008 ~シャングたちの黄金の道②~
「クソ!この洞窟の先なんだろうな、あの姫が言っていた場所は!!どうなんだアンデス!」
「そ、そのはずだぞ、あの情報を元にしたらこの洞窟のダンジョンの先のはずだ」
「暗くて周りが見えねぇ、おい!明かりはどうした!!明かりは!」
「あ、あのシャング様、明かりのアイテムも無くなって………」
「なんなんだよ!!!クソがっ!!!」
俺はアンデスとティメルに怒鳴る。
ようやくチャンスを掴んだっていうのに、なんでこんな場所で地団駄踏むことになっているんだ!!
俺たちはソフィ姫の依頼を受けて、とある谷を目指していた。近道と思って低レベルの洞窟ダンジョンを抜けて行こうと思ったが、さっきから同じところをぐるぐると回っている様だ。
明かりが無く、出口がどこか分からなくなっていた。
S級の『
「だれか、何とかしろよ!!!」
「そ、そうは言ってもどうしようも無いよ…シャング」
ロッソが俺にそういう。
「チッ…使えねぇな」
「ま、まあ。明かりは忘れたが他の装備は街で買い集めたから大丈夫だろう…」
アンデスが言う。
「…とにかく出口を探すぞ」
俺はパーティーメンバーにそう言って洞窟の奥を進む。
「そういえば…こういう時、昔あったよね…その時は、ウィルがどこからともなく光の杖を取り出して辺りを照らしてくれた……」
「俺の前でそいつの話をするなぁあ!!!!!」
ロッソがそう言った瞬間、俺はロッソの胸倉をつかんで壁に押し付けた。
「うぅ…ご、ごめん……も、もういわないから…」
「当たり前だ……」
ロッソが怖がるので、俺はロッソから手を離す。
少し頭に血が上ってしまった。
俺としたことが。俺はS級冒険者。
こんな場所いつでも簡単に抜け出せる。
深呼吸して、奥へ進もうとしたその瞬間。
「グラァアアア!!!」
「はっ…!?」
声に気づいた時には遅かった。モンスターの持つ棒状の武器で腕とわき腹をえぐる様に叩きつけられて俺は吹っ飛ばされた。
壁に頭を打ち付けて倒れてしまった。
「あ!がっ!!?」
「シャ!シャング!!!!」
アンデスが手甲を装備してそのモンスターに攻撃する。
モンスターは棒でその攻撃を防いだ音がした。
―ジュウ…
と火花が立ち、一瞬辺りが明るくなる。
そこには低ランクモンスターのゴブリンがいた。
奥からはもう一匹のゴブリンが火のたいまつを持ってやってきた。
「シャング様!なによ!こいつゴブリンのくせして!!」
ティメルが槍の武器を取り出して構えて攻撃するが、ゴブリンの攻撃で簡単に武器を吹き飛ばされてしまう。
「へ?な、なんでよ!!?」
「グラァアアアア!!!」
「ひっい!!」
ティメルは俺の元にやって来て助けを求めてきた。
「シャ!シャング様ぁああ!」
「ううう…く、くそが……」
俺は何とか腕の痛みに耐えながら立ち上がる。
しかし、ただのゴブリンに俺たちS級冒険者が苦戦するだと!!!
こ、こんなことあってはならない…!!
「シャング…街で買った武器…も、もしかしたらランクが低いのかもしれない…」
「な、なに言ってるんだ…街で買ったって言ってもこいつはただの雑魚モンスターのゴブリンだぞ!!」
ある程度の武器であればこんな雑魚すぐ倒せるはずだ。
油断していたとはいえ、あんな一撃を食らうとは……クソがぁああ!!!
「な、何とかしろ!ロッソ!アンデス!!」
俺は2人に指示する。ロッソとアンデスが俺の前に立ち、ゴブリンに飛びかかる。
「これでどうよ!!ファイアーフレイム!!!」
「はあああああ!!!!スラッシュクロウ!!!」
―シーーーーーン
しかし、2人の攻撃はゴブリンには当たらない。
「な、なんで……!?ま、魔法が発動しない…!!?」
ロッソが驚いている。
―ガッ!!
「い、いやぁっぐ、ぐううう……く、くるしい…」
そこにゴブリンが首を掴んでロッソを持ち上げる。
「ぐはっ!!!!あ、あああああ………」
アンデスはもう一匹のゴブリンに腹を殴られてうずくまっている。
「お、お前ら!!何してる!!…ぐっ!!」
腕が痛む。さっきやられたところの傷が深いのか。動かせない。
何故だ!!なぜ2人の魔法攻撃が発動しない!!!こんなことありえない。あり得るはずがない!!
そこで、俺はハッと気が付く。
「そ、そうか…い、いままで上級魔法を発動出来たのは防具やアイテムを装備して俺たちの基礎能力の底上げをしていたから…!!」
今は防具やアイテムが無い。だからいつも発動していた魔法が出ないのか!!
く、くそう!!!!くそう!!!!
なんで、こんなことになったんだ!!!
と、とにかくヤバい。今はここから逃げ出さなければ。
俺は立ち上がって、壁沿いに動く。
「え、ええ??えええ?シャング様ど、どこへ行かれるのですか?…ロッソと、アンデスは…?」
ティメルが俺を引き留める様に言う。
「う、うるせぇええええ!!!黙れ!!!『
どいつもこいつも使えない奴だ。
「ああ、ああああ…がっはっ!」
ロッソが白目をむいている。
ゴブリンはロッソを投げ捨てて俺の元に向かってきた。
「ち、近寄るなぁ!!」
「グラァアアア!!!」
しかし、ゴブリンは爪で俺を引き裂いた。服が破けて腕と胸に傷を負う。
血が噴き出してそのまま後ろに倒れてしまった。
「あっがああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
俺は腕と胸から出る血を抑えながら叫ぶ。
「いてぇええええええええええええええええええ!!!あ、あああ、ティ、メル……た、助けろ…俺を…」
立ち尽くしているティメルに呼びかける。
「そ、そんな、わ、わたし……」
「グラァアア……ニチャア」
ゴブリンは俺の姿を見て嘲笑っている様だった。
「く、くそがぁああああああああああああ!!!お、俺をコケにしやがってえええええええ!!!」
俺は何とか腕と胸の出血を抑えながら立ち上がる。
アンデスが気絶したロッソを抱えて俺の方に近づいてきた。
「はぁ…はぁ……シ、シャング……」
ティメルもそのアンデスの肩を持って歩く。
俺たちパーティーは、一か所に集まった。
その様子を、ゴブリンたちはただニヤニヤして眺めていた。まるで、家畜や虫を痛めてつけて嘲笑う様に…。
「に、逃げるぞ…お前ら…う、うう」
くそ!!こんな屈辱は初めてだ。こんな、こんな雑魚モンスターに背中を見せるとは。
いつもの俺たちとは違い過ぎる。こんなの認めない。俺は認めないぞ!!!
「はぁ…はぁ…」
ゴブリンは少し俺たちが進むと、追撃して襲ってきた。
「く、くるなぁああああああああああ!!!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます