桜🌸舞う、ふしぎ縁草子

桃もちみいか(天音葵葉)

プロローグ

 桜、舞う。

 春でもないのに、その迫力ある佇まいで立派な枝ぶりの桜は咲き続けた。

 季節を問わず、はるなつあきふゆ、心を宿した桜の大樹は、はらりはらはらと花びらを風に飛ばすのだ。

 ひたすら、ひたすらに咲かし続けるビンク色の花弁は、一途に想いを載せては散る。


 桜の木の魂が、歌う。

 誰かを呼んでいる。

 やがて桜のあやかしは武士の姿になって、扇を優雅にあおぎ操り、舞いを踊る。


 桜、桜よ

 花散るらん。

 舞え、

 飛べ、

 届け――。


 あの子のために。

 あの子のもとに。


 私の罪でしょうか、すまぬことだ。

 因果や怨念晴らすため、

 早くおいでよ、我がもとへ。

 君の背負いし、絡まる不幸の鎖、

 私が見事断ち切ってしんぜよう。


 早く参られよ、我がもとへ。

 花びら辿って

 桜のもとへ。

 臆するなかれ、

 振り返らずに。








 

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