第20話:躊躇と決着
嘉一がアメリカに行くと決まり、付喪神や物の怪達が一緒に行くと言ってくれた。
何かあった時の為に護衛するとまで言ってくれた。
嘉一はとてもうれしく思ったが、その言葉に甘える事などできなかった。
自分以外に神はいないなと言う、傲慢で独善的な神が支配する地域に、付喪神や物の怪達を連れて行くような事は絶対にできなかったのだ。
「俺を心配してくれるのはとてもうれしい。
だけど俺よりも君達の方が危険だ。
絶大な力を持つ、自分以外に神はいないと言い切るような、傲慢で独善的な神は支配する所に君たち連れて行ったら、何をされるか分からない。
俺を護ろうとして君達が死んだり怪我したりしたら、俺の心が壊れてしまう。
俺なら大丈夫、危ないと思ったら常世に逃げ込むから。
それに君達には俺についてくるよりも大切な事を頼みたいのだ」
嘉一が切々を説得した事で、付喪神と物の怪達はついてくるのを諦めてくれた。
そして嘉一に頼まれた事をやってくれる事になった。
嘉一が付喪神と物の怪達に頼んだ事は、河童の情報収集だった。
河童がどこにいるのか、常に把握しておくことが大切だった。
独善的な神に邪魔されないように、一瞬の好機に常世からアメリカに送り込まなければならなくなる可能性が高かったからだ。
情報開示請求が認められ、実行犯と隠蔽犯の所在が分かった。
アメリカでも日本人に身近なハワイに逃げていると思っていたが、違った。
できりだけ日本から遠く離れた場所に逃げようとしたのだろう。
西海岸の都市ではなく、東海岸の都市に潜伏していた。
ニューヨークのホテルに滞在いしていたのだ。
高所恐怖症の嘉一だったが、仕方なく飛行機でアメリカに向かった。
神仏たちのお陰で莫大なお金があるので、ファーストクラスで行くことにした。
九十万円弱必要だったが、今の嘉一にはお金よりも快適さが必要だった。
嘉一は英語が全く話せないので、現地での通訳を手配してもらった。
単なる通訳ではなく、実行犯と隠蔽犯を確保する事も考えて、日本語を話せるアメリカの私立探偵を探してもらった。
バウンティハンター(賞金稼ぎ)でもよかったのだが、比較的おとなしい性格の嘉一には、荒くれ者の多い賞金稼ぎよりも、審査が厳しくなかなか合格できない、拳銃の携帯も許可されていて、日本人の感覚では探偵というより私立刑事に近い、アメリカの探偵を雇うことにしたのだった。
それも、契約金を惜しまずに、二十四時間常時警備契約をした探偵を複数雇った。
嘉一が日本を出発する前に依頼をだしていた御陰で、嘉一がニューヨークの到着した時には、既に探偵社が実行犯と隠蔽犯の居場所を突き止め見張っていた。
嘉一が命令を下せば、何時でも確保する事ができる状態だった。
嘉一は探偵に護衛してもらいながら実行犯と隠蔽犯が滞在しているホテルに行き、常世とつなげられるか神仏に確認してもらった。
「よくやってくれました、嘉一。
それくらい近くにいてくれれば、河童を常世から送り込む事が可能です」
石長は褒めてくれたが、嘉一には不安な事があった。
嘉一は河童事件と直接的な利害関係はないのだが、『姥ヶ火』に引き続き周辺をウロウロしているのは、刑事もマスゴミも知っているのだ。
警察に目をつけられて色々調べられるのも、不当に逮捕されるのも避けたい。
そして何よりも避けたいのが、マスゴミからの反撃だ。
テレビの放映権を自由化させようとしている嘉一は、違法や捏造の報道をしてでも叩き潰したい相手だからだ。
結構な金額が必要な一カ月弱もの間、嘉一はニューヨークにいた。
株の売買は、ニューヨークからネットを使って行われた。
一カ月弱の間にも嘉一の財産は増え続け、莫大な額になっていた。
だが一番の問題はそんな事ではなかった。
河童による復讐がようやく終わった事が一番の問題だった。
河童が殺すべき相手は、実行犯と隠蔽犯以外すべて溺死させられた。
河内長野市の人権屋だけでなく、大阪府下の主だった人権屋が皆殺しにされた。
大阪のマスゴミ関係者だけでなく、人権屋と癒着していた全国のマスゴミ関係者が次々と殺された事で、半数の新聞社とテレビ局の社長以下役員が皆殺しになった。
その事で、日本中の人達がマスゴミと人権屋の癒着を知る事になった。
その影響で、SNSを中心にテレビの放映権を入札制にすべきという国民の声が日々大きくなり、高裁や最高裁に上告して時間稼ぎをするマスゴミに対する批判がデモ行進にまで発展していた。
人権屋や権利屋のデモ行進は正義のように報道していたマスゴミだが、自分達に対するデモ行進には報道の自由を盾に口汚く批判をした。
それの事が更にマスゴミの信用を失わせる結果となった。
だがこれは河童が恨みを晴らした後に起きた事だった。
神仏から河童が実行犯と隠蔽犯以外を皆殺しにしたと伝えられた嘉一は、自分が起点となる事で常世から河童をニューヨークに移動させた。
神仏から言い含められていた河童は、迷うことなく実行犯と隠蔽犯をトイレに引きずり込んで溺死させた。
恨みを晴らした河童は、神仏によって即座に地獄に送られた。
独善的な神に見つかる前に輪廻転生の輪に戻すためだった。
嘉一はアリバイ工作のために常に探偵と一緒に行動した。
嘉一は河童が恨みを晴らした事を知っていたが、ホテルに通報する事なく、実行犯と隠蔽犯の遺体がホテルマンに発見されるまで見張りを続けた。
部屋に押し入っていない嘉一が二人の死を知っているはずがないからだ。
嘉一は何の罪もない大人しい子供を溺死させた実行犯と隠蔽犯を、起訴されて逮捕できるようになるまで見張っていただけなのだ。
そう、嘉一が大金と時間を使ってまでニューヨークに来た理由。
それは溺死させられた可哀想な子の無念を晴らすために、私財を使って逮捕しようとしていたと言うのが建前だった。
アメリカの探偵はその事を証言するための証人なのだ。
それに、犯罪者を隠蔽したマスゴミに批判する資格はないと言うのが反撃だった。
その二つの建前を無視して嘉一を批判しても、今の状況では人権屋や権利屋、マスゴミ関係者以外は同意しない状況になっていた。
それ以前の問題として、世論がマスゴミ批判一色になっていた。
そうなるように付喪神が動いてくれていた。
だから実行犯と隠蔽犯がホテルマンに発見され、遺体の日本移送が決まった時には、嘉一は既にニューヨークから日本に向かっていた。
今回は急ぐ必要がないので、便が少ないニューヨークから関西国際空港の直行便を待っての帰国だった。
当然だが、往路と同じようにファーストクラスを取った。
ジョン・F・ケネディ国際空港を出るまでは、アメリカの探偵に護衛を頼み、万が一の事態に備えていた。
嘉一が覚悟していた最悪の状況、独善的な神に襲われるという事は避けられた。
無事に家にたどり着いてようやく安心した嘉一は、大きな安堵のため息をついた。
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