千載一遇②

営為つむぐ

第三章 大化の改新の真相

第50語 乙巳の変

 皇極天皇4年(645年)に起きたとされる政変。当時 権勢を誇っていた蘇我入鹿が宮中で暗殺された。干支の1つである"乙巳"の年に起こったことからこの名称がある。以前は、蘇我入鹿暗殺事件を指して"大化の改新"と呼び表していたが、現在では 政変とその後の政治改革を切り離して呼称している。

 政変の首謀者とされるのは 時の女帝の皇子 中大兄皇子と藤原氏の祖 中臣鎌足。ただし、この2人は 正史編纂時の権力者の父親らであることもあって 黒幕は別にいたのではないかとも推察されている。黒幕候補としては、時の女帝 皇極天皇(第35代)、次代の天皇となった軽皇子(孝徳天皇:第36代)、変の参加者であった蘇我氏の支流 倉山田石川麻呂などが挙げられている。

 この政変により、蘇我宗本家は滅亡。入鹿の父 蝦夷は一旦 舘に立て籠ったが、東漢氏や高向氏、将軍 巨勢徳多にも背かれ、舘に火をつけて自害している。

 次代の天皇候補であった古人大兄皇子(中大兄の異母兄)も変の現場にいたが、その後 私宮に逃げ帰り、

 「韓人が鞍作入鹿を殺しつ。吾が心痛し」

と嘆いたとされる。

 ちなみに、この"韓人"という言葉が誰を指すかについてだが、概して、"三韓の調"とからめて論じられる。蘇我入鹿を 宮中におびき出す口実として 高句麗・新羅・百済の3国が朝貢してきたというていで偽の儀式が行われたが、そのこと自体を指しているのではないかと言われている。

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