頼む!!!頼む!!!!!!俺たちを見捨てるな!!!!俺たちを!!!!」
これだけ頼んでいるんだ!!そろそろ許せよ!!クソしじいがぁああああ!!!
「………城から追い出せ、そして二度と入れるな…」
「はっ!?」
王の使者はそう言い残し、後ろを振り返り歩いて行った。
俺たちは兵士に捕まえて外に連れていかれた。
「やめろおおおおおお!!!!はなせ!!くそ!!」
「大人しくしろ!!この噓つきペテン師野郎ども!!!!」
ドカドカと蹴られて殴られて俺たちは外に放り出された。
ボロ雑巾の様に、ゴミの様に。
「ま、待ってくれ……ソフィ姫の依頼を……こなしたやつは…誰なんだ……」
俺は倒れて階段に手を付きながら顔を上げて兵士らに尋ねた。
「ああ?……おい、お前知ってるか?」
「ちっ…あーーたしか、なんか言っていたな、ウル…ウレ……何だったけな…」
「思い出せねーのかよ…」
「あ、ウィリアム!!そうだ!!確かそんな名前のやつが一人でやったって言ってたな。しかし、このクソ野郎どものせいでレギネシア王国は、恥をかいた。せっかくクレイアリエス皇国といい条件の外交が出来るチャンスだったのに…ちっ…」
そういうと兵士たちは城の中へ戻っていった。
「ね、ねぇ…いま…ウィルの名前言ってなかった?」
「あ、ああオレも、聞こえた……」
ウィリアム?ウィルだと?あの使いっパシリのウィルだと?あいつが??あの雑魚が?????
「うううううううううぐぐぐぐぐううううううううううううううううううううううううううう!!!!!!!!!!!!!!」
階段を何回も殴りつける。
悔しい悔しい悔しい悔しい!!!!!!!なんで!!!!!なんでなんだ!!!!!くそがぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!
「ううっ…ぐっ……ううう………」
「シャング…いこう……」
俺はアンデスらに連れられて城を跡にした。街を歩くたびに俺たちを笑うひそひそ声が聞こえる。
「あいつら、王を騙していたらしいぜ」「なにがS級だよ、クソ級の冒険者じゃねーか」「二度とこの国に足を踏み入れて欲しくないな」
「ううう…笑うな、俺を笑うな……うぐぐぐ……」
「早くここから出よう…この国から……」
そこに、さっきのA級冒険者の男が現れる。
「よぉシャング…」
「お、お前はさっきの…」
「ふっ…ひどい顔だな」
「関係ないだろ……」
俺はそのまま歩いて奴の隣を歩こうとする。
「まぁ、そういうなよ、っつても、俺は後ろの三人に用があるんだがな」
その男はアンデス、ロッソ、ティメルに目線を向ける。
「なに?…こいつらに?」
「単刀直入にいう、お前ら!俺たちのパーティーに加わらないか?」
「え!?」
その男の言葉に3人は驚く。
「お前らはもうここじゃ冒険者にはなれない、このままじゃな。……だが、俺たちのパーティーに加わればお前らは生きながらえる…まぁ、リーダーのこいつは無理だがな」
「何言ってんだお前!!!!」
俺は奴の胸倉をつかむ。
「ふん、雑魚に用はない…」
「な!!??」
雑魚?俺を!!?雑魚だと!!!???
「悪い話しじゃないぜ、どうだ?」
「わ、私たちを仲間に入れてどうするのよ!!あんたたちになんのメリットがあるの!?」
ロッソがいう。
そうだ言ってやれ!コイツに思い知らせてやれ!!!
「簡単だ、ロッソお前は顔がいい……俺の女にしてやる。それと、ティメルだったか?お前は胸と尻がいい。俺のベッドで相手をしろ?…アンデスは筋肉が使えそうだ、パシリに使ってやる」
「ふん!お前、こいつらがそんなことで俺から離れると思うか???バカが!!!!言ってやれお前ら!!コイツに!!!」
俺は3人に言う。
……
おい、なんで静かになる。
「おい、お前ら……」
「いいわ、その申し出受ける…」
は???????
ロッソがそう言った。
「私も…受けます…」
ティメルも続けてそう言った。
な、な、なんだと…
「お、お、おおお、お前らぁああああああ!!!俺を!!!俺を見捨てるつもりなのか!!!!クソビッチどもがぁあああああああ」
クソが!!!女はこれだから信用できない!!!こんなやつ、どうでもいい!!!アンデスと2人きりで一からやり直すだけだ!!
「もういい!!こいつらは!!クズだ!!!!行くぞ!!アンデス!!!ついてこい!!」
俺はA級の男の掴んだ胸倉を放して、歩いて行く。
しかし、後ろからアンデスが付いてくる気配はない。
俺は後ろを振り返る。
そこにはアンデスが男の隣に立っていた。
「あ、アンデス???おま、お前……な、なんで…」
「すまない、パシリでもなんでも、A級になるんだ、国を追放されるよりはいい」
「噓だぁああああああああ!!!!!おま、!!おまえ!!俺ずっと一緒にやってきただろ!!!!!!裏切るのかぁあああああああ」
「お前は、これまで、俺たちを捨て駒の様に扱った……洞窟のダンジョンでも、遺跡のダンジョンでも。だから、俺たちもお前をそう扱う……」
はは、はははは…なんだこれ、なんだこれ……
「じゃあ、そういう事だから、行くぞお前ら」
男はそういうと、ロッソとティメルの首に腕を回して去っていった。
ロッソもティメルも俺と目を合わせそうとはせずに……
俺は膝から崩れ落ちた、そして全身のチカラが抜けて立てなくなった。仰向けに寝そべりながら空を見上げた。
「はははは、ははっはは……はははははははは!!!ああっあはははははははははははは」
これは夢だ!夢なんだ!!!!
夢だ!!!!そうだ!!!!
「あーーーはっはははははははははは!!!!!!!!!!!!!!」
空には自由に飛ぶ鳥が5羽いた。
気持ちよさそうに飛んでいる。何処に行くのだろうか。
その姿は、あの頃の俺たちの様だった。
俺と、アンデスとロッソと、ティメルと
それにウィル。
ただ冒険者としてパーティーを組んで日々の依頼をこなしていた。
大変だったが楽しいこともあった。
何処まででも飛んでいけると、あの頃は思っていた。思っていたのにな……。
なぁ、ウィル。俺は、どこで間違えたんだろう………。
ウィル…。
俺は……。
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