第32話:与野党暗闘
「首相、○○大臣が行方不明になったのは、思想集団のクーデターに関係していたからではありませんか」
「首相、クーデター計画に関係していた人間を大臣に任命した事は、重大な政治責任ではありませんか」
「首相、出処進退を明らかにするのが人間として最低の責任ではありませんか」
「逃げるのですか、首相」
「それはあまりにも卑怯なのではありませんか、首相」
まだわずかに力を残していた反日反政府マスメディアが、思想集団信徒と共に行方不明になった、政権与党第一党の現役大臣や代議士について厳しい取材を行った。
自分達が思想集団から広告料という賄賂を貰って、犯罪や疑惑の隠蔽をおこなっていた事を棚に上げて、とても恥知らずな行いだった。
そんな卑怯下劣な報道や放送を見逃す嘉一ではなかった。
嘉一は即座に大蛇を反日反政府マスメディアに送り込んだ。
わずかに残っていた反日反政府マスメディアだが、これによって完全に息の根を止められる結果となった。
社長以下の役員全員だけでなく、反日反政府思想に染まっていた社員が、ほぼ全員大蛇に喰い殺される事になった。
思想集団からの賄賂を自覚していなかった社員がほとんどいなかったのだ。
分かっていて広告料を受け取り、思想の扇動をおこなっていたのだ。
記事や番組に、思想集団に所属する俳優や芸人、作家を使っていたのだ。
反日反政府マスメディアの邪悪な報道や放送は、命の惜しい残った連中が行わなくなったが、本質的な危機が去ったわけではない。
思想集団と組むことで票を得ていた政権与党第一党の代議士は、少なくない数が行方不明になっていた。
当然だが、政権与党第二党の代議士は全員行方不明になっている
次に与党を組めるはずだった、大阪の地域政党も半数が行方不明になっている。
当然だが、反日反政府の野党が厳しい追及をする事になった。
「首相、クーデターを計画していたのは政権与党第二党ですが、政権与党第一党もクーデター計画に参加していたのではありませんか」
「首相、マスメディアは権力に媚びて何も記事にしなくなりましたが、○○大臣が行方不明になったのは、思想集団のクーデターに関係していたからではありませんか」
「首相、クーデター計画に関係していた人間を大臣に任命した事は、重大な政治責任だと思いますが、首相自身はどのように思っておられるのですか」
「そのような答弁では何も分かりません、ちゃんと分かるように説明してください、首相、逃げるのですか、それはあまりにも卑怯なのではありませんか、首相」
「今直ぐ衆議院を解散して民意を問うてください、首相」
野党はここが勝機だと思っていた。
政権与党第一党では多くの代議士が行方不明になり、総選挙となれば、多くの新人候補者で不利になるだけでなく、思想集団の票が無くなる事で圧倒的不利になる。
しかも、もう政権与党第二党は存在意思ない。
大陸に強大な力を持つ大国の影響力を駆使して自分達が権力を握りたい野党や、自分達が共産貴族になりたい野党や、果ては自分達が共産王となりたい野党党首までが、欲望に目をぎらつかせて衆議院解散を要求していた。
だがそんな事は、嘉一には絶対に受け入れられない事だった。
こうなる事が予測できていたからこそ、嘉一は神仏に数多くの強力な付喪神と物の怪達を、配下に加えてもらう事を要求したのだ。
最初に嘉一は野党議員の所に大蛇を送り込んだ。
思想集団とわずかでも関係があった者や、思想集団の罪を賄賂を受け取って見逃していた者は、政権与党第一党の代議士と同じように喰い殺された。
それだけでも結構多くの野党代議士が行方不明になった。
それだけでSNS上では野党代議士のクーデター計画への加担が評判となった。
だがそれだけでは、全ての代議士が行方不明になった政権与党第二党や、半数の代議士が行方不明になった大阪の地域政党や、代議士の二割が行方不明になった政権与党第一党の打撃には足元にも及ばなかった。
そこで嘉一は次の手を打つことにした。
首相を厳しく糾弾する野党代議士達の元に、姿を現した大蛇を送り込んだのだ。
「日本を大陸の属国や民族自治区にする事も、半島のようにお前の王国にする事も絶対に許さない。
これ以上邪悪な欲望に満ちた発言を繰り返したら、思想集団のような楽な死に方はさせない。
次に来る時はお前に天罰を与える時だと思え」
嘉一は大蛇と野党代議士の会話を撮影してSNS上に投稿した。
付喪神と物の怪達を使って、決して誰が投稿したのか分からないようにした。
その効果は絶大で、物の怪に罰せられるほどの大罪を野党代議士達が犯しているのだと、日本中に広く信じられる結果となった。
各野党に所属している人間はもちろん、支援している人間までが、物の怪に敵視されていると思われる事になった。
日本では数多くの代議士が行方不明になり、政権運営がとても厳しくなっていた。
何とか首相は行方不明にならなかったが、首相経験者や派閥の領袖、現役大臣や大臣経験者が半数以上行方不明になっていた。
行方不明にならなかったのは、代議士になってからの年数が短い者や、権力の中枢から遠くにいた者だけだった。
そんな者達を急遽大臣や副大臣に任命したが、思想集団職員がいなくなった、官省庁は人材不足で日常業務にも不都合をきたしていた。
本来なら衆議院を解散して、行方不明になった代議士の補充を急いでやらなければいけなかったのだが、勝ち負けがはっきりしない状態では、とてもではないが衆議院を解散して総選挙などできなかった。
だが、総選挙をしなければ、何時かは行方不明になった代議士の代わりを選ぶ補欠選挙を行わなければいけない。
しかし物の怪に行方不明にされた事を、何時正式に認めて補欠選挙を行うかは、物の怪の存在を認める事にもなる、非常に重大な決定だった。
日本の首相は重大な決定を避けることにした。
行方不明者の失踪宣告されるのは、不在者の生死が七年間明らかにならなくなった時が第一の条件だった。
一年という短い間に認められるのは、戦地に臨みたる者、沈没したる船舶中に在りたる者、その他死亡の原因たるべき危難に遭遇したる者の生死が、戦争の止みたる後、船舶の沈没したる後、又はその他の危難の去りたる後に明ならざる時だ。
第二の条件に、物の怪に連れ去られた時という判例など加えたくなかった。
例えSNS上に信じられないほど大きな蛇が、野党代議士達を日本語で脅しているという動画が、数多く配信させているという現実があってもだ。
日本どころか世界中の研究機関が、偽りではなく現実を撮影した動画だと証明したいたとしても、一国の首相が認められる事ではなかった。
政府としても絶対に公式見解で認められる事ではなかった。
一カ月二カ月は決定の先送りができた首相も、三カ月目には世論に抗しきれなくなって、仕方なく失踪宣告が不要な総選挙を行う事にした。
与野党の支持調査で、与党の方が野党を上回っていた事も首相を後押しした。
真実を知らない政権与党第一党は、嘉一に頭を下げて頼み込んだ。
生き残っているマスメディアで絶大な力を持っている嘉一を味方にしたかった。
過去のマスメディアの犯罪を明らかにしたばかりか、思想集団に被害者である嘉一を公認候補にできれば、絶大な量の票を手に入れられると考えていた。
だが嘉一は政権与党第一党の願いを聞き入れなかった。
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