『クリスマスプレゼント』

やましん(テンパー)

『クリスマスプレゼント』 上 (全三回)


 ある、クリスマスも近づいた金曜日。


 ちょっと、大きめの段ボール箱が、宅配便で届きました。


 差出人は、『三田 久路子』さん。


 いやあ、知らないお名前です。


 『さんだくろこ』さんですかあ。


 『みたくみこさん』かも。


 住所は、ニホン区トウキョウ市長田町1の1『全太陽系総合事務所地球支部内福利厚生課』


 『いやあ、なんでありましょうか。爆弾ではなさそう。ま、いまは、失うものもないし。いいかあ。』



 さて、いま、地球人類は、公式に『あるひと』と、『ないひと』に分かたれています。


 割合で言えば、『あるひと』は、約3割弱で、残りは『ないひと』です。


 これは、財力も含めて、なんらかの、公に認められた、財産、才能や技術などの、あるなしを、地球政府により、総合的に判別されたものです。


 ぼくは、退職して以来、『ないひと』に分類がえされました。


 ただし、『ないひと』に分類されて、なにか、福利厚生があるというわけではなく、買いすぎ制限警報や、使いすぎ警報、排除予備警報などが、お買い物や、サービスや、病院の利用などの際に、その場で発効されます。


 だから、たとえば、食料品の買い出しや、お薬の利用や、医療受診、旅行申請などが、事前に制限、拒否、されたりもします。


 それにより、医療費の乱用や、無駄遣い、がないようにされるのです。


これは、例えば、社会的地位を維持して退職したBさんとかならば、診察や、治療をしてもらえるような病気でも、治療しても意味がないぼくの場合は、拒否されたり、あまり効果が期待できない安いお薬の処方になったりします。


 しかし、言っておきますが、現金などを隠して持っていたことがわかり、実は、支払いが出来ると、証明されたような場合は、話がころっと、変わります。


 『ないひと』は変わらなくても、臨時的に『あるひと』待遇になったりします。


 一方で、お金はなくとも、才能が豊かな作曲家さんとか、画家さん、作家さんなどは、作品をちゃんと書くことと、審査に通ることを条件にして、制限が緩くなったり、無くなったり、補助金が出たりもします。


 さらに、なんらかの、保険や、援助が受けられるような場合は、許可が出ることがあります。


 つまり、地球政府の、変わらぬモットーは、『金の切れ目が自由の切れ目』なのであります。


 どうにもならなくなったら、最終的には、残り全資産没収のうえ(まあ、ほとんどないことが、普通ですが。)、例の『安楽院』収容になります。


 それは、政府の資産になるわけで、まとまれば、それなりの収入源になります。


 それを、批判する一部の人からは、『中世から、近世の『魔女狩り』みたいだ』、とも、言われますが、彼らはたいがい、『あるひと』なわけです。


 さて、それで、ぼくは、配達された、そのやたら軽〰️〰️い箱を、開けてみようと思ったわけです。



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