003 新しいギルド
僕はレギネシア王国を出てすぐの小さい街に来ていた。
「いや~気長に一人旅もいいもんだなぁ~」
しみじみと思いながら呟く。
街を歩きながら早速ギルドに立ち寄る。
小さい街のギルドということもあり、王都よりも建物自体は小さいが中はしっかりと整備されていた。
中には何人か冒険者が談笑していたり、情報交換をしている様子。
依頼を受けるカウンターには誰もいないが、奥の部屋に案内役の人がいるのかと思い声を掛ける。
「あの~、すみません依頼を受けてたいんですけど、今受けれる依頼を見せてもらえますか?」
「は、はい!ちょっ、ちょっと待ってくださいね…今出ていきますから!」
―バサッ
カウンターの下からたくさんの書類を巻き上げて顔を覗かせたのはその声の持ち主の女性だった。
「ご、ごめんなさい!今、書類を整理してまして…!」
「あ、急いでないのでゆっくりでいいですよ」
焦りながら書類を片付ける女性に落ち着いてと伝える。
「はっはっは、お前見ない顔だな、旅の者か?」
そこにギルド内で談笑している冒険者と思われる男が僕に話しかけてきた。
「ミーナはここの看板娘なんだよ、ドジだけどいい子だから優しくしてやってくれよな」
屈強な男という風貌だ。
「あー、そうなんですね…なるほど、ドジっ子…」
「もーー!ガランさん!新規の人に私のイメージ押し付けないでくださいよぉ~!」
書類を片付け終えた様子のミーナと呼ばれている女性。ここのギルドの受付嬢の様だ。
茶髪のショートへアのおてんば娘と言った感じの美少女だった。
歳は僕よりも2つ3つほど年上といった感じ。
「あ、ごめんなさいね、依頼だったわね。えーっと、君の冒険者のランクはいくつ?」
「あーー、えっと……」
ミーナさんに聞かれて改めてS級の冒険者パーティー『
今はどこにも属していないからD級になるな。
「今はD級です」
「D級ね!ちょっと待ってね、うーん、いいのあるかなぁ?」
依頼がまとめてある書類をペラペラと何枚もめくっていく。
自分で見たいから、ファイルを見せてくれと言おうとした時。
「お前、1人なのか?」
さっき話しかけてきた屈強な男のガランという男が僕に話しかけてきた。
「え、あーはい。1人です」
「D級の冒険者はどこかのパーティーに所属して一緒に依頼をこなすか、D級同士のパーティーを組むのが普通だぞ?見た所まだ幼いし、経験も積んでいないんじゃないか?もしよかったらこれから受ける俺たちの依頼に参加するのはどうだ?」
「え、いいんですか?僕なんか入れてもらって」
「ああ!ここんところ退屈しててな!小さい街のギルドだし新人もほとんど現れないから、パーティーもマンネリしてきていたんだ。どうだ?もちろん報酬もきちんと等分するぞ!」
D級1人で依頼を受けるのは定石と違うらしいし、この人は今の僕より上のランクの様だ。それなら今回だけなら良いかなと思う。早くお金も溜まるだろうし。
そこにミーナさんがガランさんに話しかけた。
「もぅ!ガランさんさっきから私の仕事奪わないでくださいよーー!」
「はっはっは!怒るなよ、ミーナ。で、どうだ坊主?」
ガランさんがいつものことだとミーナさんに返事をして、僕にさっきの返事を聞いてくる。
「…分かりました、ガランさんの申し出受け入れます」
「おお!!こりゃいい!俺はガラン、冒険者ランクはB級。『
「僕はウィリアム・ベンと言います。ウィルと呼んでください」
僕とガランは握手を交わす。
「すまないが俺のパーティーメンバーはまだ揃っていないんだ、今から呼んでくるから手続きをしながらしばらく待っててくれ」
ガランさんはそういうと、ギルドを出て言った。
僕はそこでガランさんと他のパーティーメンバーを待ちながら、ミーナさんに手続きやら細かいことを一通り教えてもらった。
―――
「おい!ミーナ!今日こそは俺とデートしろよな!!」
「ケッケッケ!兄貴、さすが強引でカッコイイっすね~!」
ギルドに突然2人の男が現れた。男の1人はツンツン髪をしていてカウンターに身を乗り出してミーナさんに顔を近づける。
「きゃっ」
ミーナさんが怯えた様子で体をすくめる。
王都ではああいうタイプの人間はいなかったな。と思いながら、自分に今まで親切に対応してくれた人を怖がらせるようなことをする奴を見過ごせないと思った。
「ねー、そこのダサいお兄さんたちー」
僕はその2人の男の横に行く。
「あぁん?んだ、テメェ??」
「今兄貴になんつった、このクソガキ」
2人の男は僕を取り囲む。
「ダメよ!ウィルくん!この人たちに逆らっちゃ…!」
ミーナさんが僕に止める様に言う。
「大丈夫だよ、ミーナさん」
兄貴と呼ばれている方の男の眼を睨みつける。
「くっ!コイツ、痛い目見ないと分からねぇようだなぁあ」
「う、ウィルくん…ダメだって!」
「止めても無駄だぜ、ミーナ。こいつはこのギルド最強の『
『
もう一人の男はシャドウという奴の部下か仲間だろう。僕に顔を近づけて睨みつけている。
しかし、そんなものは怖くないのでニコニコと笑顔で対応する僕。
「いいね!ここじゃ迷惑だから外に出ようか」
そう言って僕らはギルドの外に出た。
ミーナさんが心配そうに見守る中、僕とシャドウは対面に立つ。
僕は『異次元の道具箱』を【最後の鍵】で開けて、『竜神族の剣』を取り出す。
鈍く輝きを放つその剣は、久しぶりに持っても手になじむ。
「な、なんだその…剣、見たこともねぇ武器だ……」
「兄貴ー!!やっちゃってくださいー!!あんなのただのハッタリですよ!!」
「あ、ああ。当たり前だ、俺のこの死神の鎌『デスサイズ』でぶった斬ってやる!いくぜぇ!!!」
シャドウは背中に背負った大きい鎌の武器を構えて僕に向かってくる。
「ウィ、ウィルくん!逃げて――!!」
顔を伏せて叫ぶミーナさん。
ツッコんでくるシャドウの鎌に僕は『竜神族の剣』を当てて、振り払った。
―ズババババーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!
鎌は激しく粉々に粉砕され、斬撃はギルドの奥にある山まで飛んでいき、ドーーーーンと鈍く重い音を鳴らして一面を吹き飛ばした。
シャドウはその衝撃で近くの木の幹まで吹き飛ばされていた。仲間の男も茂みに頭から突っ込んでいた。
「あ、あちゃーーしまった。久しぶりに使ったらから力の下限を間違ったな……」
「な、な……な、あ、あああ……」
ひっくり返ったシャドウのズボンは濡れてシャドウの頭はツンツン髪が何処へやら、てっぺんの髪の毛が綺麗に無くなっていた。
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